■TukTuk Race~東南アジア気まま旅


藤河 信喜
(ふじかわ・のぶよし)



現住所:シカゴ(USA)
職業:分子生物学者/Ph.D、映像作家、旅人。
で、誰あんた?:医学部で働いたり、山岳民族と暮らしたりと、大志なく、ただ赴くままに生きている人。
Blog→「ユキノヒノシマウマ」





第1回~第50回まで

第51回:Vietnam (6)
第53回:Vietnam (7)
第53回:Vietnam (8)
第54回:Vietnam (9)
第55回:Vietnam (10)
第56回:Cambodia (1)
第57回:Cambodia (2)
第58回:Cambodia (3)
第59回:Cambodia (4)
第60回:Cambodia (5)
第61回:Thailand (1)


■更新予定日:毎週木曜日

第62回:Thailand (2)

更新日2007/08/23


レイチェルと久しぶりの楽しい旅話のアップデートをし、その翌日の朝にバンコクを発ってアユタヤへ向かった。こういう時に予約なしでバックパックに身一つという旅のスタイルの気軽さを感じる。昨日まで何をするともなく、ただだらだらと時間を潰していたバンコクを発ち、後のことなどあれこれ計画せずに、「それじゃあ隣の町へでも行ってみるか」という具合なのだから。

バンコク駅から列車に乗って数時間のアユタヤへの旅は、バンコクでの怠惰な生活から我々を旅人のペースに呼び戻してくれるものであった。地元民と隣同士に狭いコンパートメントに座りあって、窓の外を流れていく緑豊かなタイの田園風景を眺めたり、駅に停まるたびに車内に乗り込んでくる地元の弁当売りのおばさんのおいしい料理を食べたりという時間は、「これだから旅はやめられないんだよなあ」という思いを実感させてくれるのに十分であったからだ。バックパック一つで旅を続ける良さは、計画に縛られることない身軽さという良さもあるが、こういう地元民との距離感みたいなものもその大きな魅力だ。

アユタヤの駅前で待ち受けていた宿の呼び込みのトゥクトゥクに連れられて行った部屋に荷を降ろすと、自転車を借りてエリカと一緒にこの小さなタイの古都を走ってみることにした。川に取り囲まれるような形で存在するこの町は、バンコクからほんの数時間のところにありながらそこに漂う空気はまったく別なものであった。

タイというところは、バンコクという大都会を除けば、ある意味先進国の人々でもなに不自由なく生活できる生活基盤がありながら、それでいてのんびりした東南アジアの良さも残っているという絶妙なバランスが旅人を虜にするのだろう。実際にこの町もその例に漏れずゆったりと時間が流れている場所で、自転車に跨りプラプラと走り回るのは本当に心地良かった。

アユタヤといえば日本人にとって忘れてはならないのが、山田長政をはじめとするアユタヤ日本人町で活躍した人々である。この山田長政については、タイ独特のマイペンライな記録のせいで実在した人物かどうかすらも疑わしいという説すらあるそうなのだが、とにもかくにもこのかつてタイの首都であったアユタヤには相当数の日本人が暮らし、経済的にも政治的にもかなりの実力を占めていたということは事実のようである。

もちろん現在ではその名残を見ることはほとんどできないが、そういうロマンのある話を思い出しながら風に揺られるのは、こういう時間的自由を所有する旅人の特権でもある。

アユタヤを代表するアイコンの、ビルマ軍によって町が占領された時に首を切り落とされた首なし仏像や、生命力溢れる南国の木の幹に飲み込まれるように半ば埋まっている切り落とされた石仏の頭などを見学しながら、この古都での時間を過ごした。

バンコクから近いということや、歴史あるタイの古都ということもあって、この町を訪れる日本人は多いのか、泊まっている宿でも町中でも時々日本人と会話を交わしたのだが、そんな中の一人に今時珍しい血気盛んな青年の一人と出会った。

それは町の市場にある小さな食堂でエリカと夕食をとっていた時のことなのだが、「はじめまして」と声をかけられて話しを切り出してきたこの青年は、のどかな田舎町の食堂ではちょっと浮いてしまうほどの口唾で、ネパールのマオイストについて延々と話してくれた。

私自身は、残念ながらマオイストに対してそれほど思い入れがあるというわけではなかったので適当に聞き流していたのだが、ネパールの現状について私があまり興味がないことを知ると、だから日本は駄目になったのだ、「ち・な・みに私は○○大学を休学中で・・・」と話してきた段階で、思わず、「革命軍にでも入ったらどうですか?」と切り返しそうになってしまった。

○○大学を休学中なのは別によいのだが、彼はぐうたらな私たちでもDr.とMBAだとは知る由もなかっただろう。旅や人にも色んなスタイルがあるのだから、まずはそういう肩書きを捨ててから革命というものは語るべきものだと思うのだが…。

…つづく

 

 

第63回:Thailand (3)