■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)



中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。




第1回~第50回まで

第51回:スポーツ・イベントの宣伝効果
第52回:国家の品格 その1
第53回:国家の品格 その2
第54回:国家の品格 その3
第55回:国家の品格 その4
第56回:人はいかに死ぬのか
第57回:人はいかに死ぬのか~その2
第58回:ガンをつける
第59回:死んでいく言語
第60回:アメリカの貧富の差
第61回:アメリカの母の日
第62回:アメリカの卒業式
第63回:ミャンマーと日本は同類項?
第64回:ミャンマーと民主主義の輸入
第65回:日本赤毛布旅行
第66回:日本赤毛布旅行 その2
第67回:日本赤毛布旅行 その3
第68回:スポーツ・ファッション
第69回:スペリング・ビー(Spelling Bee)
第70回:宗教大国アメリカ
第71回:独立記念日と打ち上げ花火


■更新予定日:毎週木曜日

第72回:ティーンエイジャーのベビーブーム

更新日2008/08/07


私の親戚のティーンエイジャーがとても元気で可愛い赤ちゃんを産みました。彼女がまだ高校生だったものですから、彼女が妊娠したと分かった時から、それはそれは大変スキャンダラスな事件として親戚一同に広がりました。

どこの町にもある養子斡旋センター(多くは教会が運営しています)を通して登録し、養子に出すべきだとか、彼女の将来のために堕胎したほうが良いとか、周囲の人々は千差万別の意見を述べていましたが、彼女は自分のお腹の中で大きくなったのだから、生み、なんとしてでも自分で育てると言い張り、無事出産を終え、未婚の母親としてガソリンスタンドで働きながら、子育てをしています。

一見頼りなげな線の細い少女だった彼女が若い母親として奮闘しているのを見ると、大人たちが分別ありげな意見をするまでもなく、彼女なりに自分の置かれた現実をしっかりと見つめ、生きているいるのだと感心させられました。

マサチューセッツ州の大西洋岸にある人口たった3万人の保守的な漁師町グローセスターで突如ベビーブームが起きました。それも地元の高校生15歳から17歳までの間で妊娠がまるでファッショナブルなことでもあるかのように、18人の女子高校生が一斉に妊娠したのです。

アメリカの高校でお腹の大きな生徒を見ることは珍しくありません。ですが、18人もが一時に妊娠し、しかも女生徒の一人が、みんなで一種の妊娠協約を結び、妊娠し、子供を生み、共同で育てようと約束した…と発言したものですから、ただでさえスキャンダラスなニュースは、火に油を注いだかのように広がりました。この妊娠協約の有無は未だにはっきりしませんが、仲間内で軽い意味での口約束程度はあったようです。

この事件が変わっているのは、女生徒が赤ちゃんが欲しいためにセックスをし、妊娠したことと、少なくとも責任の半分を取るはずの赤ちゃんのお父さんは誰かということが全く問題にされていないことです。通常、ティーンエイジャーの妊娠はデートを重ねたボーイフレンドとの性交渉で避妊に失敗したとか、不用意なセックスをした結果の"できちゃった妊娠"が大半を占めますが、今回はセックスが目的でなく手段であり、目的はあくまで赤ちゃんを産むという、人口減少に悩んでいる日本でなら表彰ものの事件なのです。

毎年アメリカでは、75万人のティーンエイジャーが妊娠しています。しかし、1990年から36パーセントも減っていますし、15歳から17歳までに限ると、55パーセントも減少しています。これは性教育の成果だと、教育関係者は自画自賛しています。

妊娠した一人の女生徒が、「どんな状況におかれても、絶対的に全身全霊をもって愛することができる対象が欲しかった」と言っていました。それほど彼女たちは愛情に飢えていたのかしら、それとも没我的に自分の愛を投入できる対象を必要としていたのでしょうか。

彼女たちが私の親類の子のように、愛情豊かな母親として、子供とともに成長していくことを願わずにはいられません。

 

 

第73回:アメリカで一番有名な日本人