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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと

第287回:流行り歌に寄せて No.97 「東京五輪音頭」 ~昭和38年(1963年)

更新日2015/08/27

私の店がある自由が丘では、毎年恒例の盆踊り大会がある。8月の第1週の日曜日にかけての木、金、土、日の4日間に渡り、自由が丘駅前ロータリーで、午後6時から9時までの3時間、バスを始めすべての車両の進入を禁止しての一大イベントである。今年も、7月30日から8月2日までの4日間の熱帯夜に賑々しく行なわれた。

ちなみに、9月の初旬には熊野神社例大祭、10月の初旬には女神まつりと、自由が丘は、かなりお祭り好きな地域ではある。

その盆踊り大会でかかる曲には、定番の『東京音頭』『北海盆唄』『炭坑節』のほか、ご当地ソングの『自由が丘小唄』、ご当地ゆるキャラ"ホイップるん"のために作られた『ホイップるん音頭』、最近人気の北島三郎の『やる気で音頭』などがある。

それが、一昨年9月に東京にオリンピック招致が決まる直前から『東京五輪音頭』がフューチャーされることになり、3年目の今年は、5回大きく輪を描くことから始まる、あの踊り方がすっかり踊り手にも浸透して、みな気持ちよさそうに踊っているのである。  

「東京五輪音頭」 宮田隆:作詞  古賀政男:作曲  三波春夫:歌
1.
ハアー (ソレ)あの日ローマで ながめた月が(ソレ トトントネ)

きょうは 都(みやこ)の 空照らす(ア チョイトネ)

四年たったら また会いましょとかたい約束 夢じゃない

ヨイショ コリャ 夢じゃない

オリンピックの 顔と顔ソレトトント トトント 顔と顔ハアー (ソレ)

2.
待ちに待ってた 世界の祭り(ソレ トトントネ)

西の国から 東から(ア チョイトネ)

北の空から 南の海も越えて日本へ どんときた

ヨイショ コリャ どんときた

オリンピックの 晴れ姿ソレトトント トトント 晴れ姿ハアー (ソレ)

3.
色もうれしや 数えりゃ五つ(ソレ トトントネ)

仰ぐ旗みりゃ はずむ胸(ア チョイトネ)

すがた形は 違っていてもいずれおとらぬ 若い花

ヨイショ コリャ 若い花オリンピックの 庭に咲くソレトトント トトント 庭に咲くハアー (ソレ)

4.
きみがはやせば 私はおどる(ソレ トトントネ)

菊の香りの 秋の空(ア チョイトネ)

羽をそろえて 拍手の音にとんでくるくる 赤とんぼ

ヨイショ コリャ 赤とんぼ

オリンピックの 今日の歌ソレトトント トトント 今日の歌


この曲が発売されたのは、私が小学校2年生の時だった。待望のオリンピック開催まで1年と4ヵ月弱前の昭和38年6月23日のオリンピック・デーに発表されたのである。そして、この曲が東京オリンピックのオフィシャルのテーマソングになった。

とにかく、多くの人々が浮かれるように歌っていたのをよく覚えている。近所の神社で行なわれていた盆踊りでこの曲がかかったこと、こちらはおぼろげな記憶として残っている。この曲に先導されるように、国民のほとんどが「オリンピックへ、オリンピックへ」と向かっていったような気がする。

今では三波春夫の歌唱があまりにも有名なために、彼のオリジナルではないかと思う人がほとんどのようだが、実は作曲家の古賀政男は、三橋美智也が歌うことを想定して曲を書き、曲が発表された時に歌ったのも三橋だった。

コロムビアの専属だった古賀政男が、戦後の日本国民の最初の国際大会のための曲であることを考慮したのであろう、その録音権をすべてのレコード会社に開放していた。

そのため、お膝元であるコロムビアは北島三郎と畠山みどりのデュエット、以下、三橋美智也(キング)、三波春夫(テイチク)、橋幸夫、つくば兄弟・神楽坂浮子(いずれもビクター)、坂本九(東芝)、大木伸夫・司富子(ポリドール)、初音家賢次(ニッポンレコード)、藤山一郎(ソノレコード)、菅原洋一(朝日ソノラマ)と、各レコード会社による一大競作となったのである。

その中でも、三波春夫の歌唱が圧倒的な人気を得たのは、彼のこの曲に対する並々ならぬ思い入れがあったのだと、後に多くの人々が語っている。応召され戦地に赴き、最後は4年にわたるシベリヤの抑留生活を余儀なくされた三波には、日本の戦後の復興の姿を世界に見てもらいたいために、どうしてもオリンピックを成功させたいという強い気持ちがあったという。

そのために、自分の新曲が出たときでも、その曲よりもこの『東京五輪音頭』の方を優先して歌い回ったという。その努力が実を結び三波盤だけで、250万枚の売り上げがあった。このオリンピックの6年後に開催された大阪万博で歌った『世界の国からこんにちは』にも、彼のその姿勢は受け継がれていった。

ところで、私たち小学生はオリンピックが近づいた頃、体育館などで行なわれた、週初めの全校朝会などで歌った(歌わされた?)曲があり、むしろあの頃、小中学校の生徒であった世代の人々は、こちらの方がより記憶に残っているのではないか。

それは『海をこえて友よきたれ』という曲で、今回、上記10組の『東京五輪音頭』のレコードの半数にあたる5枚でカップリングされていたことを知り、改めて驚いている。

《こんな曲でした。思い出していただければ、とてもうれしく思います。》

『海をこえて友よきたれ』 土井一郎:作詞  飯田三郎:作曲  冨田勲:編曲
1.
海を越えて 友よ来たれ 明け渡る 山に川に

若さ溢れ力溢れ より速く より高く より強く

大地蹴る響高く あぁ 東京 東京オリンピック

2.
空に駆けり 水に踊り 花開く 技を競え

若さ溢れ 命溢れ より速く より高く より強く

日本の風は光る あぁ 東京 東京オリンピック

3.
聖火燃えて 誓う平和 万国の旗の下に
 
若さ溢れ 夢は溢れ より速く より高く より強く

未来への虹を架ける あぁ 東京 東京オリンピック


さて、5年後のオリンピックではどんな曲が生まれ、どんな人によって歌われるのだろうか。自分の中では、あの頃の高揚感は、ほとんどと言って感じられないだろうが、56年の間に、日本の音楽はどう変わってきたのかを知る手掛かりになるのだとしたら、それは興味深いことだと思う。

-…つづく

 

 

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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