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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと
第194回:流行り歌に寄せてNo.11 「青い山脈」~昭和24年(1949年)

更新日2011/08/25


「変しい変しい私の変人、新子様……」。私がこの小説を初めて読んだのは中学3年生の時。健全な青春小説である石坂洋次郎作品に共感し、その頃、他に『若い人』や『陽のあたる坂道』などを読んだ記憶がある。

その中学生の時には、冒頭に書いた「恋」の字を「変」と誤ってしまうことに、「女学生として、いくら何でもあり得ないだろう」と思っていた。その後、高校生になって『青い山脈』が朝日新聞に掲載されていた当時は、旧字が使われていることが、何かのきっかけで解った。

「戀」と「變」では、確かに紛らわしいかも知れない。これならあり得るなと、考え直したものである。今回、ネットをいろいろと見ていたら、まったく同じように考えている人が何人かいらして、思わず苦笑してしまった。

「青い山脈」西条八十:作詞 服部良一:作曲 藤山一郎 奈良光枝:歌
1.
若く明るい 歌声に 雪崩は消える 花も咲く

青い山脈 雪割桜

空の果て 今日もわれらの 夢を呼ぶ

2.
古い上衣よ さようなら さみしい夢よ さようなら

青い山脈 バラ色雲へ

あこがれの 旅の乙女に 鳥も啼く

3.
雨にぬれてる 焼けあとの 名も無い花も ふり仰ぐ

青い山脈 かがやく嶺の

なつかしさ 見れば涙が またにじむ

4.
父も夢見た 母も見た 旅路の果ての その果ての

青い山脈 みどりの谷へ

旅をゆく 若いわれらに 鐘が鳴る


この作品は、まず新聞小説が人気を博し、単行本になって売れ、それが映画化されて大ヒットし、さらにその主題曲が大ヒットするという、新聞社、出版社、映画会社、レコード会社にとっては理想的なものであろう。

そして、余程日本人の心を捉えてしまったのか、1949年版を初め5回も映画化されている。

監 督: 寺沢 新子役、金谷 六助役、島崎 雪子役、沼田 玉雄役の順で列挙してみる。

1949年版(東宝) 
今井 正: 杉 葉子、池辺 良、原 節子、龍崎 一郎

1957年版(東宝) 
松林 宗恵: 雪村 いづみ、久保 明、司 葉子、宝田 明

1963年版(日活) 
西河 克己: 吉永 小百合、浜田 光夫、芦川 いづみ、二谷 英明

1975年版(東宝) 
河崎 義祐: 片平 なぎさ、三浦 友和、中野 良子、村野 武範

1988年版(松竹) 
斎藤 耕一: 工藤 夕貴、野々村 真、柏原 芳恵、舘 ひろし

なるほど、という感じである。時代を感じさせるキャスティングである。

初の映画化から最後の映画化まで40年、1940年代、50年代、60年代、70年代、80年代にそれぞれ1本ずつ製作されているのも興味深い。昭和で言えば24年から63年。平成になる前年まで作られたことになる。

もう一つ興味深いのは音楽担当者。63年の日活版は池田正義と、これだけは例外で、49年と57年が服部良一。75年がその長男である服部克久、そして、88年は服部良一と克久が父子で担当をしているのだ。

その服部良一がこの曲を想いついたのは、大阪から京都に向かう電車の中で北摂の山並みを眺めていた時だという。急いで五線譜に記したかったが、買い出しで混み合っている車内ではそれが叶わず、手帳にハーモニカの数字譜を書き込んだという逸話は有名である。

しきりに手帳に数字を書き込む姿に、「周りの人の目には、闇屋が計算しているとしか映らなかったでしょうね」と服部自身も述懐しているそうだ。

-…つづく

 

 

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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