■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)



中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。




第1回~第50回まで

第51回:スポーツ・イベントの宣伝効果
第52回:国家の品格 その1
第53回:国家の品格 その2
第54回:国家の品格 その3
第55回:国家の品格 その4
第56回:人はいかに死ぬのか
第57回:人はいかに死ぬのか~その2
第58回:ガンをつける
第59回:死んでいく言語
第60回:アメリカの貧富の差
第61回:アメリカの母の日
第62回:アメリカの卒業式
第63回:ミャンマーと日本は同類項?
第64回:ミャンマーと民主主義の輸入
第65回:日本赤毛布旅行
第66回:日本赤毛布旅行 その2
第67回:日本赤毛布旅行 その3
第68回:スポーツ・ファッション
第69回:スペリング・ビー(Spelling Bee)
第70回:宗教大国アメリカ
第71回:独立記念日と打ち上げ花火
第72回:ティーンエイジャーのベビーブーム
第73回:アメリカで一番有名な日本人
第77回:ロパクってなんのこと?
第78回:派手な政治ショーと選挙
第79回:「蟠桃賞」をご存知ですか?


■更新予定日:毎週木曜日

第80回:日本の国際化と国際化した日本人

更新日2008/10/02


日本人が国際的にあらゆる分野で活躍していることは、いまさら述べる必要もないでしょう。 エッ? こんな分野にも日本人がいたのかと、感心し半ばあきれたことは珍しくありません。

スイスのヨーデル大会では、伊藤啓子さんが非公式参加ですが、最大級の評価を受けました。残念ながら本出場はスイス人に限られているので優勝とはいきませんでしたが、"スイス人"という枠がなければ優勝した可能性が大きいとまで言われています。

近い将来、マサイ族やナバホインディアンの戦士の踊り、スコットランドの丸太投げ競技、オランダの運河棒幅飛びに日本人が出場する日がくるかもしれませんね*

日本は自己の文化に伝統の重みがあり、誇りを持っているのでしょうか、外国人に対して閉鎖的だと言われています。歌舞伎や能、狂言、雅楽の世界は日本人にとっても一種特別なところで、世襲制で伝統が守られており、一般の日本人ですら外から入るのが難しい世界のようです。

力の差、勝ち負けがはっきりしているスポーツや勝負の世界では早くから外国人が活躍しています。今年のアマ本因坊になった洪マルグンセンさんは韓国人ですし、囲碁では中国人、韓国人が昔から上位に名前を並べています。

ソムリエコンテストで毎回のように日本人が入賞しており、あまり大きなニュースにさえなりません。逆に、今年、お酒、日本酒を醸造する側のコンテスト、新酒鑑評会から杜氏(トウジ)金賞を貰ったのはイギリスの男性、フィリップ・ハーバーさんでした。

フィリップ・ハーバーさんはオックスフォード大学出といいますから、丁稚奉公で蔵元に入るにはあまりに歳を取りすぎていたでしょうし、インテリの部類に入れてもいいでしょう。何でも1988年に来日し、大阪で英語の先生をしていたところ、日本酒に惹かれ、普通ならお酒好きな外人、奇妙に日本酒に詳しい何千人といる呑み助の外人で終わるところ、上下関係にとても煩い、いまだに徒弟関係が残る蔵人なり、お酒造りのイロハを学び、岩手県南部で杜氏の資格を取得しました。

その後、木下酒造に入社し、通常、雑味タンパクを除くため、お米を35%程度に抑えるところ、50%のお米を使った大吟醸酒を造り、お米のうまみをしっかりと出したのが評価され、金賞につながったそうです。

フィリップさんの受賞の言葉も、「皆さんのおかげです」と、これ以上日本的な言いようがないくらい日本的で泣かせます。

今度日本に行く時、是非フィリップさんの大吟醸酒を味わいたいものです。

日本では日本酒離れが進んでいるといいます。カロリー、糖質の少ない焼酎、ファッショナブルなワインが日本酒を追い詰めているようです。ですが、日本の風土が育んできた日本酒の美味しさは特別なものです。朝晩の冷えるこれからの季節、お鍋物に日本酒は最高の組み合わせです。考えただけで生唾が湧いてきます。

人気下降気味の日本酒の美味しさを知ってもらおうと、長谷川酒店が全国の銘柄330点を集め、お酒の品評会を開いたり、日本酒造組合も全国利き酒選手権を催したりしています。この利き酒大会は地方予選を勝ちあがってきたツワモノ72人が7種類のお酒の銘柄を当てるやりかたで行われ、全銘柄を当て、完全試合で優勝したのは静岡県の女性、松永安代さんでした。蔵元は女人禁制の世界ですから、松永さんは男どもに、「アナタ造る人、私呑む人」とでも言ったのかしら。

日本文化の国際化の話がお酒談義になってしまいました。どうにも書いているだけで酔いが回ってきたようです。

 

*編集部注:TV番組「世界ウルルン滞在記2008」8月3日放送分で運河棒幅飛び「フィーエンヤッペン」に挑戦する日本人を発見済み。

 

 

第81回:またまた大統領選挙