■TukTuk Race~東南アジア気まま旅


藤河 信喜
(ふじかわ・のぶよし)



現住所:シカゴ(USA)
職業:分子生物学者/Ph.D、映像作家、旅人。
で、誰あんた?:医学部で働いたり、山岳民族と暮らしたりと、大志なく、ただ赴くままに生きている人。
Blog→「ユキノヒノシマウマ」





第1回~第50回まで

第51回:Vietnam (6)
第53回:Vietnam (7)
第53回:Vietnam (8)
第54回:Vietnam (9)
第55回:Vietnam (10)
第56回:Cambodia (1)
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第59回:Cambodia (4)
第60回:Cambodia (5)
第61回:Thailand (1)
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第68回:Thailand (8)


■更新予定日:毎週木曜日

第69回:Thailand (9)

更新日2007/10/11


チェンライからさらに東北へ向かったところにあるチェンコーンの町は、国境の町というイメージからは程遠い、なんてことのない小さくて静かな田舎町であった。国境線となっているメコン川越に対岸のラオスの小さな町が見渡せる宿に部屋を取り、まだ入国したことのないラオスの村々に思いを馳せた。ラオスというのはさすがに世界でも最貧国の一つに数えられるというだけあって、夕方になっても灯る明かりはまばらで、それらも夜も早い段階で一つ、また一つと消えていった。

このチェンコーンからラオスへは、簡単な出国手続きを済ませて小船に乗って川を渡るだけだという。特に面倒な手続きもいらないらしいのだが、ビザを宿の人に取ってもらって、それが発行されるまでの1日から2日の間、特にすることもなかったので、どう時間を潰そうかと考えていたところ、宿で出会った旅人に、「ここまで来たのだから、ぜひゴールデントライアングルへも行ってみたらいい」と勧められたことがきっかけで、ラオス入国はとりあえず少しだけ先回しにして、そのゴールデントライアングルを見学してみることにした。

ゴールデントライアングルといえば、あの黄金の三角地帯の名で知られる、世界的にも有名な麻薬の一大生産地であり、メコン川の三角州を中心としてタイ、ラオス、ビルマの国境が入り乱れる地域を中心に麻薬王クンサーが暗躍した土地と知られた場所である。もちろん今現在は、この一帯のマフィア勢力も幹線道路沿いでは一掃されたことになっており、悪名高きゴールデントライアングルを一目見ようと、サップロークなどには世界中からやって来る観光客相手の土産物屋まであるような場所ではあるが、それでもこの場所へやって来る途中の山岳部では、我々が乗り継いできた小型バンの積荷を調べるべく、マシンガンで武装した兵士の検問を受けた。

まあゴールデントライアングルとはいっても、ただこの地を通過するだけの旅人に垣間見える部分は限られており、これ見よがしに川の三角州を見渡せる道路脇に「ゴールデントライアングル」と掲げられた看板が立てかけられている前で記念写真を撮ってみたりするのが関の山ではあった。ただ今でも麻薬が完全に排除されたのではないということは、日帰りの山岳民族訪問ツアーに参加したときに、マリファナはもちろんアヘンも吸ってみないかと声をかけられたことからもわかった。

タイは一応麻薬には厳しい国のはずなのだが、この辺りに来ると治外法権とまではいかずとも、かなりゆるい規制なのだろうか。我々のような観光客が訪れる山岳民族の村にも合法という名目はついているようだが、アヘンの原料になる大きなケシの花畑が続いていた。

ゴールデントライアングルの山々をローカルの小型バンを乗り継いで、途中タイ族初の王朝として知られるランナー王朝が拠点を築いていたチェンセーンを経由し、ビルマと国境を接するタイ北端の町メイサイまで辿り着いた。この町は同じ国境の町とはいっても、小国ラオスと国境を接するチェンコーンとは規模が違い、さすがにそれなりに国境の町と呼ぶに相応しい雰囲気と規模を持っていた。

ビルマとタイは別に仲が悪いというわけでもないようなのだが、やはり国境での小競り合いというものは世界中何処でもつきもののようで、この町にも数年前に一度ビルマ側からロケット弾が打ち込まれたことがあるらしい。

とにかく我々が滞在している限りでは、そんな不穏な雰囲気は感じることもない穏やかな町であったのだが、国境線になっている川沿いを夕方散歩していた時に、国境警備兵に見つかったビルマ人が頭に拳銃を押し付けられながら、ビルマへ戻れと脅されているのを見かけた時、やはりここは東南アジアの国境なのだと思い出さされた。

東南アジアらしいという意味では、もちろんあの独特のいい加減なところももちろんあって、一方で拳銃を頭に押し付けられているかと思えば、そのすぐ近くの川べりでは、頭に荷物を満載したあたかも日稼ぎの密入国業者が5人ほどのグループで、何事もないような顔をして川を泳いで渡っていた。

…つづく

 

 

第70回:Burma (1)