第13回:春とホームレス その2
更新日2007/05/31
無力な者、抵抗できない者をなぶり殺しにするほど陰惨なことはありません。
先週、オーランドでのボランティア逮捕事件を調べていたら、ホームレスをまるで鬼退治のように若者がスポーツ感覚で殺したり、瀕死の重傷を負わせる事件が多いことを発見しました。
日本に住んでいたとき、確か横浜の駅かガード下に住んでいたホームレスが若者に殺され、スキャンダラスに大きく報道されていたのを覚えています。それだけ珍しい残虐な事件だったのでしょう。
ところがアメリカでは2006年1年間に142件ホームレスが襲撃され、そのうち20人もが命を落としています。2005年から65%も増えています。恐ろしいのは、そんなことがニュースにさえならないことです。ホームレスの一人や二人、20人位消えてもらっても誰も困らないというわけです。私も今回ホームレス関係?を調べて初めて知ったので、あまり偉そうなことは言えませんが。
ホームレス・アタックが圧倒的に多いのはフロリダ州です。昨年、48件も報告されています。気候が良いのでホームレスにとって住みやすいのでしょう、フロリダ州の人口は1,800万人ですが、6万人のホームレスが居ると言われていますし、カルフォルニア州では人口が3,600万人に対し17万人のホームレスが居ます。
日本はどうなっているのか調べたところ、1万8,564人と日本的に馬鹿に詳しい数字がでてきました。どうやってこんな端数までの正確な数値を出すことができるのか不思議な気もしますが、人口との比較では、アメリカには日本の5、6倍のホームレスがいることになります。
ホームレスを襲撃をする若者の年齢ですが、88%は25歳以下、68%は13歳から19歳の間のティーンエイジャーが陰湿な暴力を振るっているのです。
テキサス州のコルプス・クリスティ市で起きたホームレス虐殺事件では、自分たちがどのようにホームレスを殺したか、自分でビデオテープに録画し、どこにどのような傷を負わせたかを克明に記録したりしているのです。犯人は23歳、16歳、15歳の3人の少年でした。
フロリダ州の自動車レースで有名なデイトナビーチで二人の10歳になる坊やがコンクリートブロックでホームレスの顔を潰しました。
なぜこんなことになってしまったのでしょうか。モノを盗むためでなく、ただ抵抗できない者をいじめるために暴力を振っているのです。一つの考え方は、ホームレスが新しいマイノリティ的存在で、アメリカが伝統的にいじめ、暴力を存分に振るってきた対象の黒人の役をホームレスが被っているというのです。
アメリカの南部ではではつい最近まで、今日は暇だから、一杯飲む景気付けに黒ン坊をやっつけてこようかと、黒人をリンチにかけた事件がたくさんありました。それができなくなり、代償として無防備なホームレスが的になったというのです。
このように社会学者はいつも一見説得力がありそうな見解を示してくれるものです。ですが、10歳の子供が持つねじれた暴力性は、そのような歴史的背景からきているとは思えません。
日本で学校でのイジメが問題になっていますが、アメリカでもイジメ(英語でBullyと言います)は大問題です。アメリカでのイジメは、暴力の伝統に則って激しいものです。イジメというより暴力犯罪に近いと言ってよいでしょう。一対一の喧嘩ではなく(もっともイジメに加わるような人に一対一で対決する勇気はないでしょうけど)、集団で無抵抗な生徒をナブルのです。そこにすでにホームレスを攻撃する温床があると思います。
ホームレス自身が暴力的犯罪を犯すことはほとんど皆無に近く、どちらかといえば無気力、無害な社会不適応者です。オーランド市はディズニィーランドで急激に大きくなりましたが、ホームレスを追い出すことが市のイメージを高めると、間違った条例を履行している間に、全米でもトップクラスの犯罪都市に成長し、殺人は年に126%と毎年倍以上の急成長率を誇る町になってしまいました。
第14回:不自由の国アメリカ