第39回:いまさらミシュラン…
更新日2007/12/06
ミシュランのガイドブックで、東京が世界で最高水準のレストランの街と評価されました。
3星がなんと8軒もあり、この本で紹介されたレストランがなんと150軒もあるというのですから、東京はフランス人も舌を巻く(舌で唇を舐めると言ったほうがいいのかな)美食の街です。嬉しいのはこのリストの60%が和食レストランなことです。日本食のおいしさが、自分の舌を絶対的なものと信じ切っている頭の固い(食べ物に関しては)フランス人を唸らせたのです。このガイドブックに載ったレストランの方々、まずはおめでとうございます。
しかし、と、ここから私の偏見、私見が始まりますが、ミシュランのガイドブックの編集長 ジャン・リュック・ナレ氏は、「食材の質や(料理する)技法の高さに驚いた。東京は世界に冠たる美食の街だ」と言っていますが、そんなこと何をいまさら、わざわざミシュランに言ってもらわなくても…少し世界を食べ歩いている日本人なら、そして日本に2、3ヵ月住んだことのある外人なら、誰でも知っていることです。
今回、星を貰ったレストランはさぞ超満員、予約が殺到していることでしょう。そうなると自然の摂理で、レストラン側が慇懃横柄になり、品質が下がるのは歴史が証明するところです。2時間と時間を限られたり、レストラン自慢のお仕着せフルコースメニューが幅を利かせてきたり、コック、ウエイターや経営者に驕りが見えてきたら、そのレストランはすでに赤信号が灯っていると知るべきでしょう。ミシュランの星を求めて一時的に殺到するお客さんは、長い目で見るとレストランにとって害をなしていると極論しても良いでしょう。
レストランは趣味ではなく、あくまでビジネスです。開高健のインタビューに答え、高名なコックさんが言っていましたが、「とことん、こだわると商売が成り立たたなくなる」という種類の仕事なのです。妥協があり、日によって出来、不出来があるのが、レストラン業の宿命なのです。
それに今回のミシュランは、東京23区だけに限っていることも納得できません。食は関西にあり…といわれる大阪、神戸界隈は忘れられています。格式ばらずおいしいものを手頃な価格で食べることができるのが関西の真骨頂です。食の都大阪を省いて日本の食文化は語れません。加えて言うなら、日本中の人がこぞって褒めるおいしいもが一杯の北海道はどうなるのでしょう。
また古い話になりますが、安政年間にも江戸のレストランとは当時言わなかったでしょうね、料理屋さんのランキングが、お相撲の番付けのように出版されていたそうです。しかし、とても今回のミシュランガイドブック程売れはしなかったでしょうね。
予想したとおり、ミシュランのガイドブックは飛ぶように売れ、品切れが相次ぎ、不況の出版界にあって、垂涎の的になる大ヒットだと言われています。ハリー・ポッター以来の大ベストセラーで、ミリオンセラーになる勢いだそうです。これだけで、ミシュランはたとえタイヤが売れなくても、充分以上に潤うことでしょう。
無形のモノにイメージ的な付加価値をつけて売るのが、(たとえば香水、コニャック、ファッションブランドなど)上手なフランス人にお人好しの日本人が踊らされているように見えるのは私だけかしら。今回のミシュランガイドブックの星騒動でも結局一番儲けているのは本の出版社、ミシュランなのですが。
フランス人が食べ物に自身を持ち、頑固なように、日本人ももっと自分の舌を信じて良いのではないでしょうか。ミシュランにお世辞を言われなくても、日本には昔からおいしいものがいっぱいあるのですから。逆に早く日本人がパリはもちろんのこと、世界中のレストランの権威ある格付けし、日本人の口あったレストランを網羅してほしいものです。もっともそんな本はフランスで全く売れないでしょうけど。
もう一つ、私クラスの舌とお財布を持っている人のため、1000円で食べられるランチタイムスペシャル、3000円でおつりが来るディナーを出すレストラン、回転すし屋さんなどのランキングをお箸の本数で表すガイドブックをブリジストンタイヤあたりが出版してくれないものかしら。
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