■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)



中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。




第1回~第50回まで

第51回:スポーツ・イベントの宣伝効果
第52回:国家の品格 その1
第53回:国家の品格 その2
第54回:国家の品格 その3
第55回:国家の品格 その4
第56回:人はいかに死ぬのか
第57回:人はいかに死ぬのか~その2
第58回:ガンをつける
第59回:死んでいく言語
第60回:アメリカの貧富の差
第61回:アメリカの母の日
第62回:アメリカの卒業式
第63回:ミャンマーと日本は同類項?
第64回:ミャンマーと民主主義の輸入
第65回:日本赤毛布旅行
第66回:日本赤毛布旅行 その2
第67回:日本赤毛布旅行 その3
第68回:スポーツ・ファッション
第69回:スペリング・ビー(Spelling Bee)
第70回:宗教大国アメリカ
第71回:独立記念日と打ち上げ花火
第72回:ティーンエイジャーのベビーブーム
第73回:アメリカで一番有名な日本人
第77回:ロパクってなんのこと?
第78回:派手な政治ショーと選挙
第79回:「蟠桃賞」をご存知ですか?
第80回:日本の国際化と国際化した日本人
第81回:またまた大統領選挙
第82回:またまた大統領選挙 その2
第83回:勝海舟と700,000,000,000ドル


■更新予定日:毎週木曜日

第84回:長生きをする秘訣は?

更新日2008/10/30


アメリカでは昨年誤診で238,337人の人が亡くなりました。この数字はHealth day Newsという、信頼できる医療専門誌が調べた統計です。現代医療のおかげで命拾いをした人の数を知らずに、この238,337人が多いのか少ないのか、そのくらいのリスクは医療に常につきものなのか分りません。でも数字だけで見ると、24万人近くの人といえば、私の住んでいる町の人口の2倍なので、そんなに多くの人が医療ミスで亡くなっているのはショックです。

たとえ 医療ミス、誤診の可能性があっても、治療を受けることができるのならまだ救われますが、今回日本で起った妊産婦さんのタライ回し事件には驚きました。日本の医療システムは世界に誇ってもよい優れたもので、『医は仁』と言うように、モラルの高いたくさんのお医者さんが医療システムを支えていると思っていましたから、救急患者さんが7つの病院で受付を拒否されたと聞き、そんな馬鹿な、それって実際に日本で起ったことなの? とダンナさんに問いただしたほどです。 

一体"赤ひげ"先生はどこに行ってしまったのでしょう。日本のお医者さんもアメリカナイズされ、高給取りのサラリーマン化してきたのでしょうか。最終的に脳内出血の妊婦さんを受け入れ、手術し、結果的に母親を死なせてしまった(赤ちゃんは無事でしたが)東京都立墨東病院よりも、受け入れを拒否した他の病院の方が罪が重いと思います。

しかし、世界の最高水準の医療施設を持っているはずの東京でどうしてそんなコトが起こるのでしょうか? 離村の話ではないのです。産婦人科のお医者さんが少ない、なり手がいない、というのは全く言い訳にもなっていません。第一、人口の減少が大問題になるのが分っていたのですから、赤ちゃんを安心して生み、育てることができる医療保険システムを30年前につくるべきでした。今からでも遅くはありません。

今年の8月に奈良で18ヵ所の病院をタライ回しにされた妊婦さんが亡くなる事件があったことを見つけました。何か縁起の良い数字の8が多いので、病院88ヵ所巡りという企画でもしているのかと疑いたくなります。

アメリカで入院、診察を断られ、病院の玄関の外で死ぬ人がちょいちょいいます。タテマエとしては、救急患者を受け付ける義務が病院にはあります。

アンバーさんはバレーボールの最中に足の骨を折り、テキサス州・ダラスのパークランド記念病院の救急患者受付口に運ばれました。そこで彼女はなんと19時間待たされた末、幸い彼女はカイロプラクター修業中の学生さんで、自分の骨の状況を判断できたので、やってられないとばかり自宅へ引き返してしまいます。ところが数日後、彼女の元に病院から請求書が送られていて、急患受付事務手数料として162ドル支払えと言ってきたのだそうです。

アンバーさんの事件の数日前には、58歳の男性がやはり同じ病院で19時間待たされ、心不全で亡くなっています。

アメリカで保険を持っていない患者、クレジットカードを持っていない患者は、常に後回しになることは多くの病院自ら認めています。アンバーさんも亡くなった58歳の男性も保険を持っていませんでした。そしてアメリカで19歳から29歳までの人の30%が健康保険を持っていないのです。

ディーンは私の友達です。在りし日のジェイムス・ディーンとは似ても似つかない89歳のおじいさんですが、とても元気で知的好奇心の強い人です。ディーンおじいさんは、今私が勤めている大学で18歳から20歳の若者と一緒に授業を取っています。誰でも歳を取ったらディーンおじいさんのような老人になりたいと思わずにはいられないでしょう。それほど明るく行動的なのです。

ディーンおじいさんにそんな健康、長生きの秘訣は何ですかと聞いたところ、彼の答えは簡単明瞭で、ただ一言、「医者に近づくな!」(Stay away from Doctor!)と言ったのです。

 

 

第85回:歴史的瞬間