第121回:世界で一番物価の高い町は…
更新日2009/08/06
こんなタイトルを見ただけで、また東京がトップだと思うことでしょう。それが違うのです。さて、東京より物価の高い、住みにくい町はどこでしょうか?
これは雑誌『ビジネスウィーク』が、2008年の物価を集計してランキングをつけたものです。と言うことは、アメリカ人のビジネスマン、ビジネスウーマンが出張や転勤を命じられて、それらの町に滞在することになった場合を想定している、いわばアメリカの物指しで計った統計です。
さて、どこの町がトップだったのでしょうか? なんとアフリカのアンゴラの首都、ルアンダ(Luanda, RwandaやUgandaではありません)でした。
ルアンダに続くのはお決まりの大都市です。2位・東京、3位・名古屋、4位・横浜、5位・神戸と日本勢が占め、6位・コペンハーゲン、7位・オスロ、8位・ジュネーブ、9位・チューリッヒ、10位・バーゼルと北欧、スイスの町が並びます。
一体どんな基準で物価の高い町のランキングを決めたのか覗いてみたところ、驚くべきズサンさというのか、いいかげんというのか、アメリカ的とでもいうのでしょうか、たった五つの要素で判断していたのです。しかも、1.映画館の入場料、2.クィックランチの価格、3.洗濯機の価格、4.お米1キロの価格、5.ソフトドリンク1缶の値段という、奇妙な5項目だけなのです。
これなら、中学生でもインターネットでデータを集めて簡単に統計が取れそうです。
浄水設備の完備していないアフリカの国々で洗濯機が高いのは当たり前で、それらの国々では、洗濯は水場に行って手洗いするのが当たり前です。自分の国では、家のローンを払うのに神経をすり減らしている人たちが、アフリカやアジアの国々に転勤になると、女中さん、運転手さんなど使用人を3、4人もかかえる身分になることもよく知られています。洗濯は、そんな使用人を使ってするほうが安上がりなのでしょう。
また、クィックランチがルアンダで57.92ドルもするのは、誰もアメリカ的クィックランチなるものを取らないからでしょう。ルアンダの市民は誰も、57.92ドルも払ってお昼ごはんを外で食べたりしないのです。ちなみに、東京でのクィックランチ(45分から1時間の昼休みに地中海的フルコースを2、3時間かけて取るサラリーマンはいないでしょうけど)は15.33ドルと算出されています。約1,500円です。毎日お昼ごはんに1,500円のランチを食べるサラリーマンは少数派だと思いますが、どうでしょうか? 700円から800円くらいが手頃で、コンビニのお弁当なら400円から500円であがりますよね。
この5項目の中で生活に即しているのは、お米1キロの価格だけでしょうか。
アメリカのジャーナリズムには、このように、安易な統計を基にしてランキングを発表する傾向がよく見られます。一旦順位が付けられると、どのようにその順位が決められたかは省みられず、結果だけが一人歩きしてしまうものです。
一見まともに見える統計学的ランキングも、よく調べてみるとズサンなデータに基づいていることが多いようです。
世界で最も棲みやすい町、世界で一番空気の奇麗な(汚れている)町、世界で一番食通レストランの集まる町、世界で一番老後の生活がし易い町などのランキングは、どこのラーメン屋さんが一番美味しいという、食べ比べ程度に取るのが無難なようです。
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