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■新・汽車旅日記~平成ニッポン、いい日々旅立ち
 

第695回:ダイレクトパッケージ - ANA 631便 -

更新日2019/08/29



ご縁をいただいている木次線方面から、新たなイベント列車のテスト運行にお誘いいただいた。実施日は2017年8月25日。さっそく取材旅行の計画を立てる。そしていつもの悪い癖が出て、未乗路線に寄り道しようと考えた。今回の標的は中国地方の西側だ。木次線の前にするか後にするか。木次線に乗るならサンライズ出雲で、と思ったら、8月24日東京発の行きも、8月25日宍道駅発の帰りも満席だ。現地の移動は夏休みの時期だから青春18きっぷを使う。しかし、東京からムーンライトながら、というルートは年齢的に厳しいと思う。さりとて割引なしの新幹線も悔しい。

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羽田空港は東京オリンピックをアピール。あと3年

飛行機はどうか。木次線絡みなら米子空港か出雲空港だ。どちらかを拠点にして往復しようか。しかし、出発まで1ヵ月を切り、早期割引運賃は売り切れだ。ふと思い出して、ダイレクトパッケージを探してみた。往復航空運賃と宿泊施設の組み合わせ、ひとり参加のツアー扱いで安く買える。最近はJRグループも真似をしており、ダイレクトレールパッケージなどと呼ばれている。さっそくANAとJALのサイトで比較検討してみた。これがなかなか都合の良い仕組みで、往路と復路は違う空港でも良く、2泊3日の旅でも、ホテルは1泊だけ組み込めばいい。

羽田空港から岩国空港へ飛び、新山口と木次で泊まり、米子空港から羽田空港へ戻るというルートが決まった。ダイレクトパッケージの対象ホテルは新山口。木次の宿は別途手配した。そして料金は片道正規運賃程度だ。これは素晴らしい。と、思うと同時に、鉄道の長距離旅行者が減るわけだと思った。

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羽田空港全景

2017年8月23日。5時に起床。鞄に着替えなどを詰め込み、昨夜、そのままにした食器を洗う。6時10分に家を出て、平和島駅06時26分発の特急に乗り、蒲田で横浜から来たエアポート急行に乗り換えて、06時40分に羽田空港国際線ターミナル駅に着く。保安検査場が混んでいて、出発時刻が近い私は優先検査列に誘導された。出発時刻は07時05分。ギリギリだ。食器を洗っておく場合ではなかった。しかしこの夏、放置すれば大変なことになる。

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横浜ベイブリッジとつばさ橋

いずれにしても、こんなギリギリの出発はやめよう。空港に近いところに住むと油断する。以前にも電車で行くか、クルマで行って駐車場に留め置くかで迷った。結局、立体駐車場からの出庫が遅いと判断してタクシーに乗り、そこそこいい料金を払って後悔した。

ANA 631便、エアバスA320型機は第2ターミナル68番ゲートから定刻に出発し、海上のランウェイ05から離陸。快晴の空を飛びつつ、気流が早いようで小刻みに揺れた。岩国錦帯橋空港に08時35分着。定刻は08時40分だけど、着陸時に「みなさまのご協力により5分早着」と放送された。乗客全員が早く集まれば、出発時刻が繰り上がる。飛行機はそういうルールだ。天候や滑走路の混雑を見越したダイヤだけれど、時刻が繰り上がって困る乗客はいない。

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広島スカイブリッジ

岩国錦帯橋空港は軍民共用で、米軍と自衛隊が使っている岩国基地に2012年から民間機が乗り入れている。さかのぼれば大日本帝国海軍の基地。戦後は占領軍管轄下で国際線旅客機も定期運行した。朝鮮戦争を境に軍用空港となった。滑走路と航空管制は米軍が行っている。滑走路は東西方向。西側に基地関連の施設があり、東側は海。631便は滑走路の南から着陸した。ランプウェイは約1kmと長く、基地施設の北側を通ってターミナルに至る。つまり、左側の窓から基地の様子が見えた。私は右の窓側席を選んでいた。西へ向かう便では右の窓側の方が陸地を眺められる。しかし、岩国基地を眺めたいなら左側がよい。覚えておこう。

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瀬戸内海を飛ぶ

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南側から着陸

岩国錦帯橋空港の搭乗橋は1本だけ。ターミナルビルは小さいながらも洗練されたデザインだ。白い壁でガラス面積が大きく、そのまま都会に持って行けば、ファッション関係やカフェ・レストランがテナントとして入居しそうである。到着口からロビーへ行く途中に中庭があり、クリスマスツリーのような柱に金魚がたくさんぶら下がっている。これは金魚ちょうちんといって、岩国市の隣、柳井市の名物だ。そんなふうに観察しながらロビーに降りると、空港連絡バスがすぐに発車するという。駆け込むようにバスに乗り込む。小さな空港ならではのスピード感だ。

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小さいけれどおしゃれなターミナルビル

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柳井名物、金魚ちょうちん

岩国駅には9時過ぎに着いた。駅舎は建て替え工事中だ。09時52分発の列車に乗るまで何をして過ごそうか。錦帯橋行きのバスが出ている。空港の名前になるほどの名所だし、行ってみたいけれども、バスで片道20分という。往復で40分か。これは無理だなあ。錦帯橋往復のバスと錦川鉄道のフリーきっぷもある。1,500円。これは錦帯橋に行かないなら割高だろうなと見送ったけれど、実際は錦川鉄道の片道運賃が960円だから、鉄道だけでもこちらがトクだった。ちょっと悔しい。でも、後から行く人には教えてあげたい。錦川鉄道には昼トクきっぷという往復割引があるけれども、発売駅が錦町だから、岩国発の行程では使えない。

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岩国駅は建て替え工事中

駅前のビルの1階に100円ショップがある。冷房で涼みつつ店内を観察。入店料代わりに冷たい飲み物と、あ、荷造り用のマジックテープをみつけた。キャスター付き鞄に載せたデイパックがズリ落ちて困っていた。マジックテープで解決するかな。買い物が終わると、なんとも半端な時刻である。青春18きっぷに日付をもらって構内に入る。錦川鉄道は岩徳線の川西駅が起点だけれど、列車は岩徳線に乗り入れて岩国駅が始発駅だ。発車まで30分ほどを錦川鉄道のプラットホームの日陰で過ごす。

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新旧の車両をながめる

列車たちを眺めると飽きない。国鉄時代に作られたタラコ色のキハ47が健在。JR西日本が黄色一色に塗り、真っ黄色、末期色と揶揄される115系電車も行き交う中で、最新形電車、レッドウイングこと227系電車が現れた。鉄道車両の歴史、三世代同居の眺め。いや、年寄りが多すぎる。少子高齢化の電車道か。

-…つづく



杉山 淳一
(すぎやま・じゅんいち)
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1967年生まれ。東京出身。東急電鉄沿線在住。1996年よりフリーライターとしてIT、PCゲーム、Eスポーツ方面で活動。現在はほぼ鉄道専門。Webメディア連載「鉄道ニュース週報(マイナビ)」「週刊鉄道経済(ITmedia)」「この鉄道がすごい(文春オンライン)」「月刊乗り鉄話題(ねとらぼ)」などWebメディアに多数執筆。「鉄旅オブザイヤー」最終選考委員。

<<杉山淳一の著書>>

■連載完了コラム
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■著書
『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法: 時刻表からは読めない多種多彩な運行ドラマ!』


列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法
杉山淳一 著


『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。』 ~日本全国列車旅、達人のとっておき33選~』

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『みんなのA列車で行こうPC 公式ガイドブック (LOGiN BOOKS)』

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