のらり 大好評連載中
2017/06/22掲載

■新・汽車旅日記
〜平成ニッポン、いい日々旅立ち
 
第635
回「水鏡の駒ヶ岳 − 寝台特急カシオペア 2015 3 −」  
函館湾の夜明け。茂辺地駅を過ぎると海岸は遠ざかり、木立と農村とトンネルを繰り返す。駅の近くの街は眠っていて、青い景色の中、街灯の明かりが流れている。私たちはまだラウンジにいた。函館に着くまでは最後尾の展望車である。これは最後まで楽しみたい。結局のところ、私はラウンジが好きらしい。振り返れば、開放寝台に乗っても、個室に乗っても、ラウンジがあれば、眠る以外の時をラウンジで過ごしている。窓は大きく、乗り合わせた人との語らいもある。夜行列車の醍醐味はラウンジにあり。カシオペアの最後の乗車でやっとわかった。どこかの駅で貨物列車を追い越した。赤い電気機関車、三灯ヘッドライトが遠ざかっていく。車窓が少しずつ明るくなって、数人まで減っていたラウンジの客が増えてくる。誰ともなくおはようの挨拶を交わす。ひとつ屋根、いや、ひと列車を共に過ごした、細い連帯感だ。もうすぐ函館に着く。そこでまた向きが変わる。この展望車側に機関車が連結される。カシオペアの儀式のひとつだ。

杉山 淳一

杉山 淳一

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2017/06/15掲載

■店主の分け前
〜バーマンの心にうつりゆくよしなしごと
 
第329回「流行り歌に寄せて No.134 「逢いたくて逢いたくて」〜昭和41年(1966年)」
現在放映中のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』の時代設定が、ちょうど私が今書いている昭和40年から41年の時期に重なっていて、少しうれしい気がしている。岡田惠和氏のきめ細かく書き込まれたシナリオにはいつも敬服しており、その万分の一ほどの才あればと思いさせられる日々ではあるけれども。あの頃の「みね子」たちの耳にはこんな音楽が聴こえていたのかと思い描きながら、書き進めていくのは楽しいことである。私がカラオケに行ったとき、時々この「逢いたくて逢いたくて」を歌う。女性の歌ではあるが、男声の低音でもけっして違和感のある曲ではないと思う。もちろん大好きで歌いたいということもあるが、カラオケの画像に出てくる園まりがあまりに可愛いので、まさに彼女に「逢いたくて」リクエストしているという方が正しいかもわからない。そして、それは少なからぬ羞恥の念を抱きながらの行為である。この曲が発売になった昭和41年1月、私はちょうど10歳になった。東京から転校してきたチャーミングな女の子に・・・

金井 和宏 金井 和宏 

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2017/06/22掲載

■フロンティア時代のアンチヒーローたち
〜西部女傑列伝 5
 
第3回「カルト・ケイト 〜ジェイムス・アヴェレルとの出会い」  

シャイアンというインディアン部族の名前を冠した町は、ワイオミング州の州都だが、現在でも人口5万人少々の田舎町だし、カルト・ケイトが移ってきた1886年にはワイオミングは州になっておらず準州と呼ばれていた。鉄道が敷かれシャイアンから肉牛を大量に東部に送り込めるようになってから急激な成長を遂げ、“マジック・シティー”とか“平原の女王”とか呼ばれるようになり、東部からドッと一攫千金組みが押し寄せてきた。1870年の人口はたったの1,450人だったのが20年後の1890年には11,690人に急増している。金山、銀山とは別種の肉牛のブームタウンとして膨張していったのだ。ケイトは鉄道線の延長につれて、シャイアンから隣町のローウインズに移っている。職を求めてというより、食べ物にありつくために移動したのだろう。そのローウインズの町の旅籠レストランでコック兼ウエイトレスとして働き始めたのだ。雇い主にとって、ケイトは骨身を惜しまずに体を粉にして働くとても良い使用人だったことだろう。

佐野 草介 佐野 草介 

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2017/06/22掲載

■亜米利加よもやま通信
〜コロラドロッキーの山裾の町から
 
第517回「ヨルダンの強姦犯人救済法」 
このタイトルは書き間違いではありません。強姦で逮捕された男が、犠牲者の女性と結婚するなら、無罪放免になる国がたくさんあるのです。ヨルダンではこの4月23日に悪名高い308条を廃止するかどうか投票が行われ、この法案はそのまま継続することになりました。2010年から2013年の間に159人の強姦魔が犠牲者の女性と結婚し、罪を逃れています。たとえば、この女性は職場で頭痛がし、55歳の上司がこの薬を呑めばすぐ治ると渡した錠剤を呑み、意識不明になり、気が付いたらスッ裸で事務所におり、すぐに何が自分の身に起こったか知ったのです。それからも地獄の苦しみを味わっています。と言うのは、モスリム社会ではそのような不祥事は家族の名誉に係わる重大事で、どのような理由があるにしろ処女を喪失した娘を家に置くことはできず、父親、兄がその娘を殺す、殺さなければならない社会的制約がまだ残っているからです。

グレース・ジョイ Grace Joy 
(グレース・ジョイ)
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2015/10/15掲載

■現代語訳『枕草子』
〜表現哲学詩人谷口江里也が翻訳

第17回「市は、辰の市」  
市は、たつの市、さとの市、海石榴(つば)市など、大和には市のついた町がたくさんあるけれども、長谷寺にお参りをした人が、必ずのようにこの地に泊るのは、観音さまとのご縁を大切にしたいという、特別の気持があるからだろう。ほかにもこのあたりには、おふさの市や、しかまの市や、もちろん飛鳥の市もある。峰といえば---峰といえば、ゆづる葉の峰、阿弥陀の峰、そしていやたかの峰。原には---原には、みかの原、あしたの原、園原なんていうのもある。淵には---淵には、かしこ淵というのがあるけれども、一体どういう気持で、どなたがそうと教えて、そんな名前になったのだろう。青色の淵なんていうのも面白い。まるで蔵人が着るお召しのよう。ほかにも、隠れの淵や、いな淵なんていうのもあって面白い。海といえば---琵琶湖のみずうみ、与謝の海、そして、かはふちの海。陵には---陵みささぎには、うぐいすの陵、かじはぎの陵、そして、あめの陵などがあって、どれも歌に歌われして風情がある。

谷口 江里也 谷口 江里也

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2017/06/08掲載

■よりみち〜編集後記  

日本の政治がいつの間にか恐怖政治化して、一歩間違えば独裁に向かいつつある……まさか民主化が定着した21世紀にこのような封建的な過去の失政などが現政権の話題と一緒になることなどありえないことだと思っていたが、流れは正に第二次大戦時代に戻りつつある。安倍政権が着々と準備を進めていたことだが、その転機は、2013年12月の特定秘密保護法案の成立あたりからだろう。政府に不都合なことはすべて秘密にして構わないという法律だから、国民の知る権利がこれでなくなったことになる。さらに今国会で成立を目指している「新凶暴罪」法案と呼ばれる「組織的犯罪処罰法改正案」=「テロ等準備罪」法案だが、テロとか組織犯罪とかの名称はお飾りに過ぎず、戦前の1941年に制定された「治安維持法」の復活法案だと言われている。戦前の共産主義革命運動を防止するために危険人物を取り締まる目的で制定されたが、次第に官憲の取り締まりはエスカレートを極め、やがて宗教団体や右翼活動家、自由主義者など、政府批判はすべて弾圧・粛清の・・・

よりみち 「のらり」編集部

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ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。
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達人のとっておき33選


  ■フロンティア時代のアンチヒーローたち [全151回] 〜西部アウトロー列伝 Part1:Butch Cassidy(ブッチ・キャサディ)
佐野 草介
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■グレートプレーンズのそよ風 [計28回] 〜アメリカ中西部今昔物語
Grace Joy(グレース・ジョイ)
グレース・ジョイ
■貿易風の吹く島から [全157回] 〜カリブ海のヨットマンからの電子メール
佐野 草介
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■くらり、スペイン [計94回] 〜移住を選んだ12人のアミーガたち、の巻/〜イベリア半島ふらりジカタビ、の巻
湯川 カナ
湯川 カナ
■拳銃稼業 [全58回] 〜西海岸修行編
中井 クニヒコ
中井 クニヒコ
■現代語訳『風姿花伝』 [全63回]
 〜世阿弥の『風姿花伝』を表現哲学詩人谷口江里也が現代語に翻訳

谷口 江里也
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■随想『奥の細道』という試み [全48回]
 〜谷口江里也が芭蕉を表現哲学詩人の心で読み解くクリエイティヴ・トリップ

谷口 江里也
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■鏡の向こうのつづれ織り [全24回] 〜谷口江里也のとっておきのクリエイティヴ時空  
谷口 江里也
鏡の向こう
■もう一つの世界との対話 [全24回] 〜谷口江里也と海藤春樹のイメージトリップ  
海藤 春樹_人形_IMAGES 谷口 江里也_詩_TEXT
もうひとつの世界
■岩の記憶、風の夢 [全57回] 〜my United Stars of Atlantis
谷口 江里也
岩の記憶

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