第367回:アドリア海の小島"ハヴァール"から その3
私たちが2ヵ月アドリア海の島で過ごす…と言うと、日本の友達だけでなくアメリカの友人、親戚も、必ず「スゴイですね、豪華ですね」と半ば呆れ、半ば羨ましがられます。
確かに、こんな時間が持てて、私たちはとても幸運だと思います。しかし、私たちの過ごし方は豪華なバカンスとは程遠く、"お金はないけど、時間はある"人種のバカンスなのです。言ってみれば、日本、アメリカの定年退職者なら誰でもできるバカンスの過ごし方です。
一番お金がかかるのは航空運賃ですが、これはインターネットを駆使して格安航空券を探します。一旦ヨーロッパに着いてしまえば、ヨーロッパの国の間では激安のチャーターフライトが結構飛んでいますから、日本からヨーロッパの大都市までの格安便を探します。
今回借りた部屋ですが、かっこよく言えば"スタジオ・アパートメント"ということになりますが、普通の家の一室に小さな台所とシャワー、トイレを無理に押し込んだような一室で、ほとんどの時間を外で過ごし、寝るだけですから、それで私たちには十分です。キョウビ、日本の学生さんの部屋の方がはるかに立派で広いことでしょう。
台所も超簡素で、コンロたるや私たちのキャンプ用の方がはるかに立派なくらいのものです。ですが、凝った料理をするわけではありませんから、それで間に合います。それに基本的なお鍋、フライパン、食器が揃っています。ベッドも清潔ですし、週に一回はシーツを取り替えてくれます。
この家はクロアチアの観光省が定めているアパート(Apartmani)の最低のカテゴリー、二つ星です。もともと、大家さんが住んでいた少し大きめの家を仕切り、貸すように改造したものです。
今までやってきた他の泊まり客は、道路工事のグループ7人(彼らの働きぶりには驚きました。朝7時には現場に行き、日が暮れる8時まで働いていました。それにココに帰って来てからも、酔っ払ったり、大声で騒ぐこともなく、礼儀正しく、最高の同居人?でした。これがアメリカ人労働者と同じ宿なら、悲惨なことになっていただろうと…思わずにはいられません)。
人夫さんの飯場、宿舎のようなところですが、他に入れ替わり入ってくるお客さんはバックパッカー的な、若い旅行者が多く、彼らは3、4日、長くても1週間ほど滞在して次の地へ移って行きます。皆、それぞれのやり方で旅行を楽しんでいるのを見るのは気持ちのよいものです。
狭い一部屋のアパートでも、隣人たちとの問題は皆無で、むしろ彼らと接触することで楽しさが増しました。
さて、このワンルームアパートのお値段ですが、私たちは1ヵ月6万円ほどで借りました。ちょっと旅行案内風になりますが、インターネットに沢山あるサイトの中で私たちが使ったのは『Airbnb』
というサイトです。そのサイトが特別というわけではなく、偶然見つけただけなのですが…。
ウチのダンナさんもそうですが、私も自分を満足させる外的な基準が非常に低いようで、豪華なホテルのプールサイドでリクライニングチェアーに寝そべり、ユニホームを着せられたウエイター、ウエイトレスにかしずかれて、なにやらエキゾチックなカクテルを飲むよりも、人気(ヒトケ)のない海岸で沖行くヨットを眺めながら、大家さんから頂いたオリーブ油に固いパンを浸し、それをつまみに地酒のワインを一杯やる方を好む傾向があります。もっとも、そんな豪華なリゾートホテルに泊まったことがありませんから、どっちが良いとは確定的に言えませんが…。
クロアチア、とりわけアドリア海の海岸線は、すでにヨーロッパの観光客が大挙して訪れていますが、アメリカ、日本でも一足遅れでブームになっています。私の従姉妹夫妻もクルーズで訪れましたし、日本のクルーズマニアの友達もクロアチアを訪れ、その時のハナシを聞きました。
でも、なんだか全然別の国に行って来たような印象なのです。彼らは遺跡の立派さ、中世さながらの町並みと物価の高さに驚嘆しています。もちろん、地元の人との接触は皆無に近く、そんなチャンスを求めようともしないでしょう。 私たちは少し偏重しすぎなくらい、地元の人と接することが無上の喜びを感じるタイプのようなのです。ここの大家さん家族、パン屋さん、八百屋さん、魚屋さん、雑貨屋さん、道路工事の人たち、毎日会う石工のお爺さんとチョット言葉を交わすのが楽しみなのです。
私たちの体験にしても、目の見えない人が象の鼻を触り、象は蛇のような動物だと判断しているようなものかもしれませんが…。
日本の定年退職者の皆さん、お金をかけなくても、世界中どこでも休暇に出かけ、存分に楽しむことができますよ。なんせ、毎日が日曜日、"サンディー毎日"なのですから…。
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