第89回:アメリカ合州国大統領の犬
更新日2008/12/04
ブッシュ大統領の犬"バーニィー"がジャーナリストに噛み付きました。バーニィーは黒い小型犬で大統領付きのジャーナリスト、タムロン・ホール(Tamron
Hall)が頭をなでようとしたところ、パクッとやったのです。丁度テレビカメラが回っていたので、その様子が全国に放映され、タムロンの咬まれた手が大写しになりました。
メディアの人たちは、タムロンは病院に入って、狂犬病の予防接種を受けるべきだとか、これでタムロンはたっぷり賠償金を取れるとか、無責任に騒ぎ立てていますが、当の本人、タムロンは、「あの犬、"バーニィー"はきっとホワイトハウスを追い出されたくなかったのだろう。それに前日オバマが選挙に勝ったので、イラついていたのかもしれない」と冗談で流し、大げさな事件になることを避けています。
仲間のレポーターはタムロンがアンチ・ブッシュ的な質問ばかりし、ブッシュにいつも噛み付いているので、ブッシュに忠実な"バーニィー"がタムロンに噛み付きかえしたとか、タムロンには民主党の匂いが染み付いていたからだ、とかにぎやかです。
そういえば、この間、クリントンの犬、バディは車に撥ねられ死亡しました。
歴代の大統領は、ホワイトハウスでよく犬を飼います。
ルー・キャロルさんが83歳で亡くなりました。ルーさんがとても有名になったのは、まだカリフォルニア州知事だったニクソンに(実際にはニクソンの二人の娘さん、トレシアとジュリーにですが)コッカ・スパニエルの子犬を贈ったからです。ギリシャからの移民の子だったルーさんは、地味なセールスマンとして生涯を終えましたが、彼が贈った犬は"チェッカー"と名づけられ、ニクソンの副大統領時代、大統領時代を通じ、いつもニクソンの側にいて、写真に納まり、当時、どちらが本当の大統領か分らないとか、ニクソンが選挙に勝ったのはチェッカーのおかげだとか言われたものです。
ルーさんは、「なぜ、私が贈った犬のことでそんなに大騒ぎするのか理解できない」と静かな市井の人として生涯を終えたのですが。
大統領がホワイトハウスで飼う犬は、ドッグショーや品評会に登場するような血統証つきの高価な犬ではなく、ごくありきたりの小型犬、中型犬が多いのですが、何とかマッチョ・イメージを出そうとしていた、セオドル・ルーズベルトは大型の猛犬ピット・ブルを飼いました。今ではたくさんの町、市、郡で禁止されているどう猛な犬です。セオドル・ルーズベルトのピット・ブルも期待に応え、フランス大使に噛み付き、挙句大使が座っていた年代物の椅子をメチャメチャに噛み砕き、ホワイトハウスからルーズベルトの私邸に移されてしまいました。
ジェラルド・フォードはゴールデン・リトリバーを飼っていましたが、とても賢い犬で、フォードが退屈な会議やミーティングで嫌気がさしたときに、そこに割り込み、会議を中断させたり、流したりする特殊技能があったと言われています。人間に聞こえない犬だけに聞こえる特殊な笛をフォード大統領が吹き、犬はそれに従っただけだという人もいますが。
オバマがシカゴで大統領選挙勝利演説をしたとき、自分の二人の娘さんにホワイトハウスに移ったら犬を飼うことを許してあげようと誓言したところから、次期大統領の犬論争が巻き起ってしまいました。
娘さんはアレルギー体質なので、毛の飛ばないどんな小型、中型犬が良いか、と獣医さんやペットショップのオーナー、犬の訓練師がテレビ、新聞で見解を述べ、愛犬家がそれに反論し、今までに子犬をあげますと申し出た人が100万人を越したそうですから、アメリカ人は本当にお祭り騒ぎが好きなんですね。
当のオバマは娘に自分で選ばせるし、自分のような雑種(オバマは白人の母親とコンゴの黒人の雑種?)を捨て犬のシェルターで選ぶと公言し、次期ホワイトハウスの犬騒ぎに終止符を打ちました。
ブッシュの犬に咬まれたタムロンさんは、未来のホワイトハウスの犬に、「いつもシッポを振って、ジャーナリストを喜んで迎えてくれる躾けだけはしてくれ」と言っています。
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