第84回:長生きをする秘訣は?
更新日2008/10/30
アメリカでは昨年誤診で238,337人の人が亡くなりました。この数字はHealth day Newsという、信頼できる医療専門誌が調べた統計です。現代医療のおかげで命拾いをした人の数を知らずに、この238,337人が多いのか少ないのか、そのくらいのリスクは医療に常につきものなのか分りません。でも数字だけで見ると、24万人近くの人といえば、私の住んでいる町の人口の2倍なので、そんなに多くの人が医療ミスで亡くなっているのはショックです。
たとえ 医療ミス、誤診の可能性があっても、治療を受けることができるのならまだ救われますが、今回日本で起った妊産婦さんのタライ回し事件には驚きました。日本の医療システムは世界に誇ってもよい優れたもので、『医は仁』と言うように、モラルの高いたくさんのお医者さんが医療システムを支えていると思っていましたから、救急患者さんが7つの病院で受付を拒否されたと聞き、そんな馬鹿な、それって実際に日本で起ったことなの? とダンナさんに問いただしたほどです。
一体"赤ひげ"先生はどこに行ってしまったのでしょう。日本のお医者さんもアメリカナイズされ、高給取りのサラリーマン化してきたのでしょうか。最終的に脳内出血の妊婦さんを受け入れ、手術し、結果的に母親を死なせてしまった(赤ちゃんは無事でしたが)東京都立墨東病院よりも、受け入れを拒否した他の病院の方が罪が重いと思います。
しかし、世界の最高水準の医療施設を持っているはずの東京でどうしてそんなコトが起こるのでしょうか? 離村の話ではないのです。産婦人科のお医者さんが少ない、なり手がいない、というのは全く言い訳にもなっていません。第一、人口の減少が大問題になるのが分っていたのですから、赤ちゃんを安心して生み、育てることができる医療保険システムを30年前につくるべきでした。今からでも遅くはありません。
今年の8月に奈良で18ヵ所の病院をタライ回しにされた妊婦さんが亡くなる事件があったことを見つけました。何か縁起の良い数字の8が多いので、病院88ヵ所巡りという企画でもしているのかと疑いたくなります。
アメリカで入院、診察を断られ、病院の玄関の外で死ぬ人がちょいちょいいます。タテマエとしては、救急患者を受け付ける義務が病院にはあります。
アンバーさんはバレーボールの最中に足の骨を折り、テキサス州・ダラスのパークランド記念病院の救急患者受付口に運ばれました。そこで彼女はなんと19時間待たされた末、幸い彼女はカイロプラクター修業中の学生さんで、自分の骨の状況を判断できたので、やってられないとばかり自宅へ引き返してしまいます。ところが数日後、彼女の元に病院から請求書が送られていて、急患受付事務手数料として162ドル支払えと言ってきたのだそうです。
アンバーさんの事件の数日前には、58歳の男性がやはり同じ病院で19時間待たされ、心不全で亡くなっています。
アメリカで保険を持っていない患者、クレジットカードを持っていない患者は、常に後回しになることは多くの病院自ら認めています。アンバーさんも亡くなった58歳の男性も保険を持っていませんでした。そしてアメリカで19歳から29歳までの人の30%が健康保険を持っていないのです。
ディーンは私の友達です。在りし日のジェイムス・ディーンとは似ても似つかない89歳のおじいさんですが、とても元気で知的好奇心の強い人です。ディーンおじいさんは、今私が勤めている大学で18歳から20歳の若者と一緒に授業を取っています。誰でも歳を取ったらディーンおじいさんのような老人になりたいと思わずにはいられないでしょう。それほど明るく行動的なのです。
ディーンおじいさんにそんな健康、長生きの秘訣は何ですかと聞いたところ、彼の答えは簡単明瞭で、ただ一言、「医者に近づくな!」(Stay
away from Doctor!)と言ったのです。
第85回:歴史的瞬間