第370回:「号泣県議」の"滑稽な涙"
日本で、今年の十大面白ニュースに必ず入るような画像をテレビで見ました。
兵庫県議会の議員さんの絶叫、泣き叫びインタヴューです。
ウチの仙人、文字通りお腹を抱えて涙が出るほど笑いこけていましたし、あのインタヴューをテレビで見た人は皆が皆、一瞬、唖然とし、それからさぞかし笑ったことでしょう。茶の間に笑いをもたらし、話題を提供した功績で表彰してもいいほど滅多に見られない傑作インタヴューでしたね。
それにしても、よく泣きながらあれだけ喋りまくることができるものです。泣くという行為は、抑えることのできない感情がほとばしり、言葉に詰まるのが普通だと思っていましたが、この議員さんの場合は感情が高揚するに従って口が滑らかに動くようで、大声で慟哭しながらも、自己弁護の言葉が滞ることがありませんでした。
周りの人の反応ですが、日本人的というのでしょうか、「あんな議員を選んだ西宮市の市民はさぞかし恥ずかしい思いをしているだろう」、「あの人の奥さんが可哀想」「翌日、彼の子供たち、学校でどんな目に会うのだろう」と、日本の"恥の文化"を表すコメントが圧倒的に多かったように思います。
この議員の幼児性を指摘した人はほとんどいなかったようです。私の第一印象は、"この人の精神は3、4歳の子供だ"というものです。好きなオモチャを取り上げられ、ダダをコネテイル子供と同じように見えたのです。最近、大人になれない人が増えていますから、こんな人が現れても不思議でない…とは思いますが。
涙には美しい涙、悲しい涙、嘘の涙、醜い涙など、色々なバリエーションがあるとは思っていましたが、この人のように、まるで"滑稽な涙"があることを知りました。
彼の場合、税金で新幹線に乗りまくり、温泉通いをしたのを追求されましたが、これが議員暦の長い人なら、脂ぎった頭を下げて"行き過ぎ?"を認め、「今後、誠心誠意をもって県民、国民に奉仕する所存であります」と紋切り型の答弁で切り抜けたことでしょう。彼以上に大量に、しかし巧みな大人のやり方で議員の役得を使いこなしている議員さんは沢山いるはずです。
この兵庫県議会議員さん、経歴を見ると、何度も選挙に落ちまくり、やっとビリで当選し"夢の"議員になり、すっかり舞い上がっていたのでしょう。なんでも、自動販売機で新幹線の切符を購入した場合はそのレシートさえ出せば、何度でも、いくらでも県が支払ってくれることになっているのだそうです。これではお金がいくらでも出てくるスロットマシン用の特別なコインを議員に与えているようなものです。議員の出費に監査機構がないことにも驚かされます。
恐らくというよりほとんど確実と言っていいでしょうけど、他の多くの議員さんたちの無駄使い"一般的"レベルからみれば、この議員さんの浪費は取るに足らない小さな額なのでしょう。それで、これだけ日本中に話題と笑いを提供したのですから、彼の使った税金が全く無駄だったとは言えない雰囲気です。
この議員さんが次の選挙で当選するとは思えませんが、彼のことなら心配無用です。彼ならテレビのバラエティショーで十分笑いを取れる才能に恵まれていそうですから、吉本興業などのタレント会社で働けるでしょうし、日本がダメなら、韓国の田舎でまだまだ需要の多い、お葬式のときの"プロの泣き女"の職に珍しい"泣き男"としての活躍の場を見出せるかもしれません。
第371回:死を招く大食い競争
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