第387回:改良された北総鉄道区間 - 京成電鉄 成田空港線1 -
京成電鉄が成田空港線、愛称「成田スカイアクセス」を開業して1年が経過した。私の乗りつぶし地図ではまだ乗っていない扱いになっている。私は関東の鉄道を踏破したけれど、この路線の開業でタイトルを返上している。奪回しなくてはいけない。日帰りで行けるところだったけれど、なんとなく先延ばしにしていた。なぜかというと、非公式に乗ってしまったからである。
京成電鉄の日暮里駅
正面玄関(?)は小さい
実は、開業日の前に仕事で新型スカイライナーに試乗させていただいた。成田スカイアクセスの全区間を走破し、印旛日本医大から成田空港第2ターミナル駅までの間で、私鉄の最高速度の時速160kmも体験した。これで満足した。では乗ったことにしていいか、というと、それはなんとなく気が引けた。もっとも、フリーライターという仕事は、書く対象が好きでなければ続かないし、もともと公私の区別は曖昧である。
私の逡巡は「タダで乗った路線を記録していいか」という仁義ではなくて、「開業日の前の日付で乗車記録をつけていいか」であった。結局、初心に戻って「悩んだ路線は乗らなかった扱い」とした。
8月24日。ちょうど鹿島方面に取材の用事があるので、行きがけに乗ってしまおうと思った。青春18きっぷを持っているから、自宅から鹿島神宮までJRに乗れば倹約できる。しかし私は日暮里で降りて京成線に乗り換えた。
スカイライナーをあえて見送る
JRと京成電鉄は、上野駅から京成電鉄の始発の京成上野駅まで歩くより、日暮里駅で乗り換えたほうがラクだ。京成電鉄もそこは心得て、日暮里駅を第二の玄関として整備している。乗り換え改札口は堂々としているし、発車案内板も大きい。しかし私は乗り換えきっぷを持っていないから、JRの改札を出て、京成の改札口へ回った。こちらはこぢんまりとして勝手口のようであった。
発車案内板によると、次の列車はスカイライナーだった。これは良いタイミングだ。しかしまて……またスカイライナーに乗るとは芸がない。確かに快適だし速いけれど、まったくのやり直しは面白くない。スカイライナーはやめよう。在来列車でいこう。
京成日暮里駅の下りホームは、1本の線路の両側にホームがあって、スカイライナー専用と在来列車で使い分けている。向かい側のホームには、海外旅行へ向かう人々が並んでいる。大きなスーツケース、楽しみへ向かっていく明るい表情、カラフルな服。ハレの場であった。こちらのホームは普段着ぞろいである。私の服装もこちら側であった。
庶民派電車でいくのだ!
スカイライナーのあとにやってきた各駅停車に乗り、高砂で降りる。ホームの時刻表を見ると、成田スカイアクセスの次の列車は30分後のアクセス特急であった。印旛日本医大と成田空港間は、スカイライナーとアクセス特急しかない。スカイライナーはほぼ30分おき。アクセス特急はだいたい40分おきくらいであった。スカイライナー重視の路線とはいえ、30分待ちは悲しい。もっとも、通勤時間帯の終わりかけのせいか、途中の印旛日本医大までは4分おきであった。
スカイアクセスの分岐点、高砂駅
北総開発鉄道は成田スカイアクセスに編入され、スカイライナーの通過に対応するため改良工事が行われたという。東松戸・新鎌ヶ谷・小室が退避可能な構造になったというけれど、東松戸も新鎌ヶ谷も、もともとホームだけは完成していたから変わり映えしない。小室駅は線路を1本増やし、直線的な構造に改良された。ここはひと目で「変わったな」と思った。試乗の新スカイライナーで通過したけれど、あの時はあっという間に通過してしまった。
"北総開発鉄道"で行こう
それより私は線路の両側の空地が気になっていた。当初はここに通過専用の線路を敷くものだとばかり思っていた。京成も本心は複々線化だったかもしれない。しかしまだ空地のままで、印旛日本医大駅付近でやっと重機が何か作業をしていた。もともと成田新幹線用の土地だから、騒音や振動を見越して広めにとった土地かもしれない。しかしもったいない。並行道路でも作ればいいと思う。
印旛日本医大駅手前
ショッピングセンターに空地開発……
各駅停車を印旛日本医大駅で降りた。ここはかなり変わった。終端駅が中間駅になったから当然だ。ホームの先には詰所が建ってしまい、成田方向の見通しは悪くなっている。かつて行き止まりだった線路は先へ延ばされ、上下線の間に引き上げ線ができている。私が乗ってきた電車も引き上げ線に進み、折り返して上りホームに戻ってきた。
線路が成田へ伸びている
アクセス特急までの待ち時間は15分まで縮まっている。スカイライナーも速いけれど、アクセス特急だってかなり速い。駅前の変貌を見ようと思ったけれど、発車案内板に「通過」の文字が現れた。スカイライナーが先に来るようだ。私は上野寄りまで移動して、スカイライナーを迎えた。山本寛斎氏が手がけた白磁色と青の車体がビュンと通り過ぎた。
再びスカイライナーを見送る
-…つづく
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