■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)



中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。




第1回~第50回まで

第51回:スポーツ・イベントの宣伝効果
第52回:国家の品格 その1
第53回:国家の品格 その2
第54回:国家の品格 その3
第55回:国家の品格 その4
第56回:人はいかに死ぬのか
第57回:人はいかに死ぬのか~その2
第58回:ガンをつける
第59回:死んでいく言語
第60回:アメリカの貧富の差
第61回:アメリカの母の日
第62回:アメリカの卒業式
第63回:ミャンマーと日本は同類項?
第64回:ミャンマーと民主主義の輸入
第65回:日本赤毛布旅行
第66回:日本赤毛布旅行 その2
第67回:日本赤毛布旅行 その3
第68回:スポーツ・ファッション
第69回:スペリング・ビー(Spelling Bee)
第70回:宗教大国アメリカ


■更新予定日:毎週木曜日

第71回:独立記念日と打ち上げ花火

更新日2008/07/31


小学校から大学まで、夏休みに入って一ヶ月以上経ちました。アメリカの独立記念日はちょうど夏休みのピークの日、折り返し日に当たる7月4日です。今年は金曜日だったので働いている人も3連休になりました。アメリカではヨーロッパの国々のように皆が皆一ヶ月の夏休みを取れませんから、夏のたった三日の連休でもとても大きな夏休みです。

独立記念日には花火とスイカ、バーベキューが付き物です。花火はどんな田舎町でも打ち上げられますが、なんと言っても有名なのは首都ワシントンでのものでしょう。テレビで全国中継され、有名なスターが司会をし、盛大な野外コンサートが開かれるのもこの日です。

私たちの住むコロラドの田舎町でも、恒例の花火大会が行われました。小さな谷間の町ですから、町の中心にあるアメリカン・フットボールのスタジアムで打ち上げられる花火は、町のどこからでもよく見ることができます。スケールは……言わぬが花火? ということにしておきましょうか。隅田川の何十分の一といったところですが、町の人はキャンバスチェアを庭に持ち出し、よく冷えたスイカを食べながら花火を楽しみます。

独立記念日は花火を見るだけでなく、自分でも市販の花火を打ち上げます。街道筋やスーパーの駐車場に大きなテントが張られ、花火即売場になります。州によって花火の種類に規制があり、規制のゆるい州まで買出しに出かけるマニアもたくさんいます。

中西部ではワイオミング州が規制がゆるく(規制がないと言っている人もいますが…)、コロラド州やユタ州から州境を越えて花火買出しドライブに行っています。州境を越えワイオミング州に入るなり、ハイウエーの両側は花火屋さんがズラリと並んでいる有り様なのです。

今年は例年より気温が上がり、雨らしい雨が3ヶ月も降っておらず、湿度が4~6パーセントまで下がり、この町の界隈にも、小さな規模ですが野火や山火事がたくさん発生し、ノー・バーン・デイ(野外でモノを燃やすことを禁止する日)が続いています。もちろん個人での花火も禁止です。バーベキューもガスのコンロタイプだけは許されますが、野外で薪を燃やしたり炭をおこすのは禁止になってしまいました。

湿度5パーセントの日が続くと、何もかもがカラカラに乾き切り、芝刈り機で雑草を刈っていたところ、芝刈り機の回転している鉄の刃が石に当り、目に見えない火花が散り、雑草に引火したほどです。

花火禁止令のおかげで、せっかく買った花火を打ち上げることができなくなったのです。郡ではあくまで花火禁止令を敷いたままですが、この町の消防士さんたちが苦慮した結果、7月4日の夜、町の中でだけという条件付で花火を許可したのです。子供たちがせっかく買った花火を打ち上げられるよう、その日はボランティアを含めた消防士さん総出でスタンバイすることにしたのです。

こうして独立記念日の夜は、花火大会の後も近所で打ち上げる自家製の花火大会がそこここで行われ、夜遅くまで戦場にいるようなパンパンという音が響き渡ったのでした。

 

 

第72回:ティーンエイジャーのベビーブーム