第151回:トヨタのリコール騒動
更新日2010/03/18
政治と経済音痴の私が、ここで自動車業界に卓見を述べるつもりはありませんので、ご安心ください。
トヨタの社長さんがアメリカの議会の要請に応じて公聴会のため、アメリカまでやってきて、英語で今回の大リコールに対し謝罪しました。"deeply
apologize,,,"(深くお詫び申し上げます)とナマリの強い発音でしたが、誰にでもはっきりをわかる英語で公聴会の幕を切って落としたのです。てぐすねを引いて待ち構えていたトヨタ降ろし専門の議員たちも、すんなり謝られると、一瞬毒気を抜かれたように、いつもの激しい口調を一転し、ポイントは外さないけれど、丁寧な口調で質疑を行いました。テレビで見た公聴会での印象としては、まず一本トヨタが取った感じでした。
愉快だったのは、トヨタの工場のある4つの州の知事たちが、トヨタいじめの公聴会に反対したことです。彼らが言うには、今までフォードが3,650万台、GMが3,580万台のリコールを行っており、2009年だけをみても、フォードはリコールの記録保持歴代チャンピョンで1,400万台、今回のトヨタのリコールは487万台だから、歴代4位である。しかも、米国議会にリコールのせいで召集されたのはトヨタだけである。それは不公平である(unfair=不公平
という言葉はいつも公平であろうとしているアメリカ人への殺し文句なのです。もちろん公平なんて幻想ですが)と、陳情したのです。
前回、フォードとGMの社長さんが首を並べて議会に出てきたのは、政府に"助けて!、お金頂戴"と陳情にきた時だけです。結果、政府がフォードとGMの一番の株主になってしまいました。
統計好き、ランキング好きなアメリカ人は一体どうやって、どこからそんな順位が出てくるのか疑問を挟まずに、頭から信じてしまう傾向があります。経済誌の『フォーチューン』誌が、あこがれる企業(the
most admire、日本の新聞で尊敬できる企業と訳していましたが、かなりニュアンスが違いますね)という記事を載せました。今回のリコールの影響で、昨年まで3位だったトヨタが7位に落ちてしまったというのです。全世界の企業の中でまだ7位というのは立派といえば立派だと思うのですが。
私が通勤に使っているホンダは、クラッシクカーというよりジャンクカー(タダ単に古くてボロなだけ)です。長いこと、なんの問題も起こさずまじめに働いてくれていたのですが、さすがによる歳には勝てないのでしょう、ガタがきはじめました。そこで車を買い換える一大決心をし、といっても大中古から普通のマアマア中古に乗り換えるだけですが、新聞の売りたし、買いたしの欄を見たり、中古屋さんを見て歩きました。
そこで、車関係の人や車の持ち主に会うごとに話題になるのは、トヨタのリコールのことです。しかし驚いたことに、100%の人、中古車のディーラーや持ち主の、10人中10人、口を揃えて、「トヨタならリコールにもすぐにきちんと対応するだろうから、次にまた車を買うならトヨタ、ホンダだ」と言うのです。
また、フォード、GMの最大のオーナーがアメリカ政府だから、自分の企業を助けるため、救うために、トヨタを議会に呼びつけるようなスタンドプレイをしているだけだと、非難するのです。
実際、トヨタのリコール事件以来、フォードは43%も売り上げを伸ばし、トヨタは8.7%ダウンです。
私のように生涯新車を持ったことがなく、これからの将来にも新車を買うつもりがない人から見ると、新車に飛びついて、やれリコールだと心配するより、いつも十分にテスト済みの中古を愛用する方がどれだけ安心できることか、と思うのですが…。
なんだか、自分の手の届かないところにあるブドウはすっぱいというイソップの寓話に似てきたので、このあたりで柄にもない自動車談義を止めることにします。
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