第788回:宣教師は儲かる仕事?
昔、スペインや南フランス、イタリア、ギリシャを旅した時、例えば、非常に貧しいアンダルシアの谷間の村の真ん中にゴチャゴチャと小さな家に囲まれるようにして超立派級の教会があるのに印象を受けました。まるでその地方の豪族がド貧乏な村人を押さえ付けるかのように睥睨(難しい漢字ですね)しているのです。マー、教会と権力とはいつも切り離せない、一体化していたのでしょうけど…。
そんな話をウチのダンナさんとしていたら、彼の方は、私の両親が属している教会で宣教師を務めていた叔父さんの家、カンサスシティーの郊外ですが、があまりに立派で、豪華にさえ見えたことに驚いたと言うのです。
彼は牧師、宣教師というのは、教会の裏にある古びた貧相な牧師館で簡素な暮らしをしているものだと思い込んでいたようなのです。ところが、その叔父さんの家にはプールもあり、私たちが未だに持っていない最新モデルの電化製品に溢れていて、とても宣教師、牧師には見えなかったと言うのです。
そんな意見を聞いたことがありませんでした。周囲の誰も、教会関係者は貧しくあれ、となんか思っていませんし、教会のメンバーたちも、叔父さんの生活が豪華過ぎるとは思っていません。彼の生活を維持しているのは、信徒からの寄付なのですが…。
アメリカ文化に批判的なダンナさん、「あんな生活をしていて、飢えたアフリカを救おうと、よく言えたもんだ…」とこぼしています。
信仰の自由を盾に、宗教団体には税金がかかりません。また、寄付する方も、その金額分は税金が免除されます。アメリカで教会が栄え、慈善事業が太るユエンです。
宗教団体とその宗教の創始者、中心人物が巨万の富を持つことになります。
個人資産の想定ですが、宣教師のアル・シャープトン(Al Sharpton)、ノエル・ジョーンズ(Noel Jones)、パウラ・ホワイト(Paula White)、ジョン・ハギー(John Hagee)は500万ドル(7億円相当かしら)を持っています。
ついでに言うのではありませんが、例によって教職にあった者のしつこさで調べたところ、7億円相当の資産を持つ宣教師なんかは可愛いもので、白人女性の宣教師ジョイス・マイヤー(Joyce Meyer)はプライベートジェット機を所有し、資産は10億円以上にのぼります。彼女はセントルイス近くにヘッドクォーター(本部)を持ち、文字通り全米を駆け回り、ありがた〜い説教をしています。
もう一人、女性の宣教師、ホアニータ・バイナン(Juanita Bynum)はもっぱらテレビで説教し、また女優で歌手ですから、知名度が高いのでしょう、彼女は14億円相当の資産を持っています。
宗教法人やそれを主宰する人気宣教師、牧師が、お金を稼ぐのは違法ではありません。でも、どこかに線を引き、宗教人としてのモラルが必要だと思うのですが…。
ジェシー・ジャクソン(Jesse Jackson)は14億円、自分のラジオ番組を持つジョン・F・マッカーサー(John Fullerton MacArthur)は21億円、バーミューダー生まれのシンディ・トリム女史も21億円、もう亡くなりましたが日本に来て、野球場でオハナシをしたビリー・グラハム(Billy Graham)は34億円の資産評価です。
20億円以上の宗教人が16人もいます。その中に140億円以上の資産を誇っているのが8人もいて、テキサス州、オースティンをベースにしているジョエル・オスティーン(Joel Osteen)は140億円、歯に衣着せぬ右翼パット・ロバートソン(Pat Robertson)も140億円、ナイジェリア出身のアジェデラ・オリツセジャフォーは168億円、これもまたナイジェリア出身のE.A.アデボイェは172億円、そして5万人が参加、着席できるまるでヤンキースタジアムのような超メガチャーチをブッ建てたデヴィッド・オイェデロは210億円、これに驚いてはいけません、カリフォルニアを基地にしているケネス・コープランド(Kenneth Copeland)は1,000億円以上なのです。
ほとんどがテレビに出る(アメリカでは宗教団体が独自のチャンネルを持っています)造語で“テレエヴァンゲリスト”(Televangelist;テレビの福音主義者)かメガチャーチの主催者です。こんな数字を見ると、彼らに豪族のような贅沢をさせるために誰がチマチマとした喜捨をしているのかとても不思議です。別にありがたい壺や仏壇を売っているわけではないのです。
このような巨万の富を抱えることが可能になったのは、テレビとメガチャーチのせいでしょう。私のお爺さん、お婆さんの時代、村の人は牧師さんへ、採りたての野菜、果物、牛乳などを持って行ったものです。牧師さん夫妻も裏庭で牛を飼い、畑を耕すのが当たり前でした。今では、小さな教会は統合され、近代的な大きな教会になり、冷暖房はもちろん、大きなスクリーン、プロジェクターを備えた音響設備の良いものに変わってきました。その延長線上にメガチャーチはあるのでしょう。
築地本願寺の偉いお坊さん、カトリックの司祭さんたち、一体どのくらいの収入があるのかしら。アメリカのテレビ宣教師などにははるか及びもつかないでしょうけど…。
義理のお姉さんのところに、お婆さんの命日のお参りに来たお坊さんが新車でやって来たのはとてもショックでした。なんとなくお布施をいただきに来る?お坊さんは、スクーターくらいが似つかわしいと思っていましたので…。
日本にメガお寺やテレビお経、説法などが流行りませんように…。
第789回:煙が目に染みる……
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