第641回:年頭から暗い話題ですが…
明けましておめでとうございます。
コロラドの山から、新年のお喜びを申し上げます。
日本の年越しとお正月を懐かしみを込めて思い出しています。
新年早々、こちらアメリカには明るい話題が少なく、今年もまた引き続き行われる大統領の弾劾裁判、それから目を逸らせるためでしょうか、いきなりイランの革命防衛隊司令官の殺害、毎週のように起こる大量殺人、パワハラ、セクハラ事件とクラ~イ話題が続きそうです。
それならいっそのこと、最悪の話題で新年を始めてやれ…と、これより悪いことは起こりようがないという気持ちになり、FBIの殺人未解決事件のサイトを覗いてみました。
銃の乱射などの大量殺人、殺戮は4人以上死ぬと、そのカテゴリーに入ることを始めて知りました。たとえば3人殺され50人重軽傷でも大量殺人とは呼ばないことのようです。また、連続殺人事件は、同一犯人が時間を置いて、二人以上殺した場合にだけ当てはまります。言葉の定義というのは、どこかに基準を設けなければなりませんが、大量殺人と連続殺人にこんな定義があるとは想像していませんでした。
それはまだ良いのですが、1980年から現在まで未解決の殺人事件が22万件もあり、ということは22万の殺人犯がチマタをうろついていることになります。アメリカの逮捕率が低いことは世に知れ渡っていますが、それにしてもなんと多くの殺人鬼が放置されているのでしょう。
その中に、3,000件の連続殺人事件が含まれており、1万人が殺されているのです。中には、世間の注目を集めたいばかりに殺人を繰り返す御仁もいます。デニス・レイダー(Dennis Rader)はカンサス州で10人以上の殺人を犯しましたが、テレビ局に手紙を書き、「一体全体、何人殺せば全米のマスコミ、テレビのモーニングショー、全国紙が取り上げてくれるのだ!」と、とんでもない愚痴をこぼしています。
さて、ギネスブックものの最多連続殺人はサミュエル・リトル(Samuel Little)の93人でしょうか、しかしこれも、彼がやったと警察が確定できた数字で、彼自身は200人は殺したと言っています。1970年から終身刑を受けた2005年まで、35年間次々と殺人を犯し、それでいて捕まらなかったのですから(捕まってもすぐに釈放されたり、極短い刑期で出所しています)、お巡りさん、FBIは一体何をやっていたのと言いたくもなります。これだけ人を殺していながら、死刑にならなかったのは、アメリカ独特の司法取引で、彼がすべてを告白したからです。
殺した数なら、俺の方が多いぞというのはロバート・デイル・セギィー(Robert Dale Segee) で、彼は放火で大量に人を殺しています。今までに判明しただけで168人です。
2017年だけですが、殺人の逮捕率は61%で、未だに逃げている犯人は3,000人から4,000人と言われています。これ1年間だけですよ…。
ところが、12歳の少女が中学校内で、手の平でピストルを撃つジェスチャーをしたところ、学校側が警察に連絡し、彼女を逮捕し、後ろ手錠で連行しているのです。彼女は1年間の青少年鑑別所に入れられる刑に直面しています。これはカンサス州でのことです。
またフロリダ州の中学校では、11歳の少女が退学になりました。というのは、彼女がバターナイフを使って桃を切った罪です。彼女はその桃を半分にして友達にあげようとしたのですが、学校の規則でバター以外の他のモノに使ってはいけないことになっており、そのバターナイフは刃の入っていない、りんごの皮も剥けないものであったにしろ、「武器使用禁規則違反」になるというのです。
他の州のことばかり言ってはいられません。我がコロラド州でも、子供の弁当箱にお母さんが気を利かせて食卓で使うナイフとフォークを持たせてやったところ、フォークはいいけど、ナイフ(刃の付いていないテーブルナイフですよ)は、武器になりうる危険な凶器とみなされ、それを学校に持ち込んだとして、警察に連行されています。
彼女自身、ナイフ、フォークが弁当箱に入っているとは知らなかったのですが…。幸い何日かの停学処分で学校に戻ることができました。その時、その少女は、「知らなかったにしろ、テーブルナイフを学校に持ち込んだのは校則に反することでした。それに対し、先生が取った態度、警察に連絡したことは、義務の一つだから、当然の処置だったと思います。私は先生に対して、すこしも恨みは持っていません」と、まるでどちらが大人、教育者だか分からない、立派な態度を取っています。
こんな学校内での取るに足りない小さな事件で泣かされている子供たちはたくさんいるでしょう。学校側、生活指導の先生、警察を呼んだ校長先生の方こそ、精神鑑定を受けるべきです。これらの事件とも呼べない茶飯事は、その子を職員室、校長室に呼び、チョット説教をすれば済むことです。
第一に野放しなっているピストル、ライフル、自動小銃、そして万単位の殺人犯がアメリカを徘徊している現実を見つめるべきです。自分の保身だけに執着し、手でピストルの形を作った少女、バターナイフで桃を切った少女を学校からはじき出す非寛容な態度を改めるべきなのです。
こんな、極端な事件を並べてみると、いかにアメリカが狂っているが分かるような気がしませんか…。
-…つづく
第642回:アタティアーナさん事件及び家元制への追記
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