第122回:国旗を逆さまに揚げた神父さん
更新日2009/08/13
どこの国から来た人でも、アメリカで銃やピストルが野放し状態で、誰でも簡単に買うことができるのに驚くことでしょう。
州によっては、銃を新しく購入する時に身分証明書や警察の証明書を求められることもありますが、中古の場合、全く規制がありません。
どんな田舎町でも年に何度と開かれる"ガン・ショー"には、大手のディーラー、質屋、個人でサイドビジネスとして、銃の売り買いをしている人たちが街頭でのテキヤさんのようにテーブルに銃火器を並べて売っています(仙人のクセに妙に好奇心の強い私のダンナさんがガン・ショーを覗いてきた報告による)。
それでなければ、新聞の"売りたし、買いたし"の"ファイアー・アームズ"の欄に何十、何百と載っているありとあらゆる種類のピストル、セミオートマティックライフル、機関銃を選び、そこへ電話して簡単に買うことができます。もちろん個人での売買には、身分証明書や警察の証明は必要ありません。
シカゴでは、アル・カポネが活躍した暗黒時代よりも、今の方がはるかに銃で殺される人の数が多く、カポネが現状を見たら、恐ろしくて街中を歩くことができないでしょうね。
今年に入ってからシカゴだけで199人が殺されています。アメリカ国内でピストルで死ぬ人の数はイラクやアフガニスタンで命を落す兵士たちよりもはるかに多いのです。
シカゴの貧しい黒人地区にある聖サビーナ教会のマイケル・フレージャー神父さん(Michael Pfleger)は、幾人もの子供たちが銃弾に倒れていくのに耐え切れず、自分の教会にアメリカの国旗を逆さまに揚げました。国旗を逆さまに揚げるのは、国が非常事態に陥った時だけです。そういえば、日本の国旗に上下、逆さまはありませんね。
マイケル・フレージャー神父さんは、「銃が規制されるまで、一体何人の子供たちが死ななければならないのだ」「皆、自分の子供が殺されるまで待つつもりか?」と悲痛な思いを込めて、異例の逆さま国旗掲揚に踏み切りました。
ところが、広いアメリカでは全く反対の決断をした教会もあるのです。ケンタッキー州のルイヴィル(Louisvill,
KY)の牧師さん、ケン・パガノ(Ken Pagano, Rev)は、教会を守るために銃やピストルを携帯し、教会に持ち込むべしとぶち上げたのです。アメリカで信仰の自由は、拳銃、ライフルに拠って守らなければならないと言うのです。
秀吉が行った刀狩でもしない限り、アメリカで個人が所有している億単位の銃火器はなくならないでしょう。万が一、政府が刀狩ならぬ銃狩りに手をつけるなら、狂信的な銃の信奉者がそのような法案を可決させようとした政治家、平和運動家などを殺害し始めるのでしょうね。
タバコの規制を厳しくしていった合衆国政府も、銃規制に関しては、各州の自治権と強力な圧力団体NRA(ナショナル・ライフル・アソシエション)の前に何もできないのが現状です。
シカゴのフレジャー神父さんは、『銃火器の暴力に反対する全米サミット』をワシントンで開き、一つの圧力団体を作ろうとしています。フレジャー神父さんの努力が実ることを祈らずにはいられません。
第123回:子供を成長させるサマーキャンプ

