■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと

金井 和宏
(かない・かずひろ)

1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
Lis. master's voice


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第50回:遠くへ行きたい
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更新日2010/03/04


フリー・マーケットとスヌーカー
4月18日(日)、朝から快晴である。めずらしいことだ。

朝食の時、イングランドのビジネスマンという、50歳前後の宿の他のお客さんに話しかけられる。「どこをまわって来られたのか?」との問いかけには、"Edinburgh, Glasgow, Aberdeen, Wick and here"と答える。どうにか通じたようだ。

彼は静かに頷いた後、「これからどこに行くのか?」と聞いてきた。次に行く場所はObanである。私は、「オバーン!」と答えると、彼は怪訝そうな顔をして、「オバーン?」。そしてすぐに、"Oh, Not オバーン、but オーバン"と教えてくれた。わかりました。アクセントは最初にあるのですね。

朝食の後散歩に出たが、本当に気持ちの良い日だ。広場でいわゆるフリー・マーケットをやっている。規模的には、世田谷の大蔵公園のものと似たり寄ったりだが、こちらは皆ワゴン・カーに商品を積んできて、車の後ろ側を開け、それを店舗にも使っている。

額絵を売っているところもあったが、その中に若き日のエリザベス2世のものもあった。何と、その横にピンナップ風のヌードモデルの額絵。しかもピンナップ風の方が、2世のものより5p程高い価格設定である。

こちららしいユーモアセンスだと驚いた。日本では絶対に考えられない。こんなことをしたら、Right Fielderあたりが黙ってはいまい。何かめぼしいものはないか、お土産になるものはないかと歩いてまわったが、よい物は見つからなかった。女王陛下の額絵は少々嵩張るし。

昼食にサンドウィッチを買った。英国でサンドウィッチと言えば、私はすぐにミスター・ビーンのコメディを思い出すが、さすがに縁の地と言われるだけあって、種類が豊富にあり、味も良い。

私は、日本ではライ麦パンのサンドウィッチはあまり好まなかったが、こちらに来てからは(選択が限られていることもあるが)よく食べるようになった。

ネス川河畔のセント・アンドリューズ大聖堂の近くのベンチに腰掛け、川の流れを眺めながら、精神的に贅沢な、一人だけのランチタイムを持った。そして、将来のことをボンヤリ考えてみた。店を開くとしたらどんな店にしたらよいのだろうか。どんなお酒を置き、どんなお客さんを対象としたらよいのだろうか。

宿に帰り、テレビをつけスヌーカー(Snooker)を観る。これはポケット・ビリヤードの原型であるキュー・スポーツ。殊に英国では人気があり、BBC放送で長時間の中継を頻繁に行なっている。

テーブルには四隅と長辺の真ん中2箇所、合計6つのポケットがある。そこに15個の赤球(1点)と6個のカラーボール(黄2点、緑3点、茶4点、青5点、桃6点、黒7点)を、手球である白球を撞き、交互に打ち落としていく(これを「ポット」と呼ぶ)。

但し、赤球以外のカラーボールはポットされても、赤球がすべてポットされるまでは、すぐにまた初めの配置位置に戻される。ポットできなかった場合、プレイヤーは交代となる。

そして、赤球をすべてポットし終わった後、6つのカラーボールを得点の低い順にポットしていき、すべての球をポットしたらフレームは終了し、得点の多い方が、そのフレームを制する。最高の得点は、赤→黒→赤→黒・・・と撞いていくと、(1+7)×15+2+3+4+5+6+7=147となる。だいたい、こんなルール。

BBC SPORTSの時間に放映しているので、最初は、「この競技のどこがスポーツだろう」と内心軽く見ていたが、観ているうちに、そしてルールを覚えるうちに考えの誤りに気付いた。体力と知力がフルに使われる、実に面白いスポーツなのだ。

この日、最後に観たスコットランドのスティーヴン・ヘンドリーとイングランドの選手との19フレーム・マッチ。9対9まで来て、8時間近く続く壮絶な戦いを制したのは、私の応援していたヘンドリー選手。最後の黒球一つで勝敗が決した、とんでもなくエキサイティングなゲームだった。

観戦後、すっかりこのスポーツの虜になってしまった。すばらしかった。

その後、すぐに観たUNION RUGBYのまったく展開のない退屈なゲーム、途中で眠ってしまい、目が覚めた時には真夜中になっていた。

-…つづく

 

 

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