のらり 大好評連載中   
 
■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第204回:日本女性の地位と男女同権

更新日2011/04/07

統計はどうしてそんな数字が出てきたのか、どのようなデーターを基にして計算されたものかを理解する前に、目に訴える力があるようです。

世界ランキング何位と言われると、なるほどと信じてしまいます。スポーツのように勝敗がはっきりと出ないはずの意識調査まで、あそこは遅れている、進んでいる、全国で何位だと言い切ってしまうジャーナリズムは、統計の曖昧さを知りながら、読者に訴える簡略さを取っているのでしょうね。

世界経済フォーラム(The World Economic Forum)が"性別による差別係数"と訳してみましたが「Global Gender Gap Index」を発表しました。恐らく日本のジャーナリズムでもすでに取り上げていることでしょう。

この係数は、
1.女性が経済に関与する、もしくは関与できる機会の平等
管理職、高度な技術者に就ける機会、同じ仕事をしている男性とのサラリーの平等
2.女性が初等教育から高等教育を受けることができる男女平等
3.健康管理の男女平等
4.政治に関わる際の男女平等

の四つの観点から弾き出したそうです。

具体的にどのようなプロセスやデーターを入力し、どのように計算したのか探って見ましたが結局分りませんでした。

一応の目安、凡そどこの国で男女同権が進み、どこの国でまだ酷いことになっているかの見当をつける??……程度に気楽に取ってもよいようなランキングでしょう。

想像通り、北欧の国々が上位を占め(トップはアイスランドですが)5位にニュージーランド、6位にアイルランド共和国などが連なっています。アフリカのレソトが8位、フィリピンが9位で、スイス、ドイツ、イギリスより男女同権が進んでいるとの結果は意外でした。

同じ仕事をこなしている男女間の給料の差は、幾ら機会平等が進んでいる北欧でも歴然と存在しています。

そして日本ですが、なんと134ヵ国中94位、中国の61位よりはるかに下なのです。 

この調査のチェックポイント、2.の日本女性の高等教育の高さは世界トップクラスで、大学の就学率はひ弱な日本男児を蹴落とす勢いです。

3.の健康管理、出産時の母親死亡率なども世界でトップクラスなのは日本女性の平均寿命が10歳近くも男性より長いことで証明されています。

どうも、1.の社会、経済界でどれだけ女性が男性と同じチャンスを持ち、管理職に就き、給料も男性と同じ…というところに絶壁のような壁があり、大幅なマイナス点になっているのでしょう。 

イギリス、ドイツ、アメリカで管理職に就いている女性は40%ですが、日本ではなんと9%にすぎません。

アメリカの経済を牛耳っている強大なゴールドマン・サックスは、もし教育レベルの高い日本女性が実業界で働き出すなら、日本の国民総生産は15%はアップするだろうと言っています。

言ってみれば、日本女性は世界でまれに見るほどの高い教育を受けながら、現場の仕事でそれを生かすことができず、眠らせているのです。30歳まで第一線で仕事をしている日本女性は、男性に比べ、絶望的なくらい少ないことでしょうね。

日本は伝統的に源氏物語の時代から、専業主婦?とは言いませんが、女性が文化の大きな部分を担ってきました。外で働いてくれるダンナさんがいる限り、女性たる者、俗な金銭に煩わされることなく、ゲイジュツに没頭できたのでしょうか。

今でも驚くほどたくさんの日本の奥さんたちが、社会、経済活動に関わらず、主婦業、母親業だけで生きているのはショッキングなほどです。中にはとても優れた女性も多く、主婦業に埋没しているのはモッタイナイと感じさせられます。

アメリカの専業主婦がカウチポテトになり、巨大に肥満していくのに比べ、日本の主婦の方が趣味の世界やボランティアに打ち込んでいるように見えます。その中から、現代の紫式部や清少納言が育ってくるのかもしれませんね。

でも、日本の政治がダメで継続性に欠けるのは、女性が関わっていないからではないかと思えるのです。男どもの同窓会のような政党や派閥政治を打ち砕くのは女性の仕事だと思うのです。 

政治は男に任せておくものではありません。と、日本の男女平等が悲惨なほど遅れていることに憤慨し、私に似合わない女権論を書いてしまいました。

 

 

第205回:本当に"原子力発電所"は必要なのか?

このコラムの感想を書く

 


Grace Joy
(グレース・ジョイ)
著者にメールを送る

中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

■連載完了コラム■
■グレートプレーンズのそよ風■
~アメリカ中西部今昔物語
[全28回]


バックナンバー

第1回~第50回まで
第51回~第100回まで
第100回~第150回まで
第151回~第200回まで

第201回:天災の国
第202回:多文化主義の敗北…?
第203回:現代の三種の神器

■更新予定日:毎週木曜日