のらり 大好評連載中   
 
■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと

第289回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2015 ~予選プール前半戦を終えて

更新日2015/10/01


中学生の頃から45年以上、約半世紀近くラグビーを観続けてきたが、今回のジャパンの勝利は奇跡というより他なく、あらゆるイメージを駆使しても、このような結果になるだろうとはまったく思いもよらなかった。

前回のこのコラムで・・・
「もちろん本気で勝つ姿勢で臨む南ア戦ではあるが、このチームにはどんなことがあっても勝てない」
と私は断言した。ジャパンに最大の尊敬の念を抱きつつ、心から謝罪したい。そして、慎んで前言を撤回したいと思う。何回繰り返しあの試合の録画を観たことだろう。まるで夢のような、いや夢でも描ききれないようなゲームが繰り広げられている。このようにすれば勝てるというラグビーを、我らがジャパンがプレーしている。

「そんなことできるはずがない」と長年の諦めの固定概念が、そう思わせるのだが、目の前で彼らはそれを打ち破ってくれたのである。テレビ画面に映るプレー中の気合がこもった表情とともに印象的だったのは、プレーを終えて引き上げてきた選手たちの能天気なくらい明るい表情での応援の光景だった。

いつものW杯のように、悲壮感漂う顔つきで戦況を見つめている者は一人もいなかった。「いける、いける、もっと行ったれ!」、彼らの笑顔はそう言っていた。この雰囲気が勝利を呼んだのだろう。

一方の南アのキャプテン、ジャン・デ・ヴィリアーズの表情の変化は興味深かった。ゲーム開始前、ピッチに出てくるときは実に爽やかで明るく、「さあ、始めましょうか」という笑顔だった。

それがゲームが進むにつれ、表情に?・・??・・・???と疑問符が徐々に増え始め、ゲーム終盤では焦りと苦悩がはっきりと顔に浮かんできた。そしてノーサイドの笛の時には、まるで悪夢を見せられているかのように重く沈痛な形相になっていた。

最初は友人の結婚式に招かれたように晴れ晴れとしていた顔が、終いには友人のお通夜に立ち会うかのような顔に変わっていったのだ。

ジャパンはとんでもないことをしでかした後、中3日でスコットランド戦を戦い大敗した。スコアほどの大差のゲーム内容ではないが、スコットランドは南アに勝った日本に最大限の敬意を払い、真摯な姿勢を見せ、全力で戦ってきた。

世界一タフなチームと戦って満身創痍の状況で、ほとんど間隔を持たせてもらえずに次のゲームに臨んだ割には、ジャパンは前半、実に良いゲームをしたと思う。ただ武器である抜群のフィットネスで、後半相手を疲れさせる作戦を遂行することは難しかった。逆に自分たちが疲れてしまい、ミスを突かれていた。

疲労が最大限に達しているので、これはまったく無理もないところだ。しかし、スコットランドに5トライを献上し、ボーナスポイントを与えてしまったことは、今後の行く末を考えると非常に痛かったと思う。

それにしても中3日、そしてその後は中9日となるような歪な日程はどうにかならないものか。殊に中3日で長距離移動付きのゲーム開催は、ラグビーというスポーツの常識では考えられない。スコットランドも、日本戦の後、中3日でアメリカ合衆国戦、そして中5日で南アフリカ戦と、タイトなスケジュールを強いられている。

ホーム・アドバンテージとは言え、全試合、中6日ないしは中7日で同時刻から、しかも強豪国との重要な3試合はホーム・グラウンドのトィッケナムでゲームができる開催国イングランド。少しアンフェア過ぎませんか? まあ、もともと騎士道なんてものは持ち合わせない国のようだけれど…。

閑話休題。ジャパンの勝利をきっかけに、比較的穏やかだと予想されていたプールBが、ここに来て「死のグループ」の様相を呈してきた。ジャパンは、この後もしサモア、アメリカ合衆国に勝利したとしても、南アとスコットランドが3勝1敗の場合は、決勝トーナメント行きがほぼ難しくなる。ジャパンの都合で言えば、スコットランドが南アを破る快挙を見せるか、サモアにスコットランドを打ち負かして欲しい。

それでは、これまで全チームが2試合を戦ってきた中で、他のプールを見ていこう。

まず、文字通りの「死のグループ」となったプールA。オーストラリアは2勝で勝ち点9、得失点差でも大きくリードし、順調に進んでいる。先日のイングランド対ウエールズ、イングランド優位かと思われたが、ウエールズが粘り勝ちをした。

攻守の要で、今大会随一のプレース・キッカー、FBリー・ハーフペニーの欠場で戦力が大幅に落ちたと言われていたウエールズ。イングランドとのゲーム、キッカーの代わりを務めたSOのダン・ビガー、極度に緊張の面持ちで最初のPGを決めた後は、すべてのキックを成功させる(全8本)という大活躍で、立派にその責務を果たした。そわそわと落ち着かず、せわしなく身体を動かした後、助走に入り、一見実に頼りなげに見えるが、ところがどっこいである。

オーストラリアがイングランド、ウエールズとの対戦を残しているのでまだ何とも言えないが、イングランド1歩後退の感は免れない。ただ、野戦病院のごとく怪我人が溢れかえっているウエールズの今後は、不安材料が多過ぎる気がする。

プールCは、ニュージーランドがアルゼンチンに勝ち、トンガがジョージアに敗れたことで、ニュージーランド1位、アルゼンチン2位通過がほぼ決定、おそらくもう風は吹かないだろう。

プールDは、フランス、アイルランドの直接対決により順位が決まり、この2チームの上位進出は揺るがず、他のチームの通過の可能性は考えにくいと思う。

今回は、まだ日本が決勝トーナメントへの進出の可能性があるため、にわかにどこの国が残れるのか、予想を立てたくない思いである。けれども、この初めてのドキドキハラハラ感は、何とも言えずに良いものではある。

10月1日からの予選プール後半戦の熱戦に期待をしたい。

-…つづく

 

 

第290回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2015 ~予選プール戦終了~決勝トーナメントへ

このコラムの感想を書く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


金井 和宏
(かない・かずひろ)
著者にメールを送る

1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
Lis. master's voice


バックナンバー

第1回:I'm a “Barman”~
第50回:遠くへ行きたい
までのバックナンバー

第51回:お国言葉について ~
第100回:フラワー・オブ・スコットランドを聴いたことがありますか
までのバックナンバー

第101回:小田実さんを偲ぶ~
第150回:私の蘇格蘭紀行(11)
までのバックナンバー


第151回:私の蘇格蘭紀行(12)
第200回:流行り歌に寄せてNo.12
までのバックナンバー


第201回:流行り歌に寄せてNo.13
第250回:流行り歌に寄せて No.60
までのバックナンバー


第251回:流行り歌に寄せて No.61
「南国土佐を後にして」~昭和34年(1959年)

第252回:流行り歌に寄せて No.62
「東京ナイト・クラブ」~昭和34年(1959年)

第253回:流行り歌に寄せて No.63
「黒い花びら」~昭和34年(1959年)

第254回:流行り歌に寄せて No.64
「ギターを持った渡り鳥」~昭和34年(1959年)

第255回:流行り歌に寄せて No.65
「アカシアの雨がやむとき」~昭和35年(1960年)

第256回:流行り歌に寄せて No.66
「潮来花嫁さん」~昭和35年(1960年)

第257回:流行り歌に寄せて No.67
「雨に咲く花」~昭和35年(1960年)

第258回:流行り歌に寄せて No.68
「霧笛が俺を呼んでいる」~昭和35年(1960年)

第259回:流行り歌に寄せて No.69
「潮来笠」~昭和35年(1960年)

第260回:流行り歌に寄せて No.70
「再会」~昭和35年(1960年)

第261回:流行り歌に寄せて No.71
「達者でナ」~昭和35年(1960年)

第262回:流行り歌に寄せて No.72
「有難や節」~昭和35年(1960年)

第263回:流行り歌に寄せて No.73
「硝子のジョニー」~昭和36年(1961年)

第264回:流行り歌に寄せて No.74
「東京ドドンパ娘」~昭和36年(1961年)

第265回:流行り歌に寄せて No.75
「おひまなら来てね」~昭和36年(1961年)

第266回:流行り歌に寄せて No.76
「銀座の恋の物語」~昭和36年(1961年)

第267回:流行り歌に寄せて No.77
「北上夜曲」~昭和36年(1961年)

第268回:流行り歌に寄せて No.78
「山のロザリア」~昭和36年(1961年)

第269回:流行り歌に寄せて No.79
「北帰行」「惜別の歌」-その1~昭和36年(1961年)

第270回:流行り歌に寄せて No.80
「北帰行」「「惜別の唄」-その2~昭和36年(1961年)

第271回:流行り歌に寄せて No.81
「スーダラ節」~昭和36年(1961年)

第272回:流行り歌に寄せて No.82
「王将」~昭和36年(1961年)

第273回:流行り歌に寄せて No.83
「上を向いて歩こう」~昭和36年(1961年)

第274回:流行り歌に寄せて No.84
「寒い朝」~昭和37年(1962年)

第275回:流行り歌に寄せて No.85
「若いふたり」~昭和37年(1962年)

第276回:流行り歌に寄せて No.86
「遠くへ行きたい」~昭和37年(1962年)

第277回:流行り歌に寄せて No.87
「いつでも夢を」~昭和37年(1962年)

第278回:流行り歌に寄せて No.88
「下町の太陽」~昭和37年(1962年)

第279回:流行り歌に寄せて No.89
「赤いハンカチ」~昭和37年(1962年)

第280回:流行り歌に寄せて No.90
「霧子のタンゴ」~昭和37年(1962年)

第281回:流行り歌に寄せて No.91
「エリカの花散るとき」~昭和38年(1963年)

第282回:流行り歌に寄せて No.92
「恋のバカンス」~昭和38年(1963年)

第283回:流行り歌に寄せて No.93
「見上げてごらん夜の星を」~昭和38年(1963年)

第284回「流行り歌に寄せて No.94
「巨人軍の歌?闘魂こめて」?昭和38年(1963年)

第285回:流行り歌に寄せて No.95
「長崎の女〈ひと〉」~昭和38年(1963年)

第286回:流行り歌に寄せて No.96
「島のブルース」~昭和38年(1963年)

第287回:流行り歌に寄せて No.97
「東京五輪音頭」 ~昭和38年(1963年)

第288回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2015開幕!!
■更新予定日:隔週木曜日



  TOP-トップページ》 《コラム一覧 》 《のらりインタビュー》 《コラム・バックナンバー
……………………………………現在連載コラム……………………………………
新・汽車旅日記 】 【店主の分け前 】 【イビサ物語
 【亜米利加よもやま通信 】 【ギュスターヴ・ドレとの対話 】 【よりみち
………………………………掲載完了イチオシコラム………………………………
[拳銃家業 ] [貿易風の吹く島から ] [ くらり、スペイン ] [グレートプレーンズのそよ風 ]  
  [フロンティア時代のアンチヒーローたち ]

    

このサイトに関するご意見・ご感想・お問い合わせはこちらまで。
Copyrights 2019 Norari