第116回:世界に影響を及ぼした100人
更新日2009/07/02
タイム誌恒例の"世界に影響を及ぼした100人"が掲載されました。
ただため息が出るだけのフォーチュン誌やフォーブス誌の大金持ち長者番付けと違い、タイム誌の"世界に影響を及ぼした100人"の方は、オヤこんな人がいたのかと目を開かれることがままありますし、その人物を紹介している書き手がとてもユニークなので面白く読むことができます。
たとえば、民主党のエドワード・ケネディを取り上げて書いているのは、反対勢力である共和党のカリフォルニア州知事シュワルツネッガーだったり、オバマ大統領については、イギリスのブラウン首相が書いていたりします。そして、そのブラウン首相のことをハリー・ポッターの作者J.K.ローリングに書かせているという具合です。
政治家の分野では、フランスのサルコジ大統領、ドイツのマーケル、ヒラリー・クリントン、イラクのマラキ、中国の副首相まで名前が挙がっています。しかし、当たり前すぎて当然といえば当然ですが、日本の政治家、平和運動家の名前は一人も挙がっていません。3年間に3人の首相(今度の選挙で4年間に4人になる可能性が大きいようですが)でどんな良いことを試みても短すぎて、影響を充分に及ぼす時間がないのかもしれませんね。
文化、芸能、スポーツの分野になると、書き手はよりいっそう華やかになり、ペネロペ・クルスのことをベン・キングスレー、トム・ハンクスをメグ・ライアン、タイガー・ウッズをロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダルをセレーナ・ウイリアムズ、ジョージ・クルーニィのことをボノが書くという具合に、それぞれその人物を紹介するのにふさわしい書き手を選び、ユニークな記事を構成しています。
ありきたりのお世辞で埋まった経歴を書く人は一人もおらず、書くことに意外な才能を持っている人が多いことに驚かされます。
毎回、科学技術の分野で日本人が数人挙げられるはずなんですが、今回はナンブ・ヨイチロウ博士一人でした。残念ながらナンブ博士を紹介しているのも元タイム誌の編集者で、記事も写真もとても小さな扱いです。しかも、その内容も1952年にプリンストン大学に来てからのことで、この記事を読み流したら、彼が日本人かアメリカ日系人なのか、はたまた中国人、韓国人なのか分らないでしょう。
確かに彼が生まれ、育ったのは日本ですが、学問の道を歩んだのはアメリカですから、"何国人"というような規定のしかたは意味がないのかもしれません。
きっとナンブ博士も枠にはめられない地球人として活躍してこられたのでしょう、88歳の高齢でのノーベル賞受賞、おめでとうございます。
地球人と言っておきながら、私の好きな日本から、たった一人しか選ばれなかったことに寂しさを感じているのですが。
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