第163回:金の卵と子宝
田舎町からさらに30キロ以上はずれの超田舎に住んでいる私たちは、近くの農家から卵を分けてもらっています。町中のスーパーで買うのとは、味も割った時の黄身の盛り上がりも色も全く違い、ああそういえば、おじいさんおばあさんの農園の卵はこんなだったと懐かしく思い出しました。同じ卵でも、こんなに違うんですね。
西欧には"金の卵を産む雁"という表現があります。それが日本では、"雁"ではなく"鶏"になり、ぐっと身近にいる家畜に幸運をもたらす"金の卵"を産んでもらい、実際にはありえないことが、起こりえるかもしれないと思わせているのでしょうか。
自分の卵子を売って大いにお金儲けをしている女性が増えています。
結婚しても赤ちゃんができない奥さんに代わって、若い健康な独身女性が人工授精し、その受精卵を奥さんの胎内に入れ、胎児を育てるという魚の人工孵化ようなことが可能になってきたので、自分の卵子をとても高い値段で売る若い女性が出てきました。卵屋さんみたいな専門のエージェントもたくさんあります。
黄身の盛り上がった美味しい卵が高いのは当然のことですが、人間の卵子でも需要供給の関係からか、一番人気は金髪で知能指数、IQが高く、近親者に精神病患者がおらず、もちろん本人が健康優良、頭脳明晰であり、年齢も20歳から27-8歳までと厳しい条件をクリアした女性の卵子は1,000万円もの値段で売られています。手頃なところでは100万円くらいの卵子もあります。
こんなところにも、人種偏見が露骨に表れています。黒人、アジア人の卵子の売れ行きはいたって悪く、ゼロに等しいそうです。
女性は毎月排卵しますから、鶏ほどではないにしろ、その気になれば毎月卵を売ることができます。インタビューに応えていた女性は、1年間に6個の卵を売ったそうです。 あまりに簡単に儲かるので、自分で卵屋さんエージェントを開き、母親志望の"可哀想な主婦"を助けてあげるのだそうです。
男性の精子を冷凍保存したり、人工授精したりすることはかなり昔から行なわれてきました。卵子より精子の方が量産が効くせいでしょうか、有名なエリート大学の学生さんの精子でも20-30万円で売られています。
一番悲惨なのは、10ヵ月間もの妊娠期間と出産を受け持つ、お腹貸し業の女性です。 ご夫婦で、奥さんが卵子は生産するけど、妊娠に耐えられない何かの病気を持っていたり、体力がない場合、その夫婦の人工授精した受精卵を全く赤の他人のお腹に入れ、育ててもらうのです。
このお腹貸し業の女性は100パーセント近くアメリカ外で、主にインドの女性が受け持っています。彼女たちが受け取るのは、10ヵ月の妊娠と出産で100ドルから200ドル程です。もちろん、間に入ったエージェント、お医者さんはたんまり儲けていることでしょうけど。
お金にモノを言わせて、すべてを解決しようとするのは成金の特徴です。
日本には"子宝"という表現がありますが、いかにも"赤ちゃんは天からの授かりモノ"といった心情が表れていると思います。良い卵子や優性の精子を買ったり、挙句の果てにお腹まで借りようとする人たちは、生命の尊厳をお金で買おうとしていることに気が付かないのでしょうね
第164回:人生の卒業
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