第363回:人種別学力差と優遇枠
2013年の高校卒業率が81%になりました。これはアメリカの歴史始まって以来、高い、高卒率?でアメリカの文部省も先生たちもさぞ鼻高々なことでしょう(“National
Center for Education Statistics”による)。
ところが、別の調査機関"The National Report Card"という公的な機関のレポートによれば、高校3年生で数学と国語(米語)の読解力のテストで、国が定めた基準をクリアできる生徒は数学で36%、読解力で38%しかいないというのです。これでは高卒の3分の2の生徒さんは算数ができず、自国語ですら満足に使いこなせないまま卒業していることになり、高卒を量産し、大バーゲンをしているとしか思えません。
ここで、国の基準たる数学(算数レベルなのですが)と米語の読み物のレベルを見せることができればよいのですが、それは恥ずかしくなるくらい程度の低い、ごくごく基本的な基準で、日本、シンガポール、マレーシアなどのアジアの国の生徒さんなら、高校生でなくても、中学生でも目を瞑っていてもパスできるような低基準なのです。
ここで人種のことが出ましたので、このアメリカの高卒学力基準をパスした高校生を人種別にみますと、アジア系は47%、白人33%、ヒスパニックは12%、黒人は7%と驚くほど明確に人種の差が出ているのです。勤勉で教育熱心なアジア系というのは神話でもなんでもなく事実なのです。アジア系と黒人の差の酷さには目を覆いたくなります。
これでも2005年にはアメリカの黒人で高卒基準の数学ができる生徒さんが2%だったのですから、それが2013年に7%まで上昇したことを喜ぶべきなのでしょう。男女でも差があり、国語のテストでは女子が10%も男子を上回っています。
こんなゴク低基準のハードルを飛び越せないようでは、大学入学資格を得ることができません。
州立、私立を含めマイノリティー(少数民族)を助けるためにほとんどの大学で入学に一定枠を設けて、黒人、ヒスパニック、アメリカ・インディアンを優遇しています。そのマイノリティーの対象にアジア系は入っていません。
逆に日本のように、入学試験でスパッと線を引き、ココから上はOK、下は入学させない…とやると、アメリカの有名で優秀な大学はアジア人ばかりになってしまうことに危機感を抱いている大学関係者が意外と多いのです。
今度、ハーヴァードやプリンストン大学などがヒスパニックや黒人に対する優遇枠をなくすと宣言し、市民団体がこぞって反対していますし、最高裁判事で初めてのヒスパニック系の女性、ソト・マジョールさんも、自身そのような枠で入学し、勉強することができたのだから、少数民族の優遇枠は残すべきだと述べています。
少数民族保護といえば、すべてを黙らせる切り札のように聞こえます。ですが、考えてみるまでもなく、"できの悪い"生徒を少数民族だからという理由で入学させると、その分だけ優秀なアジア系の学生が入学できなくなり、懸命に勉強してきたアジア系の若者に対して、とても不公平なことになります。
私に言わせれば、優れた大学にしたいなら、優秀な生徒を入れるのが当たり前で、その結果、その大学がアジア系ばかりなったところで、何が悪いの…と大きな声で言いたいです。
国語の読解力、作文能力の低下というより無さは、若い人たちが本を全く読まなくなったからでしょう。テキストメッセージのように省略が多く、短い、紋切り型の文章しか読まず、書いたこともない人が、自分の考えをまとめてきちんと表現できるはずがありません。
毎年、新入生が入ってくると、私たちの大学では簡単な国語のテストをして、もう一度国語(自国語の英語ですよ)のトレーニングのため最下位クラスの英語、作文のクラスを取らせるかどうか決めます。その最低ラインをクリアできない生徒さんが60%にもなり、あんたたち、本当に高校卒業してきたのと…言いたくもなります。外国人留学生の方がはるかに立派な英語を書くのです。
優秀なアジアの生徒さんが大量にウチの大学に来てくれないかな…と思いつつ、今年もまた、素早くiPadやスマホを使うのが唯一の取り柄で、自己弁護、言い訳ばかり上手な新入生が大挙して私の大学に入ってくるのを、かなり憂鬱な気分で観ているのですが…。
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