第242回:アメリカ式年末宝くじ
あけまして おめでとうございます。
今年も、暇な折々、「のらり」を開いて読んでもらえるととてもうれしいです。
年の初めですから、おめでたい宝くじの話にしました。読者の方でジャンボ宝くじを当てた人……はまさかいないとは思いますが。
暇な経済学者が、"宝くじ"は最悪の経済投資だと、物々しい数字を挙げて述べています。彼によると、カジノのルーレットやブラックジャック、ポーカーよりも勝つ確率は低く、競馬よりもさらに可能性がない……そうです。
そんな声をよそに、11月28日、コネチカット州のロテリーで254.2ミリオンドル(約203億円)の当たりくじが出ました。申し出たのはお金持ち相手の投資コンサルタントで、財産管理会社を経営しているティム、グレグ、ブランドンの3人組でした。
ところが3人がそんな仕事をしており、本人たちがスーパーリッチであるところから、誰か第4の人間が当たり、それを彼らの財産管理会社に持ち込んだのではないかとの憶測が飛び交い、テレビ局やパパラッティー的なゴシップ新聞が第4の、本当の当選者を探そうと躍起になっています。
今まで、アメリカで宝くじの最高支払金額は365ミリオンドル(約292億円)ですから、日本の年末ジャンボ3億円がなんだか、日本的にミミッチク見えます。
アメリカの宝くじは、独立戦争の時の財源確保のために大々的に売り出さていますから、宝くじは政府が庶民、とりわけ貧乏な人からお金を集める有効な手段だったようです。そういえばハーバード大学でさえも財政難の時に宝くじを売り出しています。
昨年、アメリカでの宝くじ総売上は588兆ドルにも及びました。宝くじは不景気になればなるほど売り上げが伸びる結構なショーバイのようです。販売店の経費など、すべてを差し引いた純利益が180兆ドルもあったのですから、こんなに儲かるショーバイはめったにあるものではありません。ギャンブルで儲ける唯一の方法は、胴元、親になることだと言われますが、まさにその鉄則を地で行っています。
大昔、スペインに住んでいた時、クリスマス前になると、誰も彼も、例外なしにロテリア・デ・ナヴィダー(クリスマス宝くじ)に大騒ぎするのに呆れたことがあります。それはもう、クリスマス特別宝くじの券を手にせず、12月を迎えることなど許されない感じなのです。
しかも、自分で1枚買い、それを後生大事に持っているというのではなく、会社ぐるみ、親戚一同、友達仲間で共同で買ったり、権利をシェアしたり、お歳暮として贈ったりで、それはそれは賑やかに、一人で10枚から20枚くらいの宝くじ(または番号の権利)を持っている人も珍しくありません。大切な年中行事になっているのです。
いくら経済学者がもっともな数字を挙げて証明しようが、政府が貧乏人からお金を巻き上げているだけだとか言う人がいても、現実として、宝くじには誰かが毎年当たっているという事実がある以上、人気は衰えないでしょうね。
それは貧乏な人に夢を売っているようなものなので、ビル・ゲイツやワーレン・ビュフェット、テッド・ターナーは宝くじを買わないでしょうけど、ナケナシのお金を宝くじにつぎ込むのは決まって貧乏な人々です。
経済学者は貧乏な人々の心理がまるで分かっていないのでしょう。貧乏心理経済学という分野もないでしょうしね。
ほとんど貧乏人のカテゴリーに入る私も、今年は2、3ドル、宝くじを買ってみようかしら。そして、万が一でも当たったら、すぐに引退して……こんなコラムを書くのを辞めて……などと思い巡らすあたり、やはり私は、立派な貧乏人の心理を持っているのでしょうね。
第243回:コンビニとガソリンスタンド
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