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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第389回:女性優位の日本

更新日2014/11/20



約10ヵ月近く日本で過ごしました。早周りですが、JRの外国人専用のジャパンレールパスで日本一周もしましたし、何泊かのバスツアーやドライブにも出かけました。温泉は数知れず入りましたし、柄にもなくチョット豪華にクルーズシップにも乗りました。日本食も堪能しました。

それにしても、どこに行っても女性軍が圧倒的で、男性がどこかに消えてしまったのではないかと思うほど少ないことに気がつきました。私たちが退職者の特権で、ウィークデイの昼間動くせいもあるでしょうけど、どこに行っても女性ばかりなのです。それは唖然とするほどです。

前回、日本の女性の地位の低さについて書ましたが、日本女性が大いに消費することで経済に寄与しているのでしょう。おそらく、ご主人が働いている間、子育てを終えた女性が大いに羽を伸ばしているのでしょうか、日本の男性は世界に稀にみる、限りなく優しい人種なのかもしれませんね。

レストランやホテルのランチタイムに出かけてみれば、この現象はハッキリと見て取れます。一度、札幌市内のさるホテルのランチタイムでのことですが、男性はウチのダンナさんだけで、ほかの30~40人はすべて中年、老年の女性で占められていたことがあります。そんな雰囲気にすっぽりと違和感なく収まるウチのダンナさん、「オレ、そんなに枯れているのかな~」と嘆いていました。

年寄りの男性ばかりの世界もあります。
ダンナさん曰く、早朝散歩は老人男性の世界だそうで、ナイキ、アデダスなどの運動靴、上下そろいのブランドモノのジャージーに野球帽で身を固めた老人が、散歩道を占有しているといいます。「オレのコピーが続々と現れる」のだそうです。元の方はアメリカの救世軍の店で買った古着で身を固めているのですが。

そして、午前中の図書館です。これまたお爺さんの世界で、新聞や雑誌を広げたウチのダンナさんに似たりよったりのコピーで占められています。マー、行くところがあるのはそれだけでもヨシとするべきなんでしょうけど、図書館の年老いた男衆は、ランチタイムの華やかかつエネルギッシュな老嬢に比べ、生気、覇気がないように見受けられますが、それは私の偏見でしょうか。

朝食の後、掃除の邪魔になるから、ちょっと外にでも出て行って…と奥さんに追い出されていないまでも、暗に家に居ずらい雰囲気を敏感に感じ取って、家を出て図書館にたむろしているのではないかと……気を回したくなります。

まだ、現役で働いているダンナさんの友人とお昼ご飯を摂ったことがあります。短い昼食は、時間無制限の女性専用ランチタイムと全く違い、昼メシをかっ込む場所で、ラーメン、おソバ、生姜焼き、とんかつ、牛丼、豚丼、カレーなどが主体で、注文してからテーブルに食事が出てくるスピードの早さにまず驚かされ、それから、彼らの食べる速さにあきれ果てました。15分以上テーブルに付いているのは禁止されているかのようでした。もちろん、この昼メシは90パーセントが男性です。

どうも、日本では食事の摂り方、少なくとも外食はオバサン用、サラリーマン用と分離されているようなのです。その中間に週末の家族向けファミレスがあるという図式が見えてくるのです。

西欧は建前として夫婦が行動の単位ですから、オバサンだけが大っぴらに羽を伸ばすことは少なく(比較の問題ですが)、定年退職後の夫婦は揃って行動することが多いです。アメリカの国立公園は、そんな老人カップルだらけです。

そのあたりが、男女の平均寿命に現れているのでしょうか、私のお姑さんが入っているグループホーム、9人ずつのユニットホームが二つありますが、たった一人の男性が入院してしまい、現在、18人、全員女子軍で占められています。

男女の格差が世界で最下位をさ迷い、女性の社会的地位がアラブの国並みに低いことなど、ハナから気にもせずに、長い年月働き詰めだったダンナさんを尻目に、悠々と初老、老後を楽しんでいるように見える日本の女性の方が、やれ女性の権利だ、独立したアイデンティティーだと騒いでいる西欧の女性たちより、はるかに幸せなのかもしれませんね。結果、世界でちょっと例を見ないほど長生きし、男性の寿命との間に、これもまた世界で一番差をつけて生き抜いているのですから。

 

 

第390回:アメリカへの帰郷と帰宅

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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