■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)




中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。





■更新予定日:毎週木曜日

第1回:男日照り、女日照り

更新日2007/03/08


昨年9月に連載終了した『グレートプレーンズのそよ風 ~アメリカ中西部今昔物語』の著者、グレース・ジョイさんが読者のリクエストに応えて「のらり」再登場です。今回はアメリカで話題になっているホットな話題や日本との文化の違いなど、コロラドから毎週リポートしてくれます。お楽しみに!---「のらり」編集部

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ニューヨークタイムズの調査記事が発端になって、結婚しない女性のことが話題を集めています。

成人の女性で離婚暦のあるなしを問わずに、今現在一人で暮らしてる女性が結婚している女性を上回ったというのです。どのくらい上回ったかは最後の方に小さな字で51パーセントとありましたから、ほんの1パーセントだけですが、半数以上であることは確かなようです。

一人で充分暮らしていけるのだからオトコなんて必要ないわ、と言っているのか、血眼になってオトコ漁りをしても適当な相手が見つからないのか、それともオトコの方が振り向いてくれないのか、いずれにしても成人女性の半分以上が結婚、同棲せずに独身を通しているのは忌忌しき(ユユシキ)社会現象と言ってよいでしょう。

ちなみに、15歳以上の女性はアメリカに1億1,700万人いますが、その半分というのですから、およそ6,000万人という大変な数の独り者の女性がいることになります。

社会学者に指摘されるまでもなく、アメリカでも女性はやっと、プロフェッショナルキャリアの道が大きく開かれてきて、それに伴い収入も増え、自活できるようになったことが原因として挙げられます。

もうオトコなしで一人で食べていけるから、いまさらオトコなんていらないわ、というわけです。そしてインタビューに応えるような女性は決まってジャーナリズムに話を合わせるように成功したキャリアウーマンばかりで、仕事が生きがい、もうオトコなんてコリゴリと異口同音に言うのです。

中国で"子供は一人しか作らないキャンペーン"が大々的に、もしくは半強制的に政府が"ご指導"した結果、家長制を重んじる伝統から男の子ばかりが増えてしまい、現在結婚適齢期の男女のバランスが大きく崩れてしまったそうですが、アメリカの場合はほぼ男女が同じ数だけいるはずですから、結婚しない女性が増えたら、当然結婚できない男性も同じ数だけいることになります。

皆が皆ホモになったわけではなく、同性愛は数字の上ではとても少ないので、独身の男性が50パーセント以上いることはニュースにならず、女性の場合だけが少しゴシップ的なニューズになるのは考えてみれば奇妙なことです。結婚、同棲は相手あってのことのですから。

女性の地位が上ったから、という理論も妙なこじつけのように響きます。独り者の女性、大多数はキャリアウーマンではないはずです。インタビューに答える女性や社会学者は、マスコミ受けのする答え方をしているか、そういった意見だけをマスコミがふるいにかけて流しているのでしょう。

逆にそのような女性はほんの一握りで、子沢山の貧しい黒人の家庭で男親が家を出たまま行方が知れず、母親一人で生活を支えている例はたくさんあるはずです。一つはっきり言えることは、女性の方が長生きしているので(アメリカでは7、8年男性より長生きし、平均寿命は80.1歳です)、夫の死後一人で晩年を暮らす未亡人が増えるのは当然のことです。

結婚できない、しない、独り者の男女をプロットした地域別"男日照り、女日照り全米地図"が、『ナショナル・ジオグラフィック』に載りました。これを見るとかなり明確に地域差があるのに驚かされます。ミシシッピイ川の東、特に東部の大都会とシカゴ、マイアミに独身女性が多く、ミシシッピー川の西側、とりわけカルフォルニア、南西部のラスベガスやフェニックスは男の独り者が多いのです。

これだけはっきりと男日照り地区と女日照り地区が現れてくると、日本から結婚相手お探しツアーを組んでも結構成り立つのではないかしら。独身男性は東部に、独身女性は西部にそれぞれ結婚相手を探しに来れば、相手を見つける確率がかなり高くなると思いますがどうでしょうか。加えて日本の伝統"お見合い"をアメリカに持ち込めば成功率がさらに高くなると思います。

もっとも、決して確率どおりに行かないのが男女の仲ですが…。

 

 

第2回:アメリカデブ事情