第123回:子供を成長させるサマーキャンプ
更新日2009/08/20
夏休みに入り、子供たちが一斉に野に解放されかのように山に海に出かけています。これは日本でも見られる光景でしょう。でも、夏休みの一番人気は悲しいことに"ディズニー・ワールド"なのです。これも日本も同じではないかしら…。
子供たちが長い夏休みの間に、何日間でも自然のなかでキャンプでもして、真っ黒になって返ってきて欲しいと、すべての親が思っていると勝手に想像していましたが、最近では親の方が可愛い我が子の身を案じるあまり、キャンプや野外活動に出さない傾向が強いのだそうです。
ウチの子は強い日差しに弱い、虫刺されに弱い、特別の配慮が必要だ、何とかタンパクを受け付けないので特別食にしてもらいたい、テントにエアコンが付いているのか、医者が同伴するのか、などなど要求が多く、万が一の事故の場合に備えて、キャンプに参加する子供の父兄に契約書にサインさせているオーガナイザーが増えてきました。もちろん、裁判に訴えられた時の下準備です。子供たちのサマーキャンプにまで訴訟社会がシャシャリ出てきたのです。
アメリカで行われる子供たちのキャンプは、教会が組織しているものが圧倒的に多く、学校や教育委員会などのお役所が林間学校のような形で行うことはまずありません。教会が組織しているからと言って、その特定の信者だけに限っているわけではなく(そのようなガチガチの宗派もあるでしょうけど…)仲の良い近所の友達を一緒に誘い、気楽に誰でも参加することができます。世話役の年長者たちも、すべてボランティアベースなので、費用は食費くらいのもので、とても安上がりです。
私も子供の頃、サマーキャンプがとても楽しみでした。思えば10歳の時、コロラドの夜空の洗礼を受けました。星空が私の方に迫ってくるような壮大な星をサマーキャンプで見たのが、老齢になった今、こうしてコロラドの山の中に住むことになった遠因だったのかもしれません。
キャンプでは友達も増えます。沢山の恋が芽生えます。キャンプのリーダーはいつも子供たちの憧れの的でした。リーダーのお兄さん、お姉さんに、ティーンエイジャーのほとんどすべてが恋をしてしまいます。
私も髭を生やし、長い髪をバンダナで縛った、一見ヒッピー風のリーダーに片思いを寄せました。彼は(もう名前も覚えていませんが)なんと言ってもたくましく、森や山のことなら何でも知っていそうな野生児な上、子供たちにとても優しかったのですから、少女たちが舞い上がらないほうが不思議なくらいです。
ウルシにかぶれ、蜂に刺され、ひざ小僧をすりむき、ひと夏の淡い思い出を抱きながら、ミズリーの田舎に帰ってきたことを思い出します。
夏休みの過ごし方一つで、学校で習うこととは全く別の体験をし、人生の幅が広がることでしょう。そして、できれば人工のディズニーランドやテーマパークではなく、海や山、川、自然の中で、親から離れて幾日か過ごすのがよいと思います。
このひと夏が、子供たちを少年少女に成長させ、少年少女を青年(青女とは言わないでしょうね)にし、親離れした独立した大人へと一歩近づくチャンスなのですから。
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