■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)



中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。




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第51回:スポーツ・イベントの宣伝効果


■更新予定日:毎週木曜日

第52回:国家の品格 その1

更新日2008/03/20


「品格」は私にとって目新しい言葉です。ベストセラーになった藤原雅彦氏の著書『国家の品格』のおかげで、一つ言葉を覚えました。実は私はこの本を読んでいないのですが、私なりに「国家の品格」…とまではいきませんが「国家の品定め」をしようと思います。

私にとって、国とは生まれ育ったアメリカ合衆国であり、もう一つの国は深くかかわって来た末、その国の男性と結婚までした(結婚してしまったから、深くかかわらないわけにいかなかったとも言えますが)日本です。

一人の人間でさえ、複雑に入り組んだ精神や心理が人格を作っているのですから、そんな人間の集団が特定の土地に住み着き、複雑に入り組んだ要素を持ちながら一つの国を形作ったとしても、それは様々な面をもち、国を一人の人間のように見て、品格、品定めをするのは不可能なことのようにも思えます。

アメリカのブッシュ大統領は、もちろんアメリカの政府を代表する人ですが、今や支持率史上最低に近く、アメリカ人の大部分は彼をアメリカそのもの、アメリカの顔だとは思っていないでしょう。 

そんなことを充分承知の上で、それでもその国の性格(品格と呼んだ方が受けるのかしら)があるように思います。とてもあいまいで大雑把な言い方ですが、「国民性」とまとめて呼んでいるものです。

2004年12月のインドネシア、スマトラを襲った大津波のとき、世界各国の政府が援助金を送りました。というより幾ら援助金を送るというたぶんに政治的キャンペーンの意味もあり、大々的にアナウンスしました。表明したとおりの金額を即座にきちんと送ったのはロシアを除くヨーロッパの国々と日本だけです。日本は世界で最大の援助金、500ミリオンドル(当時で約600億円)以上を即座に送りました。この金額は、他の国々に比べ圧倒的に多く、2番目の国の3倍以上になります。

そこでわが国、アメリカを調べてみたところ、なんとブッシュ大統領350ミリオンドル(約385億円)を援助すると公言していながら、公言した額の3分の1、132ミリオンドル(145億円)しか援助していないのです。それにしても高らかに援助の金額を公言しておきながら、それを実行しない国が多いのには驚きました。きっと政治家さんは、私のようにシツコク、その後のことを調べたりする人はいないと思っているのでしょうね。

スマトラ津波のときに大風呂敷を広げながら約束を守らなかった国は、アメリカをはじめ、カナダ、オーストラリア、サウジアラビア、ロシアなどで、この件だけに限ってですが、日本は圧倒的に"有言実行"の国であり、品格ナンバーワンの国です。逆にアメリカ、カナダ、ロシア、オーストラリア、サウジアラビアなどは下品な国、大言壮語を駆しながら、実行しなかった品格の著しくない国と呼ばれてもしょうがありません。

ところがです、アメリカ政府が空手形を切り、口約束をさっぱり守らないのに対し、一般のアメリカ人がスマトラ地震のために募った寄付金の総額は1.55ビリオン(15億5,000万ドル、約1,700億円?)にもなっています。この金額は日本政府が即座に送った金額の3倍、アメリカ政府が実際に送った援助金の13倍になります。

アメリカの政府がいくら品格がないと言っても、アメリカ人をそんなに軽蔑しないで下さい。アメリカ政府が生み出した世界的な悲劇も含め、世界中の不幸な事件に対し、一個人としてのアメリカ人はたとえそれが巨大な政治、軍事力の前では取るに足りない小さなことであるにしろ、このようにチャリティーの精神をもって報いているのです。

 

 

第53回:国家の品格 その2