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第286回:流行り歌に寄せて No.96 「島のブルース」~昭和38年(1963年)

更新日2015/08/13

私の故郷の長野県は、ほとんど芸能人という人々を輩出していない。歌手も極端に少なく、「NHK紅白歌合戦」に出場した歌手となると私の知る限り、僅かに3人しかいない。(資料を調べると4人となっているが、もう一人は残念ながらわからない)

その中で図抜けているのが諏訪市出身の美川憲一で昭和43年から6年前の平成21年まで、合計26回出場。目が眩むような派手な衣装で小林幸子と競演するのは、大晦日の定番行事でもあった。東筑摩郡朝日村出身の上條恒彦は、昭和47年、48年に2年連続で出場している。

そして、美川よりも5年前の昭和38年、おそらく長野県出身者で紅白出場第一号となったのは、今回ご紹介する伊那市出身の三沢あけみであり、その曲が『島のブルース』であった。


「島のブルース」 吉川静夫:作詞 渡久地政信:作曲 三沢あけみ・和田弘とマヒナスターズ:歌

1.
奄美なちかしゃ 蘇鉄のかげで

泣けばゆれます サネン花ョ

ながい黒髪 島むすめ 島むすめョ

2.
愛人(カナ)はいまごろ 起きてか寝てか

淋しがらせる 浜千鳥ョ

南風(ハエ)のふく夜は ねむられぬ ねむられぬョ

3.
夏のおどりは 七日と七夜

みんな知り候(ショ)る 月の夜ョ

名瀬の港の 船が出る 船が出るョ

4.
着せてみせたい 大島つむぎ

わすれられない あのひとにョ

なさけひとすじ 島むすめ 島むすめョ


この年の4月にリリースされた時は『和田弘とマヒナスターズ』との共演だが、大晦日の紅白ではマヒナが白組として『男ならやってみな』を歌っているので、三沢は単独で、奄美大島独特の衣装を纏って歌っている。またこの日は、同じ島をテーマにした歌『奄美恋しや』を、仲宗根美樹が披露しているのも興味深い。

三沢はこの曲で「第5回日本レコード大賞」の新人賞も獲得しており、文字通り彼女の代表曲である。

作曲の渡久地政信は、少年時代を奄美大島で過ごしたことからこの曲をイメージできたのだろう。イントロ、間奏中などにしきりに聴こえてくる「指笛」は、渡久地本人が吹いているという。

作詞の吉川静夫は、この曲あたりから渡久地との仕事が多くなり、青江三奈の『長崎ブルース』『池袋の夜』、小畑実の『流し唄』『青いたそがれ』などを一緒に手掛けている。

さて我が長野県のヒロインにして、おそらく唯一の女性紅白出場歌手、三沢あけみは、終戦から2ヵ月余り前の、昭和20年6月2日に前出の通り伊那市で生まれている。最初は女優を志し、昭和34年第7期東映ニューフェイスに合格し東映に入社した。同期の宮園純子、三島ゆり子、結城美栄子は、現在でも堅実に女優業を続けている。

昭和34年に、NETのテレビドラマ『笛吹童子』で芸能界にデビューし、36年には映画デビューも果たし、東映の大得意分野である時代劇に出演するようになる。

しかし、その後大きな活躍の場に恵まれず、38年ビクターレコードから『ふられ上手にほれ上手』という曲で歌手デビューをすることになった。この曲もマヒナとの共演だった。しかし、それがお色気過多ということで放送禁止という憂き目にあってしまう。

気を取り直して同じ年に『島のブルース』を吹き込み大ヒットするわけだが、彼女がまだ18歳になったばかりの時だというから、昔の歌手は本当に早熟だったと思う。

先々月に古稀となり、歌手での生活も52年を迎えた三沢だが、現在でもテレビの歌謡ポップスチャンネル及びBS12チャンネルで『三沢あけみのお茶会・歌謡界』という自身の帯番組を持つなど、活躍を続けている。

私の中では、すでに長野県人という意識はかなり希薄だが、彼女に関しては同郷の精進を続けている先輩ということで、素直にエールを送り続けていこうと思っている。

-…つづく

 

 

第287回:流行り歌に寄せて No.97「東京五輪音頭」 ~昭和38年(1963年)

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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