■TukTuk Race~東南アジア気まま旅


藤河 信喜
(ふじかわ・のぶよし)



現住所:シカゴ(USA)
職業:分子生物学者/Ph.D、映像作家、旅人。
で、誰あんた?:医学部で働いたり、山岳民族と暮らしたりと、大志なく、ただ赴くままに生きている人。
Blog→「ユキノヒノシマウマ」





第1回~第50回まで

第51回:Vietnam (6)
第53回:Vietnam (7)
第53回:Vietnam (8)
第54回:Vietnam (9)
第55回:Vietnam (10)
第56回:Cambodia (1)
第57回:Cambodia (2)
第58回:Cambodia (3)
第59回:Cambodia (4)


■更新予定日:毎週木曜日

第60回:Cambodia (5)

更新日2007/06/07

カンボジアの暑さは尋常ではなかったが、特にこのシェムリアップを訪れていた時期の酷暑ぶりはかなりのもので、観光名所を回りながら直射日光を浴びていると、それだけでも思考が止まり、目の前がぼ~っとしてくるほどであった。とにかくこれだけ暑さが厳しいと、熱帯の太陽の下を一日中歩いて観光を続けているだけに、水分の補給というのは日射病を避けるためにも絶対に守らなければならないルールであった。

ただしカンボジアの水状況というのがこれまた決して良好とは言えず、現地の水を飲むのがためらわれるのはもちろんのこと、売店で販売しているボトル入りの飲料水ですらも、欧米の有名ブランドではない、我々が購入する白い半透明のプラ容器に入った飲料水の場合には、「ピューリファイド・ウォーター」と明記してあるのにもかかわらず、なぜか薄茶色をした水であった。

まあ、1本がUS15セントするかしないかのような安い水であるから、それでもしょうがないのかもしれないが、とにかくこの国ではまだまだいろんな意味で整備がなされていないのが、怪しいところでもあるし、面白いところでもあった。

最終日の夕刻時に、アンコールに日が沈む姿を一望にできるプノンバケンと呼ばれる小高い丘の上に登った。平坦なこの土地には珍しく、丘の上からアンコールの遺跡やジャングルの広がる様を一望にできる夕日の名所には、その日も狭い丘の上に約100名ほどの観光客が集まっていたのだが、その中にどうも見覚えのある顔をちらりと見かけた。

まさかとは思ったが、近寄って確認してみると、やはりその女性は我々の友人で、自分とエリカが日本で暮らしていたころにすぐ近所に暮らしていたカナダ人女性のサラであった。彼女からは我々がシカゴを出発する半年ほど前に日本を経ってバンコクへ向かい、そこから東南アジアをバックパック旅行するというメールをもらっていた。

その彼女がどんな偶然か、今このカンボジアの小さな丘の上で、我々と一緒に夕日を眺めているのである。世界は広いように見えて、旅人が辿るルートというのは、実はそれなりに重なるものだというのは分かっていたが、待ち合わせもなしにいざこんなところでばったり出会ってしまうと、それはそれでやっぱりびっくりしてしまうものだ。

その夜は偶然の出会いに昔話をして盛り上がり、おかげですっかり飲みすぎて二日酔い気味の頭で、またまたカンボジアらしい地獄のような陸路の旅を散々味わうことになった。

シェムリアップでのアンコール遺跡群観光を終えて、タイのバンコクを目指すことになったのだが、なにしろこのシェムリアップからタイ国境までは、壊れかけのトラックの荷台に乗り込んで、延々と半日間に渡って悪路を進まなければならなかったのだから。

とにかくシートはもちろん、屋根もないトラックの荷台に揺られての旅立ったので、雨が降らなかっただけでも幸運だったと思わなければならないのかもしれないが、乾季で乾ききった未舗装の道路はもうもうと砂塵を巻き上げ続け、荷台に乗り込んでいる乗客の顔も荷物もみるみる埃まみれになってくすんだ白に変わっていった。

しかもこのトラックの荷台の揺れは相当なもので、乗って1時間後にはシェイクされ続ける脳が悲鳴を上げて、軽い脳震盪状態に陥るのか、乗客の皆の顔もどこかしら呆然自失としたものになっていた。

乗り込むときから怪しいポンコツトラックというのは見てとれたが、案の定、走り出して3時間ほどもすると軽いエンジントラブルを起こし、灼熱の路上で1時間ほども待ちぼうけを喰らった後、なんとか午後遅くに、トラックはタイとの国境に到着した。

-…つづく

 

 

第61回: Thailand (1)