第70回:宗教大国アメリカ
更新日2008/07/24
日本で初詣に出かける人は、8,300万人もいるほどですから、やはり日本は神道の国だと思っていました。結婚式も神社でするし、それでなければホテルや結婚式場に神主、巫女さんが出張してきて神式でやるし、日本人と神道イズムは切っても切れないものがある……と思っていたのです。ところが、神道で結婚した当人が死ぬとき(死んだとき)は仏教でお葬式を挙げることが当たり前なのを見て、おやこれは変だと気づき始めました。
仏教と神道には勢力分けができているようで、神道は結婚式、工事、建築などの起工式の祈願などを受け持ち、仏教はもっぱらお葬式になっているようです。仏前結婚をした人が、神道のお葬式をするというのはあまりないようですし、起工式にお坊さんが出てきたら縁起が悪いと追い返されそうです。
安全を祈ってビルや橋、トンネルの起工式を神道で行い、その工事で死人が出ても、神主さんのお祈りの仕方が悪いと言って責められることもなく、神主さんがそのお葬式を司ることもなさそうです。
日本の宗教の統計をみると、伝統的な儀式として参加する人を含めると、信者の数が日本の全人口のなんと倍以上になり、つまり一人当たりニつ以上の宗教を持っているという奇妙なことになります。
芥川龍之介が、『神々の微笑』の中で書いたように、どんな宗教も一旦日本に入ると日本化され、日本古来の神様たちと同列に並べれらてしまうようです。外から見ると「日本教」とでも呼ぶより他に言い表しようのない現象です。
アメリカで信仰に関する大掛かりな調査が行われ、その結果が出ました(Pew
Forum U.S. Religious Landscape Survey)。35,000人をランダムに抽出しているので、広く浅くアメリカ人の宗教観の全体を掴むことができると思います。
92%のアメリカ人は神様を信じており、74%が死後の世界、天国と地獄があると信じているというのです。これには驚きました。歴史上でもこれだけ宗教的な国の存在は珍しいでしょう。
私の親の代は、皆毎週日曜日に協会へ行っていましたが、今、私たちの世代から教会離れが始まり、指折り数えてみると、私の兄弟、従弟で教会に行っているのは4分の1に減っています。ところがこの調査結果では全く逆で、10人のうち9人以上が神様を信じているというのです。私の家族、親戚、友人以外は100%近く信心深い人々なのかしら。それともあまり表に現さない隠れキリシタンが多いのではないか? と疑いが湧いてくるような数値です。
70%が他の宗派と信仰を分かち合えると言っており、それに加えて68%が信仰上の真実は、彼らが信じているそれ一つだけのものではなく、ほかにも存在するとしていることは救いでした。自分が理解できない事柄に対して、とても非寛容なのがアメリカ人の特徴だと思っていましたから、他人の信仰をも認めるという調査結果が出たのは喜ばしいことです。でも、わが信仰だけが、唯一真実の道と言っているガチガチの信者は14%いますが…。
これだけ信心深い人がたくさん住んでいる国が、なぜやたらと戦争をしたがり、国内でもむやみに殺人が多いのかは大きな謎ですが…。
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