■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)



中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。




第1回~第50回まで
第51回~第100回まで

第101回:外国で暮らすこと
第102回:シーザーの偉大さ
第103回:マリファナとドーピングの違い
第104回:やってくれますね~ 中川さん
第105回:毎度お騒がせしております。チリカミ交換です。
第106回:アメリカのお葬式


■更新予定日:毎週木曜日

第107回:不況知らずの肥大産業

更新日2009/04/30


私が勤めている大学で、年1回、職員のための健康診断があります。それに70だか80パーセント以上の職員が参加していますが、参加率が高いのは、そのうちの何パーセントか忘れましたが、「健康」(保険を使って病院に行く可能性が少ない)と認められると、保険料が安くなる方式が採用されているからです。

ですから、健康そうな標準体型の先生には、あなたは是非診断を受けろ、太った先生や病気ばかりしている先生には、お前は隠れていろなどと、冗談が飛び交います。

私は遺伝なのでしょうか、高校の時から今までズーッとヤセッポチで、同じサイズのズボンや服を着ることができるとても経済的な体形です。昨年の健康診断では、血圧、コレステロール、体重、すべて理想的な数値で(この歳にしてはですが…)、看護婦さんからお褒めの言葉を頂いたほどでしたから、今年も勇んで健康診断を受けました。

ところが、保険会社の基準が変わったのでしょう、私の体重は全く去年と変わらず、身長も延びたり縮んだりしていないのに、不健康な痩せすぎと判断されたのです。BMI(ボディ・マス・インデックス)の基準の方が、太目の人へのサービスからでしょうか、変わったのです。

ズボンやブラウスを買うとき、すでに気づいていましたが、昔のサイズではとても大きすぎて合わず、2サイズダウンしてやっと体に合うのです。これは洋服のメーカーが太目の人にゴマをスリ、同じサイズでも昔よりはるかに大きく、太く作っているからです。

私のサイズだとジュニア用になってしまい、とてもおばあさんの私が着て歩けるようなデザインがありません。ですから、衣料品は日本で買うことにしています。

オーバーウエイトが65パーセント、オービース(超デブ)が30パーセントのアメリカで、私のようなヤセッポチは少数派に属し、受難の時代を迎えているのです。

この不景気なご時世に、逆に時代を謳歌しているのが、肥満した人を対象にしたマーケットです。

衣料品産業にとって、太った人は最高のお客さんなんだそうです。というのは、太った人は必ずダイエットを試み、少し痩せると、無理して体形にピッチリ合った洋服を着たがる傾向があり、その90パーセント以上がまたりバウンドで前よりも太るので、さらに大型サイズのモノが売れる、ともかく体重の上がり下がりが激しい分だけ衣料品が売れるのだそうです。

今では、どんなデパートでもオバーサイズ・セクションを設けていますし、デブを全く無視していたファッショナブルなブティックも同様です。

オーバーサイズは衣料品だけに限りません。靴も50キロの体重を支えるものと150キロを支えるのでは当然作り方も違ってきます。ベッド、バスタブ、椅子、ソファーも耐超重量のモノが売り出され、それも好調です。

トイレの便座(というのかしら、辞書ではそうなっていますが)で600キロの重圧に耐え、しかも超大型のお尻を乗せるように設計されたものが市販され、バカ売れしています。

今までの体重計は350ポンドまでしか目盛りがなかったのですが、1,000ポンド(約500キロ)まで測れる体重計が普通に出回るようになりました。

肥満した人を対象にした産業は、年58ビリオンドル(58兆円相当)を売り上げ、不況知らずの高度成長産業なのです。

30年、40年も同じサイズの服で間に合う私のような人は、誰も相手にしてくれない時代のようです。

 

 

第108回:ユニホームとドレスコード