第103回:マリファナとドーピングの違い
更新日2009/03/19
北京オリンピックで前代未聞の金メダル7つも取ったマイケル・フィリプが、マリファナを吸っているところをスクープされ、大スキャンダルになったことは日本でも報道されていることでしょう。なんとも愚かなことをしたものです。偉大なスポーツ選手でも、まだ社会人としてはヨチヨチ歩きの子供と同じ精神年齢なのでしょうか。
事件のあったノースカロライナ州では、マイケル・フィリップを起訴しない方針ですが、彼をコマーシャルに使っていた朝食シリアルやスポーツ用品など、メーカーは一斉に契約を破棄し、彼にとって何億円という収入の道が切られてしまいました。当然の報いですが。
アメリカスポーツの大イベント、スーパーボウルで奇跡のタッチダウンを決めたサントリノ・ホームズは、高校時代、落ちこぼれのチンピラで、ドラッグを下町で売っていましたが、変身して陸上に打ち込み、バスケットやアメリカンフットボールでも活躍する高校のスター選手になり、オハイオ州立大学に行き、そこからドラフト一位でプロのスティーラーズに入ったエリート選手です。変身に成功して英雄になったのです。
ところが、昨年秋、彼の車からマリファナが見つかり、逮捕されました。チームは直ぐに彼を次の試合から外しました。軽犯罪とみなしたのでしょう、一試合だけの出場停止でした。それから、ホームズは大活躍し始め、チームをスーパーボウルの勝利まで導いたのです。
ここで、マイケル・フィリップもサントリノ・ホームズも、スポーツ界を追放されていません。マリファナは俗に言う麻薬と違うし、もとより筋力を増すためのドーピングでもありません。マリファナは幻覚剤でもなく、ただリラックスさせ、ストレス解消に役立つ程度のもので、タバコより習慣性がなく、体に及ぼす害は少ないと言われています。法律で禁止されているので、法を犯したら、その制裁を受けるべきですが、社会的な制裁は加えないという態度をアメリカンフットボールもアメリカの水連も取ったのです。
これがドーピングだと、扱いがまるで違ってきます。社会的制裁も厳しくなり、スポーツ界から永久追放になり、記録も抹殺されます。はっきりとマリファナとドーピングを区別しているのです。オランダなどは個人が喫煙する程度の量の所有は合法的だと言いますし、厳しい取締りをしないヨーロッパの国々も多いと聞きます。
メキシコの国会では、真剣にマリファナの合法化を審議していますし、カリフォルニア州でも、現在、医療用にだけ許されているマリファナを合法化する動きが活発です。
ロシア出身の3人の力士がマリファナで追放になり、今度は、若麒麟がマリファナ所持で、血液検査でマリファナの反応がなかったにもかかわらず相撲界から永久追放されました。
私にはドラッグの中毒になり、長く苦しいリハビリを繰り返している若い甥と姪がいます。二人とも悪夢から抜けだし、やっと大学入学資格試験を通り、今学期から大学生になります。ドラッグがはこびっているアメリカから日本に行くと、麻薬に対して異常なほど厳しい体制は素晴らしいとことだとつくづく感じます。
しかし、若いときの過ちは、逆に大きな力を生むことがあります。過ちを罰することだけではなく、それをバネにして社会に戻って貢献できるような組織でなければ、ただ大勢のオチコボレを生み、オカミの言うことを素直に聞く、面白みのない優等生集団の社会になってしまうのではないでしょうか。
現在の相撲界は、ただ校則を厳しくし、違反した生徒を大量に退学処分にしているレベルの低い私立高校に似てきました。
私はロシア人3人の力士、そして若麒麟が何場所かの出場停止のあと、奮起し、尊敬されるお相撲さんになり、活躍する姿を見たかったと思っています。
第104回:やってくれますね~ 中川さん

