第40回:黒い金曜日、サイバーな月曜日
更新日2007/12/13
サンクス・ギビングの連休が終わると、アメリカ人はクリスマスモードに入ります。サンクス・ギビングは、アメリカにたどり着いたヨーロッパからの移民が、インディアンの助けを受けて一年後にどうにか初めての収穫を得、そのための感謝祭を催したのが由来になっています。その由来について、最近、史実とはかけ離れたものだという調査が出たようですが、史実かどうかとは無関係にサンクス・ギビングは、クリスマスに次ぐ大きな休日になっています。
サンクス・ギビングは、七面鳥にとって厄日です。この日だけで、億単位(私の想像ですが)の七面鳥が羽をむしられ、丸焼きにされます。この日の料理は、七面鳥の丸焼きにかぼちゃのパイと相場が決まっています。体重を気にする人にとって、サンクス・ギビングからクリスマスまで(お正月までと延長する人もいますが)は、もっとも難しい山場になります。
カロリーの高い七面鳥をお腹一杯食べた後、翌日も翌々日も残った七面鳥の肉をスライスしたサンドイッチ、七面鳥の肉を細かく切っりサラダにかけた七面鳥サラダと、七面鳥責めに会い、その上、かぼちゃのパイも片付けなければなりません。
サンクス・ギビングは、11月第3週の木曜日と決まっています。その翌日の金曜日、誰が名付けたのか「黒い金曜日」と呼ばれています。黒い金曜日という言葉がマスコミに出てきたとき、私はサンクス・ギビングで食べすぎ、飲みすぎたので、二日酔いと、はちきれそうな胃袋の苦しい日のことかと思っていました。しかしそうではありませんでした。この金曜日が、アメリカ最大のショッピングデイで、お店が大いに黒字になるところから来たようなのです。ダンナさんの懐がカラッポになり、顔が真っ青になるから青い金曜日と名づけても良かったのですが…。
黒い金曜日はここ十数年恒例となる、気違いじみた買い物の日です。大きなお店やスーパーは朝の4時に開店します。限定のバーゲン商品を求めて夜中の12時にはもう長い列ができ、寒い夜空の下で何時間も開店を待ち、ドアが開くと同時に店内に駆け込む姿は喜劇的というより、なにか浅ましさを感じさせます。
この日だけで1億4,700万人のアメリカ人がショッピングし、一人平均347.44ドルの買い物をしたと、小売業者協会(National
Retail federation)が発表しました。これは不景気を反映し、去年より3.5パーセント低かったそうです。しかし、これからクリスマス・シーズンへかけて、474ビリヨンドル(474billion、余りに多すぎて計算がスンナリできませんが50兆円に相当するのかしら)を消費する見込みなのだそうです。
大きなチェーン店ばかりで買い物をさせるわけにはいかないと、インターネットのオンラインショッピングも攻勢をかけてきました。こちらの方は「サイバーな月曜日」と名づけ、サンクス・ギビング明けの月曜日にすべて商品を25パーセント引き、しかも送料込みと謳っています。
オンラインで買い物をすると消費税がかからない、高いガソリンを使ってショッピングモールに出かけなくても自宅から注文できる、寒い夜空で待つ必要がない、クレジットカードの秘密保持システムは通常のお店よりはるかに高いなど、良いことずくめのように宣伝しています。私のところに入ってくるインターネット・ショッピングのジャンクメールもグンと増えました。
こんな消費ムードに抵抗し、"ノー・ショッピング教"という宗教団体が現れました。神様はクリスマスだからと言って無駄なプレゼントを買いあさることを望んではいないというのです。確かに彼らの言うことに一理どころか3理5理くらいの分がありますが、ニューヨークの目抜き通りをプラカードを掲げて、"買うな"と叫んでも、なにかとても空しく見えます。
さて、私自身のことです。気恥ずかしくて書くのがためらわれますが、何人かでも真似てくれればと思い、恥を覚悟で打ち明けることにします。私たちの兄弟、家族では、もう10年以上、クリスマスプレゼントの交換を止め、その分のお金でアメリカの貧しい人、クリスマスプレゼントなどに縁のない家族にプレゼントを贈ることにしたのです。
社会福祉団体が仲介してくれる家族にプレゼントを買い、その福祉団体を通じてそれを送るのです。受け取った家族は誰が贈ってくれたか知ることができませんので、サンタクロースからだと思っているのかもしれませんね。福祉団体はそんな家の家族構成、性別、何を欲しがっているかなどのリストを渡してくれ、できるだけその家族の欲しがっているものを買ってあげるわけです。
ところがです、ホントにところが、ここ数年そんな家族の希望の品リストにブランド品、とても高価なコンピューターゲーム、私たちも持ったことのない贅沢品が多くなってきたのです。ウチのダンナさんは、「冗談じゃない、こいつらは飢えてなんかいない、ただ他の人が持っているから自分も欲しいだけだ」と憤り、3年前からダンナさんの主張どおり、アメリカ人へのプレゼントは打ち切り、アフリカで本当に飢えた人へ、このところ、ユネスコを通じてお金を贈ることに軌道修正しました。
とても小さなことですが、アメリカでの消費狂騒に加担するよりは良い使い方ではないかと思っています。
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