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■西部開拓時代の伝承物語~黄金伝説を追いかけて

 

第45回:西部劇名作選 ベスト20 No.11

更新日2025/03/20

 

女優は西部劇を壊す!『帰らざる河』(原題:River of No Return;1954年)

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オリジナル・ポスター
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日本公開時ポスター

ウチの親父が西部劇狂であり、しかもマリリン・モンローにゾッコンだったことは以前書いた。ロバート・ミッチャムとマリリン・モンローが共演した『帰らざる河』を観た後はひどかった。古いソフトを潰してテンガロンハット風にし、革紐を通して首のところで結び、服装も作業ズボンをロバート・ミッチャム風にして、モンローが唄った映画のテーマソングを英語で歌ったものだった。

これもすでに書いたと思うが、親父は器用に楽器類といってもハーモニカ、尺八、アコーディオンで童謡を奏いたが、いざ歌うとなると声を伸ばしたり、張り上げたりすると音程が狂い、子供の耳にも聞き苦しかった。“no return, no return a, ha・・・”とやるのだが、小学校に上がる前の私には、どうにも“ノータリン、ノータリン”と聞こえてしょうがなかったのだ。
 
親父がゾッコンだった『帰らざる河』を先週観直したところ、オットー・プレミンジャーともあろう監督がよくぞこんな駄作を作ったものだと呆れた。モンローファンにとっては、モンローの可愛らしさ、それでいてセックスアピールに溢れたモンローの魅力を画面いっぱいに表しているのだが、不自然なストーリー展開、意味のないインディアン攻撃、すべてデタラメのこじつけ、最後はお決まりのロバート・ミッチャムがモンローを安酒場から救い出すように連れ出すところで終わる。余程のモンロー気狂いでない限り、こんな映画を誰が観に行くものか…。
 
オードリー・ヘップバーン主演の元祖『許されざる者』も駄作だと思う。ジョン・ヒューストンは会社の圧力でヘップバーンを起用し、ヘップバーンが初めての西部劇に、という鳴り物入りで監督を強要されたのかも(これは全くの想像だが…)と同情したくなるほどの粗末な出来だ。

オードリー・ヘップバーンは白人の元で育てられたカイオワ族インディアンの娘の役で、彼女を救出に来たカイオワ族の兄を撃ち殺し、育ての親、白人パイオニア家族と過ごすことにする…という白人至上主義、ご都合主義の結末なのだ。

どうにも人気女優を中央に据えた西部劇はモノにならないという結論になる…のではと思っていたところ、共演させるマッチョな西部の男を廃し、女優一本で通した名作が現れた。

ジェーン・フォンダ主演 『キャット・バルー』(原題:Cat Ballou;1965年)

『キャット・バルー』は全く違ったアプローチで若きジェーン・フォンダの魅力を引き出していた。もっとも、この映画はコメディタッチの西部劇で、しかもカタリベ、狂言回しとしてナット・キング・コールとスタッビー・ケイの二人が随所に登場し、バンジョー片手に“キャット・バルー”のバラッドを弾き語り風に歌うのだ。この二人が随所に現れ、西部の女傑アウトローの伝説を盛り上げていく。ちなみに、ナット・キング・コールはこの映画の撮影を終えた4ヵ月後に亡くなっている。
 
物語はお決まりの町の有力者が小作人を追い詰め、牧地を拡張してく過程で、ジェーン・フォンダ演ずるキャット・バルーの父親も殺されキャット・バルーは追い詰められる。かなり西部のダイム小説に洗脳されていた東部の小娘キャット・バルーが西部きってのガンスリンガーを呼び寄せ、復讐しようとする。

これがアル中の上、とんでもないガンマンで、満足に馬にも乗れない酔っ払いで、こんな役をやらせるとピッタリのリー・マービンが演じている。この酔っ払い、アル中ガンマン役で、彼はアカデミー、ゴールデングローブ両方の主演男優賞を獲得している。 まさにはまり役だった。

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『キャット・バルー』のオリジナル・ポスター

ジェーン・フォンダ
ジェーン・フォンダ
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リー・マービン

27-28歳のジェーン・フォンダはホッソリとした体つきで、動きもキレが良く、顔の表情も豊かだ。なんと言っても父親ヘンリー・フォンダ譲りの目が良い。一方、酔っ払いガンマン、リー・マービンはまさにハマリ役だ。彼は受賞式のインタヴューで全く酒を飲まないと豪語していたが、その時点で、禁酒していたのかもしれないが、アル中で死んだ。

この映画を観た時、ジェーン・フォンダはジョン・ウェインの相手役モーリン・オハラを継ぐ、西部劇女優になるのではないかと思ったモノだが、彼女は二度と西部劇には登場せず、社会意識の強い映画に出演するようになり、独自の境地を切り開いていき、『コールガール』(原題:Klute;1971年)『帰郷』(原題:Coming Home;1978年)で二度のアカデミーとゴールデングローブの主演女優賞を獲得している。
 
日本では『キャット・バルー』はヒットしなかったが、アメリカではその年、1965年の興行収入がトップテンに入る成功を納め、2,060万ドル(当時としては、大変な売り上げだった)を売り上げた。
 
『キャット・バルー』は明るく、ユーモラスで、ユニークな語り部を配した楽しい西部劇だ。何も考えずにノホホンと2時間を過ごすには最高の映画に仕上がっている。

-…つづく


第46回:西部劇名作選 ベスト20 No.12

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佐野 草介
(さの そうすけ)
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海から陸(おか)にあがり、コロラドロッキーも山間の田舎町に移り棲み、中西部をキャンプしながら山に登り、歩き回る生活をしています。

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