第212回:海外からの義援金
義援金そのものは、とてもありがたいですけど、ボランティア活動、義援金集めに奔走した人たちの行動も尊いものです。
数年前、アメリカの北西部が大洪水になったことがあります。その時、世界でも最も貧しい国の一つ、バングラディッシュから砂や土を入れるジュートの袋が数千枚送られてきました。その袋に土を詰め、リレーで運び、土嚢で防水提を築いた人たちは、バングラディッシュのことを生涯忘れないでしょう。
私の大学でも、日本語の生徒さんや日本人留学生が中心になって、東日本大震災のための募金活動を繰り広げています。
日本の外務省が4月17日に発表した統計によりますと、スーダンから800万円相当、ルワンダからからも800万円相当の義援金が送られてきたそうです。現在も紛争の絶えない国の人々が、自分の国に飢えた人をたくさん抱えているのに、遠い日本のために何か手助けになることはないかと、ナケナシのお金を送ってくれているのです。エリトリアからも400万円、タンザニアからも140万円相当が届いているそうです。
世界中のスポーツ選手、芸能人、企業家が売名行為とは全く関係なく、ただ東北の人たちに何かしてあげたいという気持ちから寄付をしています。巨額なお金をポンと出す人から、ささやかな金額を知られないように出す人までいますが、彼らが大きな人間の環を形造り、その一つのリンクになっていることは間違いありません。
しかし、いくら民間の慈善事業、寄付金はとても貴重ですが、政府が動かせるお金と力は比較になりません。こんな時こそ政府の持つ統率力が試されているのでしょうね。日本政府は建て直しの増税を検討するより先に、義援金に対し、大幅な税金の控除をするのが先決でしょうね。
これから深刻さを増してくる原発の被害を含めずに、地震、津波の被害総額は23兆5000億円を超えると見られています。これに原発の計り知れない被害が加わるわけですから、日本が立ち直るのに20年はかかるだろう……という経済学者が現れても不思議ではありません。
「Chronicle Philanthropy」の統計を見ていて気が付いたのですが、日本での災害、神戸大震災、そして今回の東日本の大震災で、被害総額が非常に大きい割りに世界各国から義援金がとても少ないことです。
神戸大震災の被害は10兆円でしたが、世界から寄せられた義援金はたったの14億円です。これをインドネシア、インド、タイの津波の時に比べて見ると一層はっきりします。 このときの被害は1.5兆円と見られていますが、外国から集まったお金は6800億になりました。
最近のハイチ地震の被害総額は1.4兆円相当ですが、それに対し4800億円ものお金が外国から集まりました。
アメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナの時ですら、3400億円も外国から送られてきています。それに比べ、今回の被害総額は史上最高の23.5兆円にもなるのに、国外からの義援金は704億円に過ぎないのです(3月31日まで)。ですから、ハリケーン・カトリーナは東日本大地震、津波の被害で3分の1ですが、海外からの義援金は5倍を得ていることになります。
ここで、今まで日本政府がいかに外国にお金を出してきたかを、述べることは控えますが、今回のような、異常事態にあっては、日本政府もメンツを捨てて、「お前たち、もっとお金を出せ」と、外国に訴えてもいいのではないかしら。
これが、中近東の国々、西欧の国なら、いまさら共産化を防ぐために……とは言わないでしょうけど、世界平和の均衡を保つには、とか、北朝鮮の脅威の前に一日も早く備えなければ、あるいは死の灰がお前の国に降り注ぐ前に、とか半ば脅かすようにしてIMFや他の国にお金を出させるでしょうね。
どうも、日本はとてもよく組織された、自力で復帰できる国、他からの手助けなんか必要のない国に分類されているようなのです。
こんな時にはとても損なイメージを看板にしているのです。
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