第68回:Thailand (8)
更新日2007/10/04
蟻に全身を噛まれ、その痛みと痒さにうなされながらチェンマイの安宿で眠れない3日間を過ごし、とにかくまだ完治には程遠いもののとりあえず次の町へと移動することにした。
バンコクを発つ段階でチェンマイまでは向かおうという大まかな旅のイメージはしてあったのだが、ここから先に何処へ向かおうかというのは特に決めていなかった。ただ漠然と「この次に向かうとしたらラオスかな」というのは、このチェンマイでの眠れない3日間でエリカと話しながらイメージできつつあった。
このチェンマイ辺りに長期滞在している旅人たちの中には、ラオスを経由している人たちもそれなりにいて、彼らが口を揃えて言うには、「ラオスって何もないところだよ。でもその何もないのが良いんだよね」ということであった。その「何もないのが良い」という「良い」のが何なのかというが、どうも気になってしょうがなかったからというわけである。
チェンマイからラオスへ向かうとすれば、ここから東北の方角へ向かったチェンコーンという小さな町がどうやら便利らしいというのを聞きつけ、チェンライを経由してそのチェンコーンへ向かうことにした。
チェンマイから北東にあるタートーンという小さな町へ向かう途中、平和でのどかな田園地帯を走るバスの中で偶然乗り合わせた、この地で現地妻と子供を持ってすでに20年も暮らしているという日本人もしくは元日本人の男性との会話を楽しみながら、こういう土地で骨を埋める日本生まれの人間の生活とはどんなものだろうと想像してみたりした。
タートーンは特にこれといって見所もない小さな町だったが、ビルマ国境にあるこの町を流れているメーコック川を走るロングテールボートに乗って、この川の下流にあるチェンライへ行くことができた。もちろんチェンマイからチェンライまでバスに乗り継いで行ってもよかったのだが、別に急いでいる旅というわけでもないので、のんびりと進むロングテールボートに乗って移動するのも悪くないかもしれないなと考えたからだ。
ロングテールボートは、7人乗りほどの細長い小さな木造ボートだったが、これにイギリス人のカップルとフランス人一人に我々というメンバーで、川を下って行った。乗り込んだ顔ぶれを見る限り、こんな暢気な乗り物は今時バックパッカーくらいしか乗らないものなのかもしれない。何しろバスを乗り継いだほうが安いし、早いのだから…。
それを実感させてくれたのは、このボートがチェンライに向かう途中に立ち寄った象飼いのカレン族が住む村で、いかにも観光客向けの象乗りやお土産売りの露天が数件ではあるが揃っていたからである。
チェンライは、バンコクにあるエメラルド仏のオリジナルはここで発見されたことで有名なタイでは由緒ある寺として有名なワット・プラケオや、ありがたいというよりはコミカルにさえ映るぽっちゃり仏がド~ンと居座るワット・ムン・ムアンなど、小さな町にしては以外に見所は多い。この町の市場も活気があり、なかなかおいしい食べ物が揃っているので、当初は通り過ぎるだけを予想していたのに、気がつけば結局3泊もしてしまった。
-…つづく
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