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第381回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2019 開幕!!

更新日2019/09/19



「流行り歌に寄せて」を継続掲載している途中ですが、4年に一度のワールドカップ(以下:W杯)、どうしてもフリークの血が騒ぎ、4年前と同じように、開催中はラグビーについてのコラムになります。どうかご容赦いただき、少しでも関心のある方は、さらっと目を通してみてください。よろしくお願いいたします。

第9回ラグビーW杯 2019が、いよいよ史上初めてアジアの日本で、明日9月20日から始まる。

まず、本題に入る前に私見を少し述べておきたい。私はジャパンのW杯前までのマッチ・メイキングには疑問点が多すぎるように思えた。最初に昨年の11月下旬のロシア戦を最後に、今年7月下旬のフィジー戦まで、8ヵ月もテストマッチを組んでいないこと。ジャパンとして一番、多くのチームと身体を当てなければならない時期だったはずだ。

その間、ウェールズ、フランスなど、ヨーロッパ・チームとのゲームはなぜ組めなかったのだろうか?
さらには、W杯開幕わずか2週間前の南アフリカとのゲーム、私は行なってはならないものだったと思っている。世界一フィジカルの強いチームと対戦して怪我などのリスクが多過ぎ(実際に福岡とアマナキというBKとFWのキーマンが傷んだ)、さらには自分たちの方向性に迷いが生じ、それを開幕までに修正ができるか、甚だ不安だからである。半年前、せめて3ヵ月前に、組まれるマッチだと思う。そうであれば、しっかりと修正をし、新たな方向性を探る時間は充分にあり、たいへん意義のあるものになったはずだ。

南アフリカとの試合前に、ジェイミー・ジョセフ監督は「この試合は良い内容が必要、勝利しなければならない試合ではない。ロシア戦は勝利しなければならない」とコメントしているが、多くのリスクを背負い、勝たなくても良いテストをして、W杯初戦のロシア戦にどう良い影響が出るのかが理解できない。そもそも、ラグビーで予め勝たなくても良い思いで臨むテストなど、組んではならない。

前回の大会で世界に示した「ジャパンは唯一、南アに10割勝っているチームだ」というカリスマ性が払拭され、W杯の対戦相手に与える影響も少なくないだろう。

開幕直前になってかなり強く批判をしてしまったが、これが杞憂に終わり、今までのジャパンの進め方が功を奏して良い試合結果になれば、私は「まだまだラグビーのことを知らなかった」と反省し、しっかりと謝りたいと思う。もちろん、そうなることの方を心から願っている。


閑話休題。
今回の予選プール戦の組み合わせを見てみよう。20ヵ国が、四つのプールに分かれ五つのチームの総当たりの後、上位2チームが決勝トーナメントに進む。21世紀に入って以降、ラグビーW杯はこの形式で行なわれている。国名の次に記す( )内の数字は、W杯開催直前9月16日付のワールド・ラグビー世界ランキングの順位である。

■プールA

アイルランド(1) スコットランド(7) 日本(10) ロシア(20)

■プールB

ニュージーランド(2) 南アフリカ(4) イタリア(14) ナミビア(23) カナダ(22)

■プールC

イングランド(3) フランス(8) アルゼンチン(11) アメリカ(13) トンガ(15)

■プールD

オーストラリア(6) ウェールズ(5) ジョージア(12) フィジー(9) ウルグアイ(19)


もちろん一概に語ることはできないが、決勝トーナメント進出チームを比較的予想しやすいプールが、プールBとプールDだと言えると思う。それぞれニュージーランド、南アフリカとオーストラリアとウェールズが残るだろう。しかし、どちらが1位通過、2位通過ということになると、これはかなり予想が難しい。

プールAはアイルランドが最有力で、次に入ってくるのはスコットランドかジャパンか。おそらく史上初めて世界ランキング1位になったアイルランドは、アイルランド・ラグビー史上最強のチームであることは間違いない。

しかし、初戦にあたるスコットランドが矜持を持って試合に臨み、かつてずっと格下だったアイルランドを打ち負かすことができれば、展開は大きく変わる。そうなれば、ジャパンの決勝トーナメント進出はかなり厳しくなるだろう。

プールCは、今大会のいわゆる「死の組」に当たる。イングランド、フランス、アルゼンチン、どこが出てきても不思議ではない。前回大会、自国開催でありながら予選プールで敗退、母国、宗主国のプライドなどなりふり構わず、史上初めてオーストラリア出身で、しかもノン・キャッパーであるエディ・ジョーンズを指揮官に据えたイングランドが、わずかにリードしているのか。

良くも悪くも、常に大会前の予想を裏切るフランス、日本よりもランキングが下にいて眠ったふりをしているが、W杯では驚異的な勝負強さを見せるアルゼンチン、最も熱いプールになるだろう。


さて、翻ってジャパンの日程は次の通りである。


第1戦、対 ロシア戦  9月20日(金) 過去の対戦成績 ジャパンの5勝1敗

第2戦、対 アイルランド戦 9月28日(土)   〃      ジャパンの0勝7敗

第3戦 対 サモア戦 10月6日(日)      〃      ジャパンの4勝11敗

第4戦 対 スコットランド戦 10月13日(日)  〃      ジャパンの0勝7敗

さすがに自国開催ということであり、前回のイングランド大会のように南ア戦の後、中3日でスコットランド戦というような酷い日程ではなく、最低でも中6日で組まれている。

ジャパンにとって何より大切なのは、初戦のロシア戦で勝利すること。過去の対戦成績は有利ではあるが、直近の昨年11月のテストマッチでは32−27の、僅か1トライ差での勝利だから、間違いなく力は拮抗している。

ロシアはスクラムをはじめFWのパワープレーの強さに加え、俊足のBKが、隙を狙ってトライを狙ってくる。ジャパンは持ち前のスピード・ラグビーで相手を疲れさせて、湿度の高いこの国で優位性を保っていきたい。


今、これを書いている時に、初戦のロシア戦のメンバーが発表された。


1. PR  稲垣 啓太(29歳) 29CAP

2. HO  堀江 翔太(33歳) 61CAP

3. PR  ヴァル アサエリ 愛(30歳) 9CAP<トンガ出身>

4. LO  ヴィンビー・ファンデルヴァルト(30歳) 12CAP<南アフリカ出身>*

5. LO  ジェームス・ムーア(26歳) 3CAP<オーストラリア出身>*

6. FL  リーチ マイケル(30歳) 63CAP<ニュージーランド出身>

7. FL  ピーター・ラブスカフニ(30歳) 3CAP<南アフリカ出身>*

8. NO8  姫野 和樹(25歳) 12CAP

9. SH  流 大(27歳) 19CAP

10. SO  田村 優(30歳) 58CAP

11. WTB  レメキ ロマノ ラヴァ(30歳) 11CAP<ニュージーランド出身>

12. CTB  中村亮土(28歳) 19CAP

13. CTB  ラファエレ ティモシー(28歳) 18CAP<サモア出身>

14. WTB  松島 幸太朗(26歳) 34CAP

15. FB  ウィリアム・トゥポウ(29歳) 10CAP<ニュージーランド出身>*

《RESERVE》

16. (HO)  坂手 敦史(26歳) 17CAP

17. (PR)  中島 イシレリ(30歳) 3CAP<トンガ出身>

18. (PR)  具 智元(25歳) 8CAP<韓国出身>

19. (LO)   トンプソン ルーク(38歳) 67CAP<ニュージーランド出身>

20. (FL)  ツイ ヘンドリック(32歳) 44CAP<ニュージーランド出身>

21. (SH)  田中 史朗(34歳) 70CAP

22. (SO/CTB)  松田 力也(25歳) 20CAP

23. (FB)  山中 亮平(31歳) 13CAP

30歳の選手が多いのが目立つ。個人的には私の息子と同じ年であるから、彼らの活躍はうれしい。最年少は姫野、具、松田の25歳グループで、最年長はミスター・ラグビー、トンプソン ルークの38歳。この人が選出されたのは大変な朗報で、他の選手たちにとってもかけがえのない存在となるだろう。

トンプソンをはじめ、いわゆる横文字の選手で、姓と名前が日本と同じ順で(・)中黒が打たれていないのが、日本国籍の選手たちである。

アマナキ・レレィ・マフィは姫野和樹が、福岡堅樹はレメキ ロマノ ラヴァが、それぞれの代役を担う形だが、二人とも大ブレイクの可能性は充分秘めている選手であり、とても楽しみである。

前回のイングランド大会で、ウェールズの鉄板プレース・キッカーだったリー・ハーフペニーが大会直前に傷み、代役のキッカーとなったダン・ビガーが、何とも落ち着かないルーティンの後、見事にゴールを決め続け、スターになった例もある。

ジャパンにとって、第2戦のアイルランドは、先ほど書いた通り、何と言っても現時点で世界ランキング1位のチームである。しかし、SHコナー・マレーとSOジョナサン・セクストンの鉄壁と言えるHB団を、ジャパンは今までに経験したことのない動きで翻弄していけば、彼らのシステムにズレが生じてボール確保がしづらくなるはずである。

今回のジャパンの所属するプールは、アイルランドが本当に強くなったとは言え、従来の8回のW杯で、ベスト3になったチームが一つもない、実に幸運な組なのである。決勝トーナメントに進むには千載一遇のチャンスだと、私は思っている。

最後に、ちょっとモダンな浪花節調のコメントをする評論家で、真のラグビー通である藤島大さんが、このW杯に寄せて「記憶なのだ。ラグビーのワールドカップは記憶の祭典である」と書いているのを見た。まったく同感である。

今でも第1回大会のジョン・カーワンやセルジュ・ブロンコ、第2回大会のデイヴィット・キャンピージ、第3回大会のジョナ・ロムーなどを始めとする、スター選手の華麗なトライ・シーンや、湯気が昇り立つFWの激しい攻防、両手を高々と上げ雄叫びをあげる一方で、膝をがくりと落とし両手で顔を覆う選手たちの姿、そして観客席の熱狂など、今でもしっかりと記憶に残っている。

さあ、今年はどのようなシーンが、私たちの脳の中に刻まれるのだろうか。あのブライトンでの南アフリカ戦の最後のシーンに匹敵するようなものが生まれるとすれば、それはもう、50年以上続けてきたラグビー・ファン冥利に尽きるのである。

-…次週につづく

 

 

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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