第230回:花の命は短くて……
日本でお花見を体験したことがあります。何よりも驚いたのは、"花より団子、団子よりお酒"の野外での宴会騒ぎでした。桜の木の下で飲むお酒は格別なんでしょうね。
桜前線なるものが存在し、お天気予報士さんも今日はどの地方で、八部咲き、どこそこで満開とニュースで知らせ、それに合わせ、桜の名所では、陣取り合戦が始まるのにもビックリしました。
本当に、桜はパット咲き、すぐに散ってしまうんですね。
そんな話をウチの老齢、仙人にしていたところ、「花の命は短くて……」とか「命短し恋せよ乙女……」と、若い世代の人なら誰も絶対に知らない歌を唸り出しました。
日本で、命の短いもの、はかない命に対し、とりわけ愛惜の情が強いのでしょうか、命は短いのをヨシとしているのでしょうか、またまた総理大臣が野田さんに変わりましたね。今では、余程の日本通でもない限り、"野田さん"の名前を知っている外国人は少ないでしょう。
オバマ大統領との会談も35分間でしたから、間に通訳が入っていることを考慮に入れると、正味12-3分というところでしょうか。これでは、とても会談と呼べるものではなく、顔見せ、名刺交換と言うべきでしょう。それにしても、大きな国同士、経済大国同士の会談としては異常に短いものでした。この会談で、やっと野田さんの名前がマスコミに登場したくらいです。
いっそのこと、スイスのように、日本の総理大臣も期限を一年として持ち回り制のようにした方が、すっきりするのではないかと思ったりします。
期間を意地悪く区切ると、5年間に6人の総理大臣は多すぎます。ところが、古いことに馬鹿に詳しいウチの仙人によれば、14年間に13人…という例が、なんと日本にあるというのです。
1931年の9月18日から終戦の1945年の8月15日までの間に、13人もの総理大臣が軍の圧力に負けたり、傀儡のような人が政権を握ったりしたそうですが、ご存知でしたか?
政府が混乱しているのに乗じて、故意に政府を混乱させ、軍部が力を握っていった……とは、ウチの仙人の解説です。
日本の軍国主義国家も、ヒットラーが率いたナチスの政権も、初めは"民主主義的選挙"で勝利し、政権を握ったのですから、民主主義的選挙で国のトップを選ぶというヤリカタもかなり危うく、危険を孕んでいると言えます。
政治に疎い私ですが、選挙は投票を済ますと終わるのではなく、自分が支持した政党、選んだ大統領に対して、引き続き責任を負っていくものではないのかしら。あの人、あの政党が、自分が期待した通りに動いてくれないから、"×"を付け、首をすげ替える前に、なぜ自分の支持した政党、大統領に抱いていた期待が裏切られたのか、自分の判断を狂わせたモノはなんであったのか、どうして自分がその政党、元首に投票したのか、反省してみる必要があるのではないかと……思うのです。
少し皮肉に見れば、恒例になった日本の超短命内閣、総理の首のすげ替えは、花の命のように短いのを尊ぶ日本人自身がそれを望んでいるからだ……と言えなくもありません。
めったにしない、こんな政治論議をウチの仙人としていたら、彼、またもや異常な記憶力を発揮して、古い雑誌『文芸春秋』を引っ張り出してきて、井上ひさしさんの記事を読んでくれました。
「過去ときちんと向き合うと未来が見えてくる。いつまでも過去を軽んじていると、未来からも軽んじられる」とありました。
第二次世界大戦前の超短命内閣の連続が、日本をどのような状態に陥れたかを思い起こしてみるのも、無駄ではないでしょうね。
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