第178回:ベル市のその後の顛末
鹿児島県阿久根市の竹原市長さんが、自分の給料を月額40万円に減らすことにしたニュースを見ました。モトモト80万円だったのを48万円に減らし、市の財政が悪化しているのでさらに40万円にし、副市長の給料も63万円だったのを10万円に下げたというのです。
副市長さんのコメントでは、無給でもよいのだけど、他の役職の方々とのバランスを考え、ただ象徴的な給与にした、しかしこの減給は現市長の在任中に限る、と次期市長への思いやりを見せています。
町のサイズとしては、阿久根市の方がカルフォルニアのベル市より少し小さいですが、上に立つ人の給料はなんという違いでしょう。
先々週、『税金泥棒』(No.176)でカルフォルニア州のベル市のことを書きましたが、事件に大きな進展がありましたので報告します。
ベル市でも市長、助役、市会議員など、市のトップの8人が逮捕され、ベル市は汚職の町として全米に知られることになりました。日本でも朝日新聞がベル市の不正を報道しています。
後ろ手に手錠をかけられた、栄養の行き届きすぎた容疑者たち、しばらくは拘置所で減量することになるでしょう。そして厳しい判決が下されることを祈っています。
逮捕に踏み切ったロスアンジェルス(郡)の検察、司法長官ですが、余罪というのでしょうか、不正が出てくるは出てくるは、税金をまるで自分のお小遣いのように使っていたのです。
もともと、自分で自分の給与を決定できる立場の人たちですから、自分の事業に税金から融資したり、自分の持っている使い道のない土地を市に異常な高値で買わせたり、まさにやりたい放題とはこのことでしょう。
不正、汚職の中心人物は助役と訳しましたが、こちらではCity Managerと呼び、選挙で選ばれるのではない役職で、市長、副市長に次ぐ第三番目のお役人、ロバート・リッソです。"町のシーザー"と自称し、市の財政を一手に握っていました。身体もシーザー並?に120-130Kgはあろうかという巨漢です。
リッソは53件の違法行為で逮捕されましたが、主な罪状は、自分自身に1億9千万円相当の不正融資をしたこと、固定資産税、排水料金、企業の営業許可などを不当に高く徴収していたこと、市会議員が所有している開発会社へ10億円相当の不正融資をしたこと、前市長が所有していた土地を4億8千万円相当で市に購入させたことなどで、これらはすべて自分自身に8千万円近くの年収を払った上にやっていたことで、不正の総額は50億円相当にのぼります。
これが、低所得の労働者が住民の大半で、住民の6分の1が生活保護レベルの貧困を強いられている町でのことです。
検察は主犯格のロバート・リッソに保釈金2億円相当を言い渡しました。他の容疑者、秘書格のアンジェラ・スペイシア、前市長のオスカー・ヘルナンデス、副市長のテレサ・ジャコブ、市会議員の面々には1,200万円から2,600万円相当の保釈金を言い渡しました。驚いたことに、二人の市会議員はそれだけの高級を貰い、蓄えがたっぷりあったのでしょう、その場でポンと保釈金を支払い、保釈になっているのです。
ロバート・リッソは最高58年の刑、アンジェラ・スペイシアは最高10年の刑に服することになります。ロスアンジェルスの検察庁ができるのは刑事事件としての罰則を科し、彼らを牢屋に入れ、せいぜい彼らが不正にフトコロに入れたお金を楽しむ時間をなくすることだけです。
長年に渡ってすでにポケットに入れてしまったお金は市民に返ってきません。これから、ベル市の住人が民事訴訟を起こして、ベル市の悪徳代官8人衆に不正に支払われ、不正に融資されたお金の返還を求める運動を繰り広げていくしかありません。でも実際問題として、土地や財産の差し押えの判決が下ったとしても、今まで支払われた天文学的なお金の何十分の一しか取り戻せないのでしょうね。
まあ、この事件をきっかけにカルフォルニア州では、中小の市町村の給与、財政に眼を光らせるでしょうから、"カルフォルニアで起こる事は全米に広がる"という格言どおりに、不正が巣食っているアメリカの町が、次々と明るみに出てくることを祈らずにはいられません。
第179回:インターネットの“蚤の市”
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