第343回:サブプライムローンの大きなツケ
柄にもない経済のことを書かせてください。アメリカのイイカゲンなサブプライムローンがほとんど世界大恐慌を巻き起こし兼ねなかったのは2008年のことでした。その凶源のJ.P.モーガン・チェースマンハッタン金融機関を裁判に持ち込んでいたお役所、アメリカ住宅金融庁が和解しました。和解というのは、裁判所の決定を待たずに両者がナアナアで手を打ったということでしょうけど、その金額が51億ドル(5,200億円相当)でした。
J.P.モーガンにしてみれば、判決が出るまで法廷闘争をすれば、それ以上に費用がかかり、判決でもそれ以上の罰金支払わされる可能性が強いと見越しての妥決額なのでしょう。これは主に21人(投資会社)に支払われます。
それとは別に、J.P.モーガンは司法省との法廷闘争でも裁判所の裁定を待たずに示談を成立させています。この示談金額がなんと130億ドル(1兆3,500億円相当)なのです。これで良く会社が潰れないな~、そんなお金をポンと払えるような企業が存在することに驚いたのは私だけかしら。
さらに驚いたことには、こんな超大型の罰金、示談金、総額で181億ドル(1.9兆円相当)がJ.P.モーガン・グループのたった1年の収益にしか当たらないというのです。
このような巨額の示談金が政府、政府関係に支払われても、あの時、年賦で購入した家を担保に取られた数百万人の人にその家が戻ってくるわけではありません。
メキシコ湾で海底油田から大量の原油を流し、生態系をメチャメチャにしたBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)の補償金、罰金の総額が4,000億円だったことと突き合わせれば J.P.モーガンの妥協金額がいかに大きいか、それにも増して、J.P.モーガン・グループが稼いでる金額がいかに天文学的なものか分かると思います。ちなみにJ.P.モーガンの社長さんの年収は19億円相当だそうです。
チョット比較にならないかもしれませんが、今をときめくハイテックの会社Googleの収益でさえ110億ドル(1兆2,000億円相当)なのです。なんだか、すべての金額が大きすぎて実感が湧きません。
一見、このような裁判を通しての示談は、資本主義の行き過ぎにブレーキをかける役割を果たしてるかのように見えます。ですが、政府としても、J.P.モーガンのような巨大な金融機関を潰してしまうわけには行かず、サブプライムローンの震源になった肝心のMBS(住宅ローン担保券)を商品、証券として売り買いできるという基本的な問題の部分には全く触れていないのです。
帝国主義という前世紀の名残りのような言葉があります。戦前の日本も大日本帝国と詠っていたようですし、大英帝国とかほんの一握りの人たち、皇族などが主権のすべてを握っている国の体制を帝国主義と呼んでもそう間違ってはいないでしょう。
今ではほとんど死語になっている帝国主義という言葉が、アメリカの資本主義によく当てはまると思うのです。もちろん、大統領は4年、運が良くても8年で代わりますから、アメリカ帝国主義のボスにはなり得ません。
アメリカの政治、軍事を実際に動かしているのは、J.P.モーガンのような金融大財閥、メージャーと呼ばれる大石油会社です。その下に、私たちがナケナシの預金をする市中銀行があり、年金を積み立てている年金会社、太る一方の保険会社、毎日ガソリンを入れるガソリンスタンドなどが系列化してアメリカ人の生活をコントロールしてるのです。
そのように強大な資本に対して私たちは余りに無力ですから、できることは至って限られていますが、全く何もできないというわけではありません。この国を捨てて他に引っ越すという消極的な生き方以外にも、J.P.モーガン、チェイス・マンハッタン、シティバンクなどの息のかかった銀行は使わない、預金しない、自分の家、車などを担保にした融資は受けない、親戚、友達から軍に入る人を出さない、できるだけ(なんとも頼りない表現ですが)ガソリンをくわない車を使う、できれば自転車で仕事に通う、大会社が遠くから、外国から運んできた食べ物、野菜、肉を買わずに、地元で獲れたのモノを優先する、と書き並べてみましたが、なんだか空しくなってきました。
ささやか以下の抵抗ですが、アメリカの巨大な資本に対して、ほんの僅かなことでも、何ができるか常に意識して暮らそうと思っています。
第344回:旅の楽しみは口から始まる
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