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■音楽知らずのバッハ詣で
 

第41回:観光案内風にライプツィヒの近隣の町と森

更新日2022/09/01

 

私たちはよく歩く方だと自認していたところ、バッハ音楽祭で毎回のように顔を見合わせ、知り合いになった“バッハ友”らが皆、好奇心旺盛で健脚なのに驚かされた。“バッハ友”は実によくバッハの足跡を調べ、探し求め、その地を訪れているのだ。私がどこそこに寄ってからライプツィヒに入ったと言うと、あそこは私、僕も行ったことがあると切り返されるのだ。とりわけ、もう何年もバッハ音楽祭の期間を挟むようにヨーロッパ全土を歩いているK夫妻には憧憬と驚嘆を持ってホトホト感心させられっぱなしだ。バッハが少年、青年時代に歩いてテューリンゲンの町や村を歩いたように、K夫妻はそれをさらに広げ西ヨーロッパ全域を歩いているのだ。バッハ詣では、すべての詣で、伊勢参り、流行のサンチャゴ・デ・コンポステーラ街道、果てはメッカ詣でにしろ、足が丈夫、健脚が第一条件なのだ。

ここで、かなり観光案内風になるが、まだまだ歩ける超後期高齢者向けにライプツィヒから日帰りできるスポットを紹介してみる。

筆頭は隣町、ヘンデルが生まれたハレ(ザーレ;Halle/Saale)だろう。ライプツィヒの中央駅、マルクス広場の恐ろしく深い地下駅から15分内外で直行できる。バッハがそこのオルガニストに応募した聖マリエン教会は街の中心にあるし、ヘンデルの家は博物館になっている。

ハレはライプツィヒから容易に日帰りできる。バッハ音楽祭の前にこの町を中心に“ヘンデル音楽祭”が開かれる。最終日がバッハ音楽祭のオープニング・コンサートと重なることもあるにしろ、両方兼ね合わせる日程を充分組める。2022年を例にとれば、ヘンデル音楽祭は5月27日から6月12日までで、バッハ音楽祭は6月9日にオープニング・コンサートがあり、苦しい選択を迫られる。

俗だとバッハファンには軽蔑されそうだが、“水上の音楽”を流れに任せながら船の上でのコンサート(これはすぐに満席になるので早目の予約が必要)、それに野外で実際に花火を打ち上げながらの“王宮の花火の音楽”は、バッハの音楽とは違った楽しみを与えてくれる。そして、毎年出し物は変わるが、バロックオペラがハレのオペラハウスで開催されている。

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ヘンデル音楽祭のプログラム
https://haendelhaus.de/en/hfs/homepageに請求すると、立派なカタログを送ってくれる。
通常、入場券の販売はその前年の11月下旬で、いずれも英語で問題ない。
e-mail: handel@tim-ticket.de TEL:+49 345-56 52 706    Fax +49 345- 5652 790

ライプツィヒから目と鼻の先、ドレスデン(Dresden)に行かない法はないだろう。戦災を激しく受けた町だが、王宮、ゼンパーオペラハウス、聖母教会など、ドイツ的なコダワリ、しつこさで再建されている。ライプツィヒから100キロほどだが、列車もバスも本数が多く、充分日帰りできる距離であるにしろ、2、3日ドレスデンで過ごすのが良いと思う。見るものがたくさんあるし、数多くのコンサートが開かれているので、スケジュールをそれらに合わせると一層ドレスデン滞在が楽しいものになる。ドレスデン音楽祭は9月の初め、シュッツ音楽祭も今年は10月7日から16日までだから、バッハ音楽祭と関連づけるには期間が離れ過ぎているが…。

ザクセン(Sachsen)に限らないが、ドイツ全体を網羅している音楽祭、コンサート案内の月刊誌『CONCERTI』はとても役に立つ。

マイセン焼きの町マイセン(Meißen)は、ドレスデンからエルベ川沿いに北西に十数キロ降ったところにある。各駅停車の列車でも良いが、ドレスデンから貸し自転車で格好の距離だ。

ハイキング趣味の人にお勧めは、ザクセンのスイスと呼ばれている国立公園でドレスデンから東、チェコよりに33キロ、チェコまで6キロのところにある、小さな町バート・シャンダウ(Bad Schandau)だろう。

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Bad Schandauの町、中心広場と言ってもこの広場の周辺にしか家はない

この町へはドレスデンから列車、そしてエルベ川のフェリーに乗って辿り着く。またこの町から、これまた小さな豆電車が山の麓まで走っている。ハイキングコースがたくさんあり、ちょっとした岩場には固定の鎖、鉄の足台が打ち込んであるので、私クラスの老人ハイカーでも充分登れる。おまけに、かいた汗を流す温泉がこの町バート・シャンダウにあるのだ。だが、この温泉は日本的なものとはおよそかけ離れた、水着を着けて入る温水プールのようなものだが…。有名なバスタイ(Bastie)橋へはバート・シャンダウで自転車を借りて行った。

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バスタイ橋(The Bastion Bridge)



少し足を伸ばし、バッハ音楽祭前後にベルリン、プラハ、ミュンヘンを加えるのも一向だろうか。

ドイツ、テューリンゲン(Thüringen)に少し長くいようという向きには、“テューリンゲン・バッハ週間”という音楽祭がある。これは今年の場合4月8日から5月22日までで、5月27日からのヘンデル音楽祭まで十分ゆとりがある。問題はテューリンゲン・バッハ週間のコンサートは文字通り、テューリンゲン地方全体に広がっているので、どうやってその町、村に辿り着くかだ。思い切ってレンタカーを借りるか、オーガナイザーに公共の列車、バスなどを詳しく訊くしかないだろう。ライプツィヒのバッハ音楽祭と同じ演奏家が半額ほどで聴けるもの嬉しいが、大きなホールでの演奏が少なく、田舎町の古い教会や館でコンサートがあるのもとても嬉しい。
チケット、インフォーメーションはhttps://www.thueringer-bachwochen.de/ja/
電話:49-361-37420、この切符も前年の11月初旬に発売される。

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テューリンゲン・バッハ週間のカタログ、プログラム

バッハゆかりのテューリンゲンの小さな町、村はバッハの時代を彷彿とさせてくれる。

-…つづく

 

 

第42回:いかにしてチケットを手に入れるか…

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佐野 草介
(さの そうすけ)
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海から陸(おか)にあがり、コロラドロッキーも山間の田舎町に移り棲み、中西部をキャンプしながら山に登り、歩き回る生活をしています。

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バックナンバー

第1回:私はだまされていた…
第2回:ライプツィヒという町 その1
第3回:ライプツィヒという町 その2
第4回:ライプツィヒという町 その3
第5回:ライプツィヒという町 その4
第6回:ライプツィヒという町 その5
第7回:バッハの顔 その1
第8回:バッハの顔 その2
第9回:バッハの顔 その3
第10回:バッハの顔 その4
第11回:バッハを聴く資格 その1
第12回:バッハを聴く資格 その2
第13回:バッハを聴く資格 その3
第14回:バッハを聴く資格 その4
第15回:バッハを聴く資格 その5
第16回:バッハを聴く資格 その6
第17回:バッハを聴く資格 その7
第18回:天国の沙汰も金次第 その1
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第20回:天国の沙汰も金次第 その3
第21回:ライプツィヒ、聖トーマス教会のカントル職 その1
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第23回:人間としてのバッハという男 その1
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第25回:人間としてのバッハという男 その3
第26回:バッハとセックス その1
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第28回:聖トーマス教会カントルという職業
第29回:地獄の沙汰も金次第
第30回:清らかに謳え、賛美歌
第31回:バッハの戦いと苦悩の連続
第32回:バッハと作詞家の関係
第33回:バッハの晩年は悠々自適だったか?
第34回:バッハの晩年とその死
第35回:アルプスの北は文化の僻地、すべての芸術は南国にあり
第36回:君よ知るや南の国、イタリア
第37回:そしてバッハ音楽祭、私は騙されていた…
第38回:ライプツィヒという町 その1
第39回:ライプツィヒという町 その2
第40回:ライプツィヒの近隣の町

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