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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第605回:日本と世界の浮気事情を比べてみる

更新日2019/04/18



古来、人間が生きている限り、種の保存を計らなければなりません。
アダムにとってイヴ一人しか愛情を注ぐ相手がいなかった時と違い、今では選択の余地がたくさんありすぎて、対象を絞るのが難しくなり、国家公認で結婚した後でも、アレッ、もっと良い選択肢があったのではないか? と、実際にはあり得ない幻想を抱き、浮気、本気に走るのでしょう。

一夫多妻を許している国、宗教がまだあるにはありますが、近代社会ではだんだん肩身が狭くなりつつあります。離婚社会のアメリカは、時間的に引き伸ばした一夫多妻、一妻多夫の国です。一生の間に何人かの奥さん、旦那さんを体験するのですから、たとえ同時進行でなくても、一夫多妻、一妻多夫だと言ってよいでしょう。

ヘンリー8世が6人の奥さんを次々と取り換え、前の奥さんを牢屋に入れたり、首をちょん切ったりした伝統をハリウッドが引き継ぎ、何かにつけハリウッドに憧れているアメリカ人が真似をしているのかもしれませんが…。案外、ヘンリー8世は同時進行型の浮気をしない、生真面目な性格だったのかもしれせんね。

アメリカでは私たちのように50年近くも同じ相手とツガッテいるのは、まさに希少価値的存在です。日本で、ウチのダンナさんの家族、友達で離婚した人がとても少ないのとは対称的に、アメリカサイドで、私の家族、友達の90%は離婚再婚をよくぞ厭きもせず繰り返しています。

これは全く私の想像ですが、日本では離婚が少ない割りに、夫、妻の浮気が多いような気がします。家の外でのツマミグイが案外、結婚生活の安全弁になっているのかな…とも思ったりします。

こんな統計がどこまで信用できるのか、アンケートに答える人がどこまでマジメに答えているのか分かりませんが、相模ゴム工業というコンドームの会社が、浮気についての大々的なアンケート調査を行いました。浮気とコンドームの売り上げに何らかの相関関係が大いにあるのでしょう。

それによると、全国ランキングの1位は埼玉県で、31%の人が浮気を体験しているというのです。男女別は載っていませんでしたが、男女とも相手あってのことですから、男女の違いはないのかもしれません。2位は京都府、3位和歌山県、最下位は鳥取県でした。これは都会と田舎の差なのでしょうね。

埼玉県の人口は7,300万人ですから(子供やゲンエキ?を退いた超老齢の人を含めてですが…)その31%といえば2,260万人が浮気をしていることになります。道理で、東京近郊にラブホテルが密集しているわけです。相模ゴム工業、埼玉県の販売に力を入れることになるのでしょうか…。

日本は凄い浮気天国だ、埼玉県に住むのはやめようと、思いきや、“世界浮気率”というのがあるかな~と思って調べて見たら、あったのです。これもイギリスのコンドームメーカーでデュレックスという会社が2015年に行った『全世界浮気調査』を見つけました。

これによると、日本はまだまだ可愛いモンで、1位のタイは56%、一生の間に1回でも、という質問にはフランスは63%で、ヨーロッパの国々はデンマークの46%、カソリックの戒律が生きているはずのイタリア、スペインですら、日本よりはるかに高い45%、39%という結果でした。

フランス人と結婚して、埼玉県に住むと…とんでもないことが起こりそうです。
どうも、キリスト教は人間の性活動を抑えることに失敗しているようなのです。十戒の“汝、姦淫するなかれ”より、”汝、隣人を愛せよ“を手前勝手に理解し、広い意味で実行しているのかもしれませんが…。

ウチのダンナさんによれば、日本で一夫一妻を強く打ち出したのは北条正子ではなかったかな…と言っています。『御成敗式目』では姦通は死刑に処す、とまであります。それ以前の主にサムライクラスですが、幼児の時から、稚児として男色を体験し、お家のためと何人かの側室、二号サン、三号さんを持つのが当たり前だったと言っています。また、お百姓さんや商人が浮かれて行ったお伊勢参り、熊野詣(もうで)などは、大いにハメを外す良いチャンスで、乱交パーティーツアーだったようです。

大戦中の軍政府は儒教的モラルの締め付けを厳しくし、北条正子の御成敗式目のような姦通罪を設けています。これは兵役に取られたダンナさんの留守の間に奥さんが浮気をしないようにとのモラルを老婆心で上から押し付けた男性本位の法律で、軍人たちが進駐した国々で地元の女性たちに犯した罪は問われませんでした。

アメリカの離婚率は80%で、ダントツの世界一です。何かにつけアメリカと競争したがるロシアが2位です。浮気が本気になり、離婚そして再婚、また浮気、本気、離婚、再婚になるのでしょうね。アメリカ人はリサイクルが良く効くのです。

ジェーン・オースティン*1 的なハッピーエンド、イコール結婚という物語や、ハリウッドやテレビのバチェラー・リアリティーショー(あり得ない美男美女が結婚相手を探す番組)は、皮肉でも何でもなく、「あんたがた、80%の確率で離婚するだから、バカ騒ぎしなさんな…」と言いたくもなろうというモンです。

ウチのダンナさんは、「ソリャ、オメ~、チット違うんじゃないか。若い時にはその一瞬の喜びに生きているんだから、どんな危なっかしい相手に燃えようが、すぐにも空中分解しそうな結婚でも、ご老体としては見守ってやるしかないんじゃないかい…」とウガッタことを言うのです。

聖書の中に、石打の刑に処されようとしていた娼婦に、イエスが「心の中で姦淫を犯したことのない者から石を投げよ!」と言ったら、石をその娼婦に投げつける者がいなかったという逸話のように、多くの人は心理的な浮気をしているのでしょうね。行き場のない精力を持て余し、実行力のありすぎる人が本当の浮気に走るのでしょうね…。

浮気と本気の間にキリッとした線を引くのは不可能なことです。その境界線は、時代と当人が住んでいる社会、年齢によって、そして主に本人の解釈で、グニャグニャに曲がり揺れ動くものなのかも知れません。

当人は成人した大人(多くの場合)なのですから、外からゴチャゴチャ言うスジのものではありません。根本的には結婚している相手に対し、どれだけ真実、誠実であろうとするかだけの問題だと思うのです。

-…つづく

 

*1:ジェーン・オースティン(Jane Austen、1775-1817):イギリスの小説家。18世紀から19世紀イングランドにおける田舎の中流社会を舞台として、女性の私生活を結婚を中心として皮肉と愛情を込めて描き、その作品は近代イギリス長編小説の頂点とみなされている。<Wikipediaより>

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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