更新日2007/09/06

列車に乗って、タイの中ではアユタヤと並ぶ遺跡の町といわれるスコタイへやって来た。アユタヤがビルマの軍隊に攻め込まれて徹底的に破壊尽くされていることを思えば、このスコタイにはまだまだ原型を留めた遺跡が多く残っていた。しかしそうはいっても、アユタヤがバンコクから数時間なのに比べて、このスコタイは、バンコクからもチェンマイからも多少距離があるためか、観光客の数はタイを代表する遺跡の町としては意外に少なかった。

スコタイは遺跡が残る古都ということや、他のタイの観光地に比べると観光客が少なく、落ち着いた雰囲気を持っているということもあって、この町で長期滞在する日本人も少なくないようだ。我々が部屋をとった宿も半ば日本人宿のようになっており、ここで数週間過ごしているという人にも出会ったが、彼女の話では、「ほとんど住み着いているような人も多いよ」とのことであった。スコタイの町は辺鄙な場所にあるにしてはなかなかの規模を持っており、観光地としてではなく、生活の町としては快適であるというのは確かそうだ。

町の中心部から、観光の中心となる遺跡群までは約10kmほど離れており、そこまではトゥクトゥクやタクシーなどを利用していくか、もしくはレンタルバイクや自転車などで向かうしかなかった。我々は遺跡群がそれなりに広範囲であるということを小耳に挟んでいたことや、自分の足を持って町の周辺を探索してみたいということもあって、宿の近くのバイク屋でレンタルバイクを借りることにした。

タイの道路事情というのは、ベトナムほどではないにしろそれなりに無秩序で、信号無視はもちろんのこと、運転ルールという概念すらないようなドライブをするドライバーたちが路上には溢れている。もちろん自分だってタイの運転免許すらない状態でバイクを貸りてきたのだから、タイ式の交通ルールなど知る由もない。そういうわけだから、これまでにも交通事故の現場は数多く目にしてきたし、このドライブの間にも道路脇の水田に見事にひっくり返った車の事故を目撃した。

タイではまったくの若葉マークライダーだったが、125ccの小さなホンダのカブに二人乗りして、ちんたらちんたらとスコタイの遺跡群へ向かった。

アユタヤの遺跡群に比べると、破壊されていないということもあって保存状態が良いのはもちろんだが、そのデザインや建築技術も時代的にいうと古いこちらの方がアユタヤよりも遥かに素晴らしいものであった。

こういうものは時代が進むとともに却って粗悪な造りになっていっているのだが、タイに限らず東南アジアでは共通して見られる特徴でもある気がする。タイの遺跡の中では、もう圧倒的にこのスコタイの遺跡が見ごたえのある物だといえるだろう。

－…つづく

第65回：Ｔｈａｉｌａｎｄ （５）