■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)



中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。




第1回~第50回まで
第51回~第100回まで

第101回:外国で暮らすこと
第102回:シーザーの偉大さ
第103回:マリファナとドーピングの違い
第104回:やってくれますね~ 中川さん
第105回:毎度お騒がせしております。チリカミ交換です。
第106回:アメリカのお葬式
第107回:不況知らずの肥大産業
第108回:ユニホームとドレスコード
第109回:大統領の人気投票ランキング
第110回:ストリップ
第111回:ストリップ その2
第112回:アメリカの裁判員制度
第113回:愛とLOVEとの違い
第114回:ブラックベアー
第115回:父なき子と母子家庭


■更新予定日:毎週木曜日

第116回:世界に影響を及ぼした100人

更新日2009/07/02


タイム誌恒例の"世界に影響を及ぼした100人"が掲載されました。

ただため息が出るだけのフォーチュン誌やフォーブス誌の大金持ち長者番付けと違い、タイム誌の"世界に影響を及ぼした100人"の方は、オヤこんな人がいたのかと目を開かれることがままありますし、その人物を紹介している書き手がとてもユニークなので面白く読むことができます。

たとえば、民主党のエドワード・ケネディを取り上げて書いているのは、反対勢力である共和党のカリフォルニア州知事シュワルツネッガーだったり、オバマ大統領については、イギリスのブラウン首相が書いていたりします。そして、そのブラウン首相のことをハリー・ポッターの作者J.K.ローリングに書かせているという具合です。

政治家の分野では、フランスのサルコジ大統領、ドイツのマーケル、ヒラリー・クリントン、イラクのマラキ、中国の副首相まで名前が挙がっています。しかし、当たり前すぎて当然といえば当然ですが、日本の政治家、平和運動家の名前は一人も挙がっていません。3年間に3人の首相(今度の選挙で4年間に4人になる可能性が大きいようですが)でどんな良いことを試みても短すぎて、影響を充分に及ぼす時間がないのかもしれませんね。

文化、芸能、スポーツの分野になると、書き手はよりいっそう華やかになり、ペネロペ・クルスのことをベン・キングスレー、トム・ハンクスをメグ・ライアン、タイガー・ウッズをロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダルをセレーナ・ウイリアムズ、ジョージ・クルーニィのことをボノが書くという具合に、それぞれその人物を紹介するのにふさわしい書き手を選び、ユニークな記事を構成しています。 

ありきたりのお世辞で埋まった経歴を書く人は一人もおらず、書くことに意外な才能を持っている人が多いことに驚かされます。

毎回、科学技術の分野で日本人が数人挙げられるはずなんですが、今回はナンブ・ヨイチロウ博士一人でした。残念ながらナンブ博士を紹介しているのも元タイム誌の編集者で、記事も写真もとても小さな扱いです。しかも、その内容も1952年にプリンストン大学に来てからのことで、この記事を読み流したら、彼が日本人かアメリカ日系人なのか、はたまた中国人、韓国人なのか分らないでしょう。

確かに彼が生まれ、育ったのは日本ですが、学問の道を歩んだのはアメリカですから、"何国人"というような規定のしかたは意味がないのかもしれません。

きっとナンブ博士も枠にはめられない地球人として活躍してこられたのでしょう、88歳の高齢でのノーベル賞受賞、おめでとうございます。

地球人と言っておきながら、私の好きな日本から、たった一人しか選ばれなかったことに寂しさを感じているのですが。

 

 

第117回:当てにならない"誓いの言葉"