第42回:いかにしてチケットを手に入れるか…
ライプツィヒへの航空チケットを取るのは簡単だ。2、3日ずれようが、ライプツィヒ・ハレ空港以外の他の町への便しか空席がなかろうが、そこから列車に乗れば良いだけだ。しかし、バッハ音楽祭のコンサートのチケットはそうはいかない。外せない演奏がいくつかあり、そのために音楽祭に行くようなものだから、極端に言えば、そのコンサートの入場券が手に入らなければ、ライプツィヒまで出かける価値がなくなる。
ここで、バッハ音楽祭の各コンサートのチケット、入場券の取り方を披露すると、今でさえ困難なチケットがますます難しくなるのではないか…と大いに危惧し、ためらわれるのだが、今まで散々御託を並べ、毒にもならないが薬にもならないコラムを読んでくださった人たちに、手の内を披露する義務がある…と判断した次第だ。
バッハ・フェスティバル 2022 プログラムより
それはまず、半年以上前に翌年のプログラムを入手することに始まる。来年、2023年のプログラムは今年2022年の秋には決定し、発表される。インターネットで申し込んでおくと、カーラー印刷の立派なものが郵送されてくる。しかし、それを待っていては手遅れで、早々とインターネットに載るプログラムを印刷し、競馬の予想のように、本命、対抗、穴と赤いペンでマークを付け、どのコンサートに行くかを選んでおく必要がある。
このサイトはhttp://www.bachfestleipzig.de か http://www.bachfestleipzig.de/ticketsで座席のカテゴリーも決めておくと良いだろう。入場料が一律のものもあるが、席により価格に大きな差がある。例えば、今年2022年の締め、聖トーマス教会での『ロ短調ミサ』は120ユーロから37ユーロまでの違いがある。いずれにしろ、教会音楽は演奏者が祭壇の対面の2階に陣取ることが多く、(最近、祭壇でアンサンブル、演奏をすることが多くなった。バッハの時代には想像もできないことだったろう)演奏を目で観て楽しむことは、ハナから諦めた方が良い。
そして、準備万端、クレジットカードを手元に発売日を迎える。これがまた一仕事で、来年のバッハ音楽祭の切符は、今年11月15日、ドイツ時間の午前10時に売り出される。私たちが住むコロラド州では真夜中になる。私たちは、電話攻勢とインターネットと両面作戦で切符を購入している。どうにか行きたいコンサートの入場券を確保し、クレジットカードで引き落としてもらうことにしている。そして、DHLで切符の束が郵送されてくる。今まで一度も予約したコンサート、席などの行き違い、間違いはない。
電話は0049(ドイツ国番号)1806-999000-345で、ドイツ時間の午前10時から20時まで対応してくれる。と書いたが、発売の初日、誰しも考えることは同じなのだろう、回線が非常に混む、インターネットもパンク状態なのかよく途切れる。
私たちが購入するコンサートの切符の総額は、およそ一人当たり1,500~1,800ユーロになる。それを25%割引で買う方法がある。“フェスティバル・カード”なるものを購入しておくと、ほとんどのコンサートが25%引きになるのだ。このカードは77ユーロで誰でも買うことができる。少し高いかなとも思うが、もし、バッハ音楽祭の全日程、10日間に30~40のコンサートに行くつもりなら、フェスティバル・カードを入手するだけの価値が出てくる。
アメリカ、西欧の国のコンサートでは、身体障害者、私のような後期高齢者の割引がよくあるのだが、面白いのはバッハ音楽祭では失業者の割引があることだろう。ただし、高齢者の割引はない。教会の上から覗くと列席者は見事に白髪、ハゲばかりだったから、老人様様なのだろうけど…。
このフェスティバル・カードは、切符を購入する時に同時に購入できる。なお、このフェスティバル・カードは、ゲヴァントハウス、メンデルスゾーンハウス、オペラハウス、近隣の町へのバスツアーなどには適応されない。
最初の2、3年では気が付かなったことだが、発売日に勇んで電話してもすでに売り切れのコンサート、あるいは選んだクラスの席がないことが往々にあった。これは変だとばかり、細かい字で書かれたプログラムを仔細に読むと、“ライプツィヒ・バッハ・アルヒーフ(資料財団)友の会”なるものの会員になると、なんと2週間も前に切符を購入できるとあるではないか。これは、私たちを含めたよそ者、外国人が早々と切符を買い占めるのを防ぐためだと思うのだが、この会員には誰でもなれるのだ。
電話でドイツ語、英語でやり取りするのが苦手の人、インターネットを扱いきれない人は、日本のチケット・エージェントを使うのも一考だろう。私たち以上にバッハ音楽祭に通い詰めているRさん、Jさんは日本のエージェントを使い、いつも良い席を確保している。バッハ音楽祭の事務局で尋ねたところ、あそこは信用できる良いエージェントだし、大量に買うので、“それなりの便宜??”を図っているとのことだった。
どんなコンサートでも同様だと思うが、一度買ったフェスティバル・カードやチケットは払い戻しができない。だが、聖トーマス教会の東側の公園内に設けられたテント張りの「バッハフェス・インフォーメーション・センター」「チケット・オフィス」(Petersstrasse側)で預かってくれ、もしそのコンサートの切符を買いたい人が現れたらという条件で売ってくれる。私たちもそのような切符を買ったことはあるが、売ったことはない。
学生時代によく使った手だが、そのコンサート会場に1時間ほど早めに行くと、必ずなんらかの事情で急にコンサートに行けなくなった人が、切符を掲げて売っている。クラシックのコンサートにまでダフ屋は進出していないから、そのままの値段か或いは値引きした価格で購入できる。もちろん席は選べない。
ライプツィヒ市内地図
有名な見本市会場、メッセの会場はS-Bahnか路面電車(Srassenbahn)の
16番の終点にあり、離れている。メッセ会場の近くに大きなホテルがあり、
そちらに滞在することが多いので、リンクと呼ばれる旧市街の内側の宿は比較的取り易い。
ただ、様々なイベント、クラッシック・カー、ドイツ消防士、ゲイ集会、
サッカーの試合にぶつかり、部屋を取るのが難しかったことはある。
切符を手にすると、やおらライプツィヒ行きが具体化してくる。前に書いたように、ホテル、宿はリンクのできれば内側、もしくは中央駅の界隈に取るべきだろう。リンク、環状道路はライプツィヒの街をグルリと囲んでいたお堀を埋め立てたもので、その内側は長い方の南北でも1.2~3.0キロだから、主な会場へは徒歩で行ける。
ホテルの予約はhttps://www.leipzig.travel/ 電話:0049(ドイツ国番号)-341-7104-260 でも申し込めるが、インターネットに数あるホテルサイト、Expedia や hotel.com などの方が手取り早いかもしれない。多少ドイツ語ができるなら、privatzimmer(普通の家の一部屋)をドイツ語のサイトで探す手もある。
町の地図は市のインフォーメーション・センターでくれる。つたないドイツ語で「地図はあるか?」などとやったら、「日本の方ですか?」と相当綺麗な日本語で切り返された。ここでも、ホテルの予約をしてくれる。
-…つづく
第43回:無料のコンサートとみんなで唄おう
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