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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと

第252回:流行り歌に寄せて No.62 「東京ナイト・クラブ」~昭和34年(1959年)

更新日2014/02/20

こんなことを書くと意外だと思われる方も多いと思うが、私はデュエットで歌うことが苦手である。もう一つ、チークダンスを踊るのはさらに苦手で、今までほとんど踊った経験がない。

デュエットは、とにかく無性に照れくさい。自意識過剰なのかも知れないが、相手の方にそっけなくはできないし、あまり近づくのも躊躇(ためら)われるし、マイクを持たない側の手の置き場に困る。

と、私の個人の感想は置いておいて、今回の歌は今でもいたるところで歌われているデュエットの名曲である。そして、カラオケスナックなどではこの歌を誰々かが歌い出すと、誰々かがチークダンスを始めるという、お決まりのような流れになっていることが多い。

いわゆる「かけ合い」デュエットの最初の大ヒットとなった曲だと言われている。フランク永井と松尾和子の映像を観ると、実に息のあった大人の歌い方をしていて、こんなふうに歌うことができれば、私も歌ってみたいなあと思わせる。

これだけ大人のムードを持った曲だが、実は松尾のデビュー曲で、録音時、彼女はまだ24歳であった。『東京ナイト・クラブ』は、そのデビュー・レコードのB面に入っており、A面は、その後もずっと共演を続けていく和田弘とマヒナスターズとのデュエット『グッド・ナイト』であった。

まだ新人の女性歌手を、すでにスターであったフランク、マヒナと組ませたのは、レコード会社のビクターと作曲家の吉田正が、松尾に対して大変強い期待を寄せていたことによるものだという。

(以下の詞は1行ごとに、1番は男、女、男、女・・・男女の順、2番は女、男、女、男・・・男女の順、最終章は男、女、男女の順になっている)

「東京ナイト・クラブ」 佐伯孝夫:作詞 吉田正:作曲 フランク永井・松尾和子:歌
1.
なぜ泣くの 睫毛がぬれてる

好きになったの もっと抱いて

泣かずに踊ろよ もう夜(よ)もおそい

わたしが好きだと 好きだといって

フロアは青く 仄暗い

とても素敵な

東京ナイト・クラブ

2.
もうわたし 欲しくはないのね

とても可愛い 逢いたかった

男は気まぐれ その時だけね

うるさい男と 言われたくない

どなたの好み このタイは

やくのはおよしよ

東京ナイト・クラブ


泣くのに弱いぜ そろそろ帰ろう

そんなのいやよ ラストまで 踊っていたいの

東京ナイト・クラブ


さて、私たちの世代(還暦少し手前)の多くは、すでに「ナイトクラブ」というものがどういうものなのかよくわからない。有名な赤坂の「ニューラテンクォーター」などは1980年代の終わりまで営業を続けていたということなので、行く機会がなかったわけでは決してない。

しかし、同世代の人たちに話を聞いても、「僕はよくナイトクラブに通っていたものだよ」という人に出会ったことはないのだ。やはり、私たちよりも10歳ほど先輩に当たる方々のうち、「高給サラリーマン」と呼ばれる人たちが、素敵な女性を連れて通っていったところなのだろう。

よく言われる、ナイトクラブとキャバレーの違いについては、前出の「ニューラテンクォーター」の元営業部長、諸岡寛司氏が、「店側が客に対して飲食物が提供でき、客が社交係ではない女性を同伴できる夜間営業の店がナイトクラブ、できないのがキャバレー」と、彼の著書『赤坂ナイトクラブの光と影』の中で述べているようだ。

平たく言えば、音楽を聴きながら酒を飲んだり踊ったりしに、男女のカップルで行く店が「ナイトクラブ」、一人ないし男同士で行く店が「キャバレー」と言うことか。

一度でよいから、上下バシッとしたスーツで決めて、カクテル・ドレスなどに身を纏った妙齢な女性をエスコートし、高級なナイトクラブのドアを開けてみたかった…、とは書いたものの、チークダンスさえ踊ることが苦手な私は、その資格を端から持ち合わせてはいないのだ。

-…つづく

 

 

第253回:流行り歌に寄せて No.63 「黒い花びら」~昭和34年(1959年)

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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